〈有機ELテレビ〉
Panasonic VIERA LZ2000(パナソニック ビエラ エルゼット2000)
テレビ界で初めての、画期的な音響装置を搭載した有機ELテレビである。テレビは、ボディの大きなブラウン管から液晶や有機ELの薄型へと変わり、大画面化、画質向上が進んだ一方で、音質は貧弱になるばかりだった。薄いので小さなスピーカーしか搭載できないし、ボックス体積も極小だ。
映像の進化と反比例していたテレビの音だが、この新しい有機ELは、反撃のチャンスをつかんだようだ。立体音響ドルビーアトモスに対応した従来のパナソニックのスピーカーシステムは上向きユニットを上部に2個、両側に2個、下部に3個、加えてウーハーを搭載していた。これでも業界では豪華なほうだったが、今回はさらに、前面下部に前向きで(業界では下向きが主流)、65型では16個ものユニットを横に並べて配置、合計21個のスピーカーで攻める。
一方向に複数ユニットを配置するラインアレイスピーカーは、独自技術にて指向性(音の進む向き)を自在に制御できる。複数の視聴者に等しい音圧で音を届けることも、特定の位置だけに音を集中させることも可能。たとえば、耳が聞こえにくい人には大きな音量で、その他の位置の人には普通の音量で聞かせることもできる。すべてのユニットをフル動員して、ドルビーアトモスの大迫力を体感するのももちろんOK。最新デジタル技術による複数ユニット使用は、テレビ音響に新たな可能性を与えている。
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画質も上質だ。黒から白への伸びが広大で、階調再現が繊細。コンテンツ連動の「オートAI」はとても便利。面倒な調整なしに、AI が100万超のシーンを集めたデータベースと照合して、映画や音楽、スポーツなど再生するコンテンツの場面に合わせて、最適な画調、音調を与えてくれる。調整などをまったくしない大多数のユーザーでも、常に最良のクオリティが享受できるというユーザーフレンドリーな機能である。音も映像も満足できる有機ELの傑作だ。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
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※この記事はPen 2022年7月号より再編集した記事です。