「風が吹けば桶屋が儲かる」の逆バージョンとも言えるような深刻な事態が、マレーシアとシンガポールで発生中だ。いまだ先行きが見えないロシアによるウクライナ侵攻の影響は、世界各国で燃料費・輸送費高騰、加えて、ウクライナから穀物の輸出が行えないことで食料品などの相次ぐ値上げを招き、インフレーションを起こしているが、紛争地から遠く離れた東南アジアもその影響をモロ被りしている。
5月23日、マレーシアのイスマイル・サブリ首相は、6月1日よりマレーシアからの鶏肉の輸出を一時的に禁止する措置を発表。これは、ウクライナがこれまで輸出していたトウモロコシや大豆といった飼料の原材料が輸出できなくなったことで飼料価格が世界的に高騰し、マレーシアでも鶏肉の急激な価格上昇を引き起こしているので、まずは国内供給の安定を図るための策だ。
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鶏肉を使ったメニューを、販売中止にする店も
「ロシア・ウクライナ間の紛争によって、武力衝突には直接巻き込まれていない国々でさえも影響を受けています。マレーシアでは供給の不足を引き起こしています」と、サブリ首相は5月28日に東京を訪問した際にも語っている。シンガポール、マレーシア、香港の読者にニュースなどのコンテンツを提供するアグリゲーター、AsiaOneによると、マレーシアはこれまで毎月360万羽もの鶏肉を輸出。そのうちの多くは冷凍品ではなく、生の鶏肉としてシンガポールへ送られていた。
シンガポール食品庁(Singapore Food Agency)によると、シンガポールが輸入している鶏肉のうち、約34%はマレーシア産の鶏肉だったのだ。当然、この輸出禁止措置は、シンガポールの外食産業にとって大打撃。その影響は「壊滅的」だと、シンガポールのフードチェーン、OK Chicken Riceのオーナー、ダニエル・タン氏は語る。
「鶏肉の輸出禁止措置では、もう商売上がったりです。ハンバーガーのないマクドナルドと同じですよ」ホーカー(注:シンガポールやマレーシアで各所にある屋台街、カジュアルなフードコート)で、海南鶏飯(チキンライス)を出す屋台やフライドチキンも提供するハンバーガーショップなどでは、鶏肉を使ったメニューを一時的に販売中止にするところも出ている。
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渡航制限が大幅に緩和されたシンガポールには、夏休みに旅行を計画している人もいるだろう。海南鶏飯やナシレマッ、フライドチキンなど、ローカルに愛されている国民食が、また気軽に楽しめるようになることを願うばかりだ。
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