華やかな香りと深いコクが人気の高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」の系譜に、新たに「プレモルの最高峰」を称する「マスターズドリーム〈無濾過〉」が加わった。
その開発にあたって醸造家たちが追い求めたのは、「世界で一番うまいビールをつくりたい」という純粋な夢。原材料や製法にとことんこだわり、約16年かけて大切に磨き上げてきたマスターズドリームは、ついに「無濾過」という発想とともに一つの到達点を見た。
Pen Onlineでは俳優の宮沢りえを迎え、さまざまなフィールドで活躍するクリエイターたちとの対話から、「最高峰のこだわり」に出会うトークセッションを連載中。第2回目の今回、宮沢とプレモル醸造家の丸橋太一が招いたのは、完全紹介制のフレンチレストラン、SUGALABOのオーナーシェフ須賀洋介。最高峰の高みを目指すクリエイターたちが、新しいマスターズドリームを思い思いに楽しみながら、それぞれのこだわりについて語りあった。
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須賀シェフが考える、ビールの可能性
フレンチのアペリティフではシャンパーニュが主流だが、それ以外では「やっぱりとりあえずビールですよね」と語る須賀。自宅にはケース買いをした「ザ・プレミアム・モルツ」や「ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エール」など、数種類のビールを常備しているそうだ。宮沢は、「お料理をしながらお酒を考えることや、逆にお酒に合わせてお料理を考えることもあるんですか?」と、早速質問を投げかける。須賀は「どちらもありますよ」と答えつつ、さらに「僕にとって料理は、お酒に合うことが前提です。まずどんなお酒に合うかっていう部分がとても大事なんです」と強調する。
SUGALABOではビールとのペアリングは行っていないが、彼が監修している宮古島のレストランでは、島の地ビールをアペリティフとして採用しているそうだ。「基本的にシャンパーニュに合うようなお通し的なおつまみはビールにも良く合います。マスターズドリームみたいに豊かな香りのビールであれば、脂っこいものばかりではなく、繊細な味わいのものとのペアリングも楽しめそうですね。あとは、もっと個性を際立たせた超高級ビールみたいなものが出てきたら、レストランでの表現の幅もさらに広がると思うのですが……。丸橋さん、いかがですか?」と、丸橋に提案を投げかける須賀。それを受けて丸橋は「超高級! 難しいことを言いますね」と答え、宮沢は「それは是非、須賀さんと丸橋さんのお二人で実現してほしいです! そのビールの特徴に合わせてグラスにもこだわれば、新しいビールの愉しみ方が生まれそうですね」とアイデアを膨らませていく。
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試行錯誤の場としての“ラボラトリー”
世界最高峰の品質を目指したマスターズドリーム〈無濾過〉を改めてテイスティングした須賀は、「〈香る〉エールのような豊かさを感じさせつつも、もっとボディがしっかりしていて、液色も濃いですね」と丸橋に感想を伝える。それに応えて丸橋は、「麦芽自体も味わい深いものを選び、さらに麦汁を煮出す工程を3回繰り返す『トリプルデコクション製法』を採用したことで、おっしゃっていただいたような特徴を表現することに成功しました」と語る。この豊かな香りや繊細でコク深い味わいを愉しむのであれば、キンキンに冷やして飲むよりも、冷蔵庫から出して5分程度置いたぐらいが適温だと丸橋は言う。宮沢もそれに賛成し、「私はもともと冷たい炭酸の喉ごしを愉しむよりも、ビールの香りや味わいをじっくりと愉しみたいタイプだから、こちらの方が好みです」と感想を語る。
「日本のビールに対する海外の評価はどうなんですか?」と、常に世界に目を向けている須賀らしい質問が丸橋に向けられる。「須賀さんが師事されたジョエル・ロブションさんのように、ビールの世界にも“ビールの神さま”みたいな先生方がいるんですが、日本のビールはまだまだだと言われていたと聞いています。ただ最近では、すでにビールづくりの本場と比べても、まったく遜色はないという評価を受けています」と丸橋。今度は丸橋から須賀に対して、「SUGALABOは“ラボラトリー(実験室)”というスタイルを打ち出していますが、そこにはどういった意図があるんですか?」と質問する。「そもそもロブションの下で働いていたときも、レストランで毎日お客さまを迎えるというよりも、いろんなプロジェクトや人との出会いを通して、食の可能性を広げていく実験的な仕事を繰り返していました。SUGALABOでも、日本各地を巡る旅の中で出会った、人や食材との化学反応を表現するための、試行錯誤の場としてラボラトリーというスタイルを取っています」
「私は前回、丸橋さんのお仕事をお伺いしたときにも、理想を追い求めて試行錯誤を繰り返す“研究者”という印象を受けましたが、そこは須賀さんとの共通点と言えそうですね」と宮沢。続けて、須賀に質問する。「フランスと日本を比べると、食材が全然違うじゃないですか。日本に帰ってきて新しい食材に出会うって、どんな感覚なんですか?」。須賀は答える。「新しい食材との出会いはもちろんインスピレーションを刺激してくれますが、僕はそれ以上に、日本に帰ってきてから、より食材そのものへのこだわりが強くなりました。例えば同じ玉ねぎを注文するにしても、以前はただ発注書を出して市場から最高品質のものを仕入れるという形でしたが、いまはもっと食材一つひとつの旬や生産背景に目を向けて、いつ、誰が、どのように作ったものかという部分まで突き詰めています」と語る。パリやニューヨークでも食文化は進んでいるが、食材の旬や生産背景を突き詰める意識よりも、近年まず重視されていたのは店が掲げるコンセプトだったという。なによりも短い旬の味を最大限に活かし、楽しもうとする日本人の考えかたを取り入れれば、フレンチの可能性はさらに広がると須賀は考える。「ちゃんとした昔のフランス料理はそうだったと思うんです」
丸橋も須賀の考えに同意しながら、ビールづくりにかける自身の思いを語る。「日本のお客さまは、こだわりがとても強いと思います。ビールでいうと、海外では個人的な好みやシーンに関わらず、『俺は地元のこのビールを一生飲み続けるんだ』っていうタイプの人もいますが、日本人は常により良いもの、またはこれまでとは違うものを探しています。その根底には、日本人の旬に対する意識の高さと、食卓に上がる料理のバリエーションの豊かさがあると思います。私はドイツで3年間ビールづくりを経験してきたこともあり、日本でも本場に負けないビールをつくりたいという気持ちが前提にあることは確かです。ただ、それよりも強いのは、日本人を唸らせるようなビールをつくりたいという思いです。それこそが、本場を超えていく可能性だと思うからです」
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最高峰を志し、挑戦し続ける理由
「最高峰」を追い求める須賀と丸橋の話を聞いて、自身が大事にしてきた考えかたとの共通点を見つけた宮沢。「表現者として、常に自分を疑うということは絶対に忘れないようにしています。舞台の幕が降りたときにまず考えることは、やり残したことや課題。自分の表現に100%満足したことも、やり切ったって思ったことは一度もありません。お二人も、どんなに素晴らしいことを成し遂げても、それによって世界から評価されても、決してそれだけでは満足しないんだろうなって思いました。現状に満足しないということは、表現者としてとても大切なこと。それこそが、次の高みへと登っていくための、一番の原動力になるんだと思います」。さらに須賀に対して、「終わりのない試行錯誤の道を歩まれているときの、具体的なモチベーションはありますか?」と聞いた。「僕は役者とは違いますが、オープンキッチンという舞台に立ち、毎日最高のパフォーマンスをしたいという意識を持っています。それは、何ヶ月も前から心待ちにして来店してくれたお客さまに、また来たいと思ってもらうため。ラボラトリーでの試行錯誤も含め、僕は完全にそのためだけに仕事をしているんです」
ライブ感あふれるオープンキッチンで繰り広げられる須賀のパフォーマンスは、彼が日本各地で出会った食材や生産者のストーリーを、情感豊かに皿の上へと描き出す。「営業中は7時間ぶっ通しの真剣勝負なので、正直毎日いっぱいいっぱいです(笑)」と笑ってみせる須賀だが、そもそも彼には力を抜くという選択肢はない。「僕はただ料理をつくるだけではなく、レストランっていう総合芸術が好きだから、調理台はどういう向きで配置しようかとか、グラスはどれにしようかとか、そういう一つひとつのことを考えることがとても楽しいんです。すべてにおいて最高のものを目指す過程には苦労も多いですが、それこそが、自分のレゾンデートル(存在意義)だと思っています」。
「丸橋さんも、プレモルが世界的に評価された直後から、さらなる高みを求めてマスターズドリームの開発を始められました。日々ビールづくりと向き合う中で、なにか特別な思いはありますか?」と宮沢に促され、丸橋も自身のモチベーションを語る。「私自身、ビールが大好きで、うれしいときも、つらいときも、いつもビールから力をもらってきました。だから私がつくるビールも、少しでもみなさんが元気になるきっかけになれば良いなっていう思いで、毎日仲間たちと一緒にビールづくりに向き合っています。たかがビールに、ここまで人生をかけていいのかなっていうぐらい、毎日楽しくやらせてもらっています。だからやりたいと思ったことをとことん追及できるこの仕事自体、私にとっては夢の舞台なんです」
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