平安神宮や南禅寺など歴史ある神社仏閣をはじめ、文化施設が集まる京都・岡崎エリア。日本庭園を有する真宗大谷派岡崎別院の隣地に、日本国内での新規開業は約20年ぶりとなる「ホテルオークラ」ブランドの「ホテルオークラ京都岡崎別邸」が竣工した。美しい庭園を望む落ち着いた雰囲気の館内は、西陣織や京金網、竹工芸など京都が誇る伝統工芸の技術を随所に取り入れたデザインで、“新時代の京の美意識”を体現している。
館内のインテリア総合ディレクションを担当したのが、乃村工藝社の空間デザインチーム、RENS(レンズ)。創業130周年を迎える乃村工藝社はおもに国内外の建物の企画、設計施工、空間プロデュースまでを手がけ、日本のデザイン業界を牽引してきた。RENSを率いるクリエイティブディレクターの松浦竜太郎は2001年の入社以降、店舗やホテル、ミュージアムなどジャンルを超えたプロジェクトに関わりながら、独自の美意識で普遍的な空間デザインを追求している。そうした中で話題を集めた作品が「福岡空港国内線旅客ターミナルビル」の大規模リニューアルプロジェクトだ。空港機能とフードホールといった商業エリアの連続性をもたせながら、公園のように人々が集う賑わいの場をつくり上げた。
現在RENSでは岡山に開業予定の大規模フードホールをはじめ、海外プロジェクトも進行中。商業空間のデザインを担うクリエイターとして活躍が期待されている。
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乃村工藝社 RENSが携わってきた代表的な建築
【keyword 1:非日常感の演出】
長年培った企画・デザイン力で、五感に訴える空間を実現するRENS。機能として求められる要素を空間に落とし込みながら、インテリアや家具、照明・音響計画など多様なアプローチで、非日常感を体感できる賑わいの場をつくり出している。
【keyword 2:マテリアルで世界観をつくる】
空間づくりにおいて、特にマテリアルの選定にこだわりを見せる。無数のカットガラスでブランドイメージを表現した店舗、沖縄の自然から着想を得た金属メッシュが彩るダイニングなど、多様な素材、テクスチャー、色彩で独自性を生み出す。
【keyword 3:伝統と革新の融合】
市松が舞っているかのような天井が印象的なダイニング、既存要素を残しながら現代の素材を用いて刷新した百貨店など、伝統と革新が融合した空間づくりを行う。
乃村工藝社 RENS
クリエイティブディレクターを務める松浦竜太郎は1975年生まれ。関西大学大学院卒業後、2001年に乃村工藝社に入社し、20年に同社の空間デザインチームRENS(レンズ)を設立。これまでに国内外のデザインアワードを多数受賞。
※この記事はPen 2022年7月号より再編集した記事です。