スポーツウォッチの代名詞とも言えるダイバーズウォッチ。そのデザインには、極限まで追求された機能が凝縮されている。今回は、そんなダイバーズウォッチの特徴や各ブランドの新作モデルを解説する。
6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」の第2特集「スポーツウォッチ最新案内」から一部を抜粋して紹介する。
そもそもダイバーズウォッチが街使いでの市民権を獲得し始めたのは、1990年代のことだ。当時はまだ「ダイバーズをスーツに合わせるなんて無作法」といった見方も一部で残っていたが、ビジネスシーンでのスマートカジュアル志向への変化も後押しして、海の時計をオフィスで着けることもしだいに受け入れられていった。その背景には、どんな時でもダイバーズウォッチを腕に巻く元海軍中佐、あのジェームズ・ボンドの影響もあったかもしれない。ダイバーズかどうかを外観で判別することも多いが、実は機能上の定義は厳密だ。国際標準化機構の「ISO 6425」、日本工業規格「JIS B 7023」では、「100mの潜水に耐え、かつ時間を管理するシステムを有する時計」以外をダイバーズとは認めない。その他にも耐圧性、暗所での視認性、耐磁性、耐衝撃性、耐塩水性、水中操作性、耐浸漬性、耐外力性、耐熱衝撃性……などの細かな基準が定められている。特にアイコンである回転ベゼルは、時間測定ができる「タイムプリセレクティング装置」として必置義務がある。逆回転防止の機構は、潜水時間の測定で誤作動を防ぐためにある。ダイバーズウォッチにおけるデザインとは、求められる機能に応えてきた結果なのである。
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ダイバーズは元来、潜水士向けのプロ仕様で製造されてきた。軍用としての用途を備えたミッションウォッチだったという出自のものも珍しくない。ミッションを遂行し、自分の命を守るための腕時計でもあるからこそ、万全を期して、スペックは必要以上に高く設定されなければならない。故に各メーカーは、生身の人間が潜れる限界よりも深く、防水性能の数値を設定してきた。一般向けに普及した後も、プロ向けのダイバーズウォッチは、きわめて高いレベルでの技術革新を続け、いまに至っている。超スパルタンなモデルでは、なんと3000m以上の防水性能で競い合うほどだ。
オメガ「シーマスタープラネットオーシャン ウルトラディープ」は、95年以降ボンドが着け続けた「シーマスター」の新作で、最高性能を誇る。防水性は6000mにおよび、南海トラフの最深部すら余裕でクリアする。
普段使いの想定を優に超えるハイスペックな時計なら、日常生活でなにをしても大丈夫、と読み替えてしまってもいいだろう。オフィスからトレーニングジムに直行しようが、週末にそのまま海水浴やキャンプなどのレジャーを楽しもうが、時計をわざわざ換える必要がない。気を遣わなくていいタフな時計が、いつも自身の腕に存在するという安心感。デザイン性にも優れたダイバーズウォッチは、まさに現代人の日常に寄り添う相棒なのである。
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DIVER'S WATCH
PANERAI(パネライ)
サブマーシブル クアランタ クアトロ eスティール ヴェルデ スメラルド
海の時計に出自をもつパネライは、環境保護に対する意識が高い。ハイスペックが求められるダイバーズに採用した「eスティール」は、パネライと素材メーカーとの協業によるリサイクル素材。再生PETからなるファブリックに加え、リサイクルラバーのグリーンストラップも付属。
MONTBLANC(モンブラン)
1858 アイスシー オートマティック デイト
モンブラン初となるダイバーズウォッチが登場した。傘下に収めたミネルバの時計が冒険家から愛されてきたという歴史的経緯も取り入れ、このモデルはダイバーズだが山を舞台にしている。モンブラン山塊のメール・ド・グラス氷河の荒々しい景色を、グラッテボワゼという手法を使ってダイヤル上に表現。自社のラボで約500時間のテストを行い、性能には絶対的な自信をもつ。
TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー
サイズ感やデザインは、ダイバーズウォッチの王道でありながら、軽量なチタン素材を採用し、防水性能は1000mというハイスペックモデル。リューズの上にはガッチリとしたガードを備えており、海中でのアクティブな動きにも対応する。搭載ムーブメントはスイスの実力派ケニッシ社の「Cal.TH30-00」でCOSC認定クロノメーターを取得。
TISSOT(ティソ)
ティソ シースター 2000 プロフェッショナル
ケース径46mmとかなりの大型で、防水性能は2000フィート=600mを誇る。ダイヤルには波を思わせる仕上げが施された、美しき本格ダイバーズウォッチだ。搭載するムーブメントは、ロングパワーリザーブに加え、耐磁性や耐衝撃性に優れる高性能の「パワーマティック 80」。価格以上の満足度が得られる、まさしくティソらしいコストパフォーマンスのいいモデルといえる。