19世紀創業の総合美容専門店「BULY(ビュリー)」を再発掘し、 一貫したブランド世界をつくり上げたラムダン。 昨年ブランドを売却し、次なる企画を準備中だ。そんな彼の新たなプロジェクトに注目した。
6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。
彼の名が語られ始めたのは、1998年のパリに半年間だけ存在した伝説のコンセプトストア、「レピスリ」から。以来、ラムダン・トゥアミは服をデザインし、老舗ブランドを甦らせ、化粧品店や飲食店も経営。活動は多岐にわたり、常にパイオニアとして話題になったが、手元に残したものはない。「これ以上やれることはない」と思ったら、次にシフトする。退屈を嫌い、毎朝起きると「新しいアイデアが沸いている」という。そんなラムダンの、実に多様なプロジェクトの共通点は彼自身の興味にほかならない。
眠れる老舗「ビュリー」をトップブランドに育て上げ、手放したばかりの彼はいま、大好きな山をテーマにしたウエアブランドを準備中だ。
「名前はまだ未定だが、世界3都市に出店したい。知られざる山を語る雑誌も計画中だ」
企画はほかにも。買い取ったテニスウエアブランド「エースクラブ」のリニューアル。6月末にはパリに「乞食バー」をオープン。命名の理由は「レピスリの前、僕はホームレスだったから」。年末には煮込み料理のレストランも開く。
いったいいくつのプロジェクトが進行しているのか、自分でもわからないとラムダンは笑う。取材を終えて帰ろうとする私たちの背中に、こんな言葉が降ってきた。
「大事なことを忘れてた! テーマ性のある書店と出版もやる。それからポッドキャストも!」
あふれるアイデアから、今後も目が離せない。
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OTHER PROJECT
ガソリンスタンド&カフェ「ザ・ガソリンスタンド」
21年8月から、「人とクルマのお腹を満たす」ガソリンスタンドを経営。コーヒーとホットドッグ、量り売りキャンディやチョコレートも販売。パリいちおしゃれなスタンドは、残念ながら今年3月に閉店。
キャンドルメーカー「シールトゥルードン」
2006年、17世紀生まれのキャンドルメーカーの再興を手がける。王家御用達の工房だった歴史を発掘、個性的なアロマキャンドルと歴史を語るデザインで一躍スターダムに。11年にプロジェクトを売却。
ファッションブランド「RT」 と「レジスタンス」
2003〜10年、デザイン、ファブリックやプリントデザインも手がけ、手仕事にこだわったブランド、RTを発信。レジスタンスも立ち上げ、両ブランドともパリのマリア・ルイザや東京の伊勢丹などで展開した。
※この記事はPen 2022年8月号「“仕掛け人”を探せ!」特集より再編集した記事です。