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明快なコンセプトで東京・西新井の老舗銭湯を再生した、クリエイティブ・ディレクター皆川壮一郎の視点とは

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:岡野孝次
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地元住民に愛されてきた東京・西新井の老舗銭湯「堀田湯」が創業80周年を迎え、今年4月にリニューアルオープン。改装後、客数はなんと前年比の6倍に。そんなリニューアルを主導した、博報堂ケトルのクリエイティブ・ディレクター皆川壮一郎に注目した。

6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。

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皆川壮一郎●クリエイティブ・ディレクター。1978年、埼玉県生まれ。2002年に読売広告社に営業職として入社する。その後マーケティング職などを経験し、13年に「博報堂ケトル」に参加。おもな受賞歴に、「JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト(2016年/2021年)「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」「JPMプランニング・ソリューションアワード」「PRアワードグランプリ」などがある。Twitter:@soichiro1978/Instagram:@SOUICHI0227

1942年の創業以来、東京の下町・西新井の住人の生活を彩ってきた銭湯「堀田湯」。今年4月、皆川壮一郎がクリエイティブ・ディレクターとなって、80年受け継いだ建物を活かしてリニューアルを果たした。

皆川いわく、「完全建て替えで劇的に変え、街の外にアピールすることも考えました。でも多くの関係者との話し合いの中で、『まずは地元の人を“温められる”存在になろう』という結論に至りました。昔ながらの宮造りの建築はそのまま、この地でさらに100年続く銭湯を目指します」

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ロゴの配された暖簾が目を引く、リニューアルした堀田湯の前に立つ皆川。毎月さまざまなイベントも開催し、西新井の街の活性化に貢献している。

高い天井が開放的な内風呂、外気浴が楽しめる露天風呂は健在だ。このような「従来から存在する、価値ある資産を活かす」手法は、皆川の最新の仕事、駿河湾に面した料理旅館「月と鮪 石上」のリニューアルにおける設計でも垣間見える、彼らしい視点である。

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屋根の妻側の端に破風が付いた宮造りの建物を活かした内風呂。天井が高く、天窓から差す光が入浴客を出迎える。

加えて新生・堀田湯のために助言を求めたのが、銭湯経営のプロである高円寺「小杉湯」3代目の平松佑介と、サウナのプロ「ととのえ親方」こと松尾大。松尾の監修で新設した薬草サウナは、順番待ちができる人気ぶりだという。

皆川の仕事は、コンセプトが明快だ。堀田湯なら「この街を、温める」。テキスタイルブランド「ビブテックス」なら「ウイルスと戦う、すべての世界市民を守る服」。共感を呼ぶフレーズが多い。

聞けば堀田湯は、客数が前年比6倍だとか。皆川が、共感を呼ぶ力で仕掛ける次なるヒットはなにか。ますます期待が高まる。

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銭湯「堀田湯」

創業80年の東京都足立区西新井の銭湯を改装オープン。コンセプトの「この街を温める」は、堀田湯 3 代目・堀田和宣からの提案だ。皆川は、その意を受けて「ほっ」と書かれた、ゆるい雰囲気のロゴ を考案。また、地域活性化のために、銭湯周辺の見どころを紹介する「西新井MAP」を作成した。

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左:西新井MAPは博報堂ケトルで編集・企画を担当する「ストーブカンパニー」が制作。皆川は改装の挨拶も兼ねて、掲載依頼に回った。 右:男湯の露天風呂。風呂の周囲に椅子を置いて外気浴ができるほどの 広さ。奥はサウナ、水深160cmと東京最深を誇る水風呂も。
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左:松尾監修、男湯のオートロウリュ式薬草サウナ。近くに水風呂があるので便利だ。 右:内風呂の様子。さすがは広告マン、ミラーの下には地元商店の鏡広告を入れている。「街を温める」取り組みがこんなところにも垣間見える。

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OTHER PROJECTS

屋外広告「三省堂書店神保町本店 一時閉店しおり型広告」

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photo: Tomoko Shimamura

建て替えで今年5月に一時閉店した「三省堂書店 神保町本店ビル」。取り壊しまでの間に掲出される広告コピーは「いったん、しおりを挟みます」。懸垂幕は、読書家にお馴染みの”しおり”をモチーフに。コピーライターは「博報堂」の松田綾乃。

テキスタイルブランド「ビブテックス」

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コンセプトは「ウイルスと戦う、すべての世界市民を守る服」。繊維商社「ヤギ」と博報堂ケトルの共同事業で、表面付着したウイルスを99%減少させる素材を開発。コロナ禍でファームマーケット「ソルソファーム」など有名店が制服に採用した。

料理旅館「月と鮪 石上」

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photo: Norihiko Okimura

創業60余年、静岡県焼津市の料理旅館のリプランディングを担当。自慢は駿河湾に面して月が見えるダイニングと、焼津のマグロ。脳天から赤身、トロまで使うコース料理は、東京・代々木上原のミシュラン一つ星「sio」の鳥羽周作シェフが監修。

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皆川壮一郎のFAVORITE THINGS

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「古着のグラフィックTシャツ」

創業80年の銭湯を見事に活性化した皆川。日用品でも古いものを好む。「ファッションだと『E.T.』などの映画のTシャツをよく着ます。見た人から『懐かしい!』なんて言われて、話題の きっかけにもなるんですよ」。Tシャツは“着るコミュニケーションツール”のようだ。

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※この記事はPen 2022年8月号「“仕掛け人”を探せ!」特集より再編集した記事です。

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