火星を走行中の探査車・パーサヴィアランスが、火星の地表で銀色に光る人工物を発見した。特徴的なドット柄のついたアルミシートだ。
NASAのパーサヴィアランス・チームは、探査車自身が火星着陸の際に使った部品の一部ではないかと考えている。2021年2月に実施された火星への突入・着陸・着陸ステージ(EDL)から1年以上を経たいま、思いがけない再会となったようだ。
破片はパーサヴィアランスが6月13日に撮影した写真に写り込んでいたもので、2つの岩の隙間に挟まるようにして留まっていた。NASAがパーサヴィアランスの視点から発信するTwitterアカウントは、次のようにツイートしている。
「私のチームが、意外なものをみつけました。サーマル・ブランケットの破片で、チームによると私の降下ステージで使われたものの可能性がありそうです。2021年の着陸のあの日、ロケットエンジン付きのジェットパックによって私は降下しました」「この反射するホイルの破片は、温度を管理するための素材であるサーマル・ブランケットと呼ばれるものの一部です」
---fadeinPager---
「恐怖の7分間」から守る耐熱シート
火星の地表に人工物をみつけたNASAのチームは、さぞ驚いたことだろう。果たして銀色に光るシートは火星文明の遺物でこそなかったが、大気摩擦による高熱からパーサヴィアランスを保護する重要な役割を担っていた。
耐熱ブランケットは、過酷な条件での着陸を達成するため、なくてはならない存在だ。米CNETは、「こうしたブランケットはドラマチックな突入・降下・着陸プロセスを通じて、温度を抑制します。このプロセスは『恐怖の7分間』の名でも有名です」と説明している。この7分間についてNASAは、マーズ2020ミッション全体のなかでも「最も短く、最も猛烈なフェーズ」だと表現している。
なお、今回発見された場所は着陸地点から遠く離れており、なぜこの地点で見つかったかについてはNASAとパーサヴィアランスも首を傾げている。パーサヴィアランスはTwitterで次のように語った。「降下ステージで私が衝突した地点は2キロも先なので、ここでみつかるとは予想外です。破片は衝突のときにここに行き着いたのでしょうか。それとも、風でここまで運ばれたのでしょうか。」
---fadeinPager---
話題の絶えない探査車「ペットの岩」を連れて旅する
パーサヴィアランスは2020年7月に打ち上げられ、2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターに着陸を果たした。着陸から1年以上経ったいまも、新たな話題を地球の私たちに発信しつづけている。
今年6月2日にNASAは、パーサヴィアランスが火星を「ペットの岩」を連れて旅していると発表した。左前輪のホイール内側に岩のかけらが乗った状態となり、2月上旬以来、4ヶ月をかけて8.5キロの旅路をともにしているという。
長い道のりを運ばれた岩は、もしかすると地質的に違うエリアで「降車」するかもしれない。NASAはユーモアを交え、未来の研究者たちに向けて注意を呼びかけている。「もしもこの記事を読んでいるあなたが未来の世界の火星地質学者、またはジェゼロ・クレーターにある歴史的拠点の地図の作成を頼まれた大学院生でしたら、気をつけてください。場にそぐわない石があったとしたら、かつてパーサヴィアランスのペットだったものかもしれません!」
パーサヴィアランスは、過去に火星に存在した生命の痕跡を探すなど複数の科学ミッションを背負い、今日も火星を探索している。