マイナーチェンジが行われた、現行モデルにして3代目となるポルシェ・マカンGTSに乗った。業界関係者はチャプターっぽく「マカンⅢ」と呼ぶそうで、なるほど分かりやすい。マイナーチェンジも2回目ともなれば「これは何代目?」と混乱が生じるからね。
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とはいえ疑問は残る。なぜ売れているマカンに、またもマイナーチェンジを施すのか? 中森明菜の「セカンド・ラブ」にたとえれば、マイナーチェンジも2度目なら少しは上手に愛(走り)のメッセージを伝えたいってことなのだろうか?
「そうあって欲しい」と願いつつ(笑)、試乗してみた。狙いはこれまでと変わらず、究極的にしなやかで、速いミドルサイズのSUVをつくること。ひと言でいうと、大人のマカンだよね。
違いでいうと、組み込まれているスポーツカーの情感(エモさ)が格段に豊かな表現になっている。この情感はほんと「セカンド・ラブ」で、めちゃくちゃ上手くなったラブレターを読んでいる感覚だったね。言いたいことはわかるけど、上手すぎてちょっと怖くなるたぐいのね。あれ? もしかしたら、「この切なさは中森明菜?」みたいな感じですよ(笑)。
まずポルシェが開発を主導したという新しい2.9リッターのV6エンジンが素晴らしい。馬力は60馬力アップの440馬力で、もはや現行(マカンⅡ)のマカン・ターボと同じ。スポーツプラスモードだと、このエンジンの3000~6000回転のもっとも楽しいゾーンを7速PDKが寸分の狂いもなく繋いでくる。
ハンドリングはとても自然で、攻めて走ってもアンダーを出す気配は微塵もない。ピーキーなところがなくて、ものすごく余裕のあるステアリングマナーなのね。コーナリングでロールはおさえられているものの、程よく情感がある。大型SUVであるカイエンターボのような見えない手で上から押さえつけるようなロールのおさえ方ではなしに、スポーツ走行という香りを楽しむように程よく上屋を揺らす。
個人的には完全に揺らされたクチで(笑)、箱根の普段の試乗ルートを2周してしまったぐらい気持ちよい。先代と変わらないハンドリングの自然さにクリアで明快なステアリングインフォメーション、ぐいぐいその先へ連れて行く自信たっぷりの中回転域のトルク、そして足回りの進化っぷりですよ。嗚呼、このエアサスはヤバい……
前のモデルと違って、すぐにわかるエアサスではないんだな。ばね下重量は適度に残しつつ、上質なコイルスプリングのスポーツサスのようにしなやか。懐も深くて、足回りだけで入力をいなせる手練れた感じはオイルダンパーかガスショックかって感じなのね。
このエアサスの足回りが、新しいV6エンジンと7速PDKと組み合わさることで「GTS」というグレードの完成度を比類ないものにしている。開発のポイントはエアサス自体の剛性が高められたのと、車高や減衰力を調整するPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)の熟成が進んだことによるもの。「セカンド・ラブ」の豊かな情感はエアサスにあって、自然な挙動でエモーショナルな振る舞いはすべてが計算されている。
「なぜ売れているマカンにマイナーチェンジが必要だったのか?」という問いの答えは、ポルシェらしさを醸し出す技術の進化と、さらなる高級志向を実現しているってことに尽きるのよ。すごいラブレター書けるんだから、すぐに渡しましょうよって感じね。
とはいえ次期モデルから完全電動化が予定されているマカンの、これが最後の手紙(マイナーチェンジ)になるかも知れない訳。ちょっとだけ切ないでしょ? やっぱり「セカンド・ラブ」みたいに別れの予感が含まれているんだな。
最後のステージに立つ中森明菜(引退はしていない)のような覚悟をもって、V6エンジンによるスポーツカーの情感のような行間の揺らぎをも表現し尽そう。この情熱こそポルシェ。時を止めよう。電動化なんてしなくていいって、本気で思わされるんだ。
ポルシェ マカン GTS
サイズ(全長×全幅×全高):4730×1925×1600㎜
排気量:2,893cc
エンジン:V型6気筒ツインターボ
最高出力:440hp/5,700 - 6,600 r/min
最大トルク:550Nm/1,900 - 5,600 r/min
駆動方式:4輪駆動(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥12,350,000
問い合わせ先/ポルシェ コンタクト
TEL:0120-846-911
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