多彩なバリエーションを展開してきたカルティエの傑作「タンク」コレクションの中でも、とりわけ個性的なモデルが「タンク シノワーズ」ではないだろうか。第一次世界大戦を終結に導いた新兵器の戦車からルイ・カルティエが「タンク」を着想したエピソードはあまりにも有名だが、「シノワーズ」はキャタピラーをイメージしたケース両サイドの枠の上に、ボリュームのある横枠を天地に配置。他の派生モデルとは一線を画す特徴的なスタイルになっているからだ。「タンク」が誕生したのは1917年だが、「シノワ」として製作されたのは僅か5年後の1922年。かなり早期に生まれたバリエーションだが、当時は中国の装飾品や芸術が注目を集めており、天地の横枠は寺院の正門からインスピレーションを得たといわれる。
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独特の渦巻き模様をオープンダイヤルにアレンジ
この「タンク シノワーズ」が今年で100周年を迎えたことから、伝説的なタイムピースを現代的にリファインする「カルティエ プリヴェ」の6番目の新作として登場した。「伝統に刻まれたフォルムと現代の創造のビジョンを融合させた」とコメントされているように、オリジナルは正方形だったダイヤルを、絶妙なバランスのレクタンギュラー(長方形)に変更。横枠の視覚的な存在感が相対的に軽減されたことから、ややマイルドな印象になり、よりエレガントなスタイルにブラッシュアップされたといえるだろう。
それだけでなく、ダイヤルに独特の渦巻き模様のオープンワークを施したモデルが加わった。中国の伝統的な格子窓をモチーフとしているようだが、この渦巻きは「雷紋」(または雷文、稲妻紋)と呼ばれる幾何学紋様をアレンジしたと思われる。紀元前の殷や周の青銅器にも見られる豊作、吉祥の象徴であり、魔除けとしても使われていたらしい。日本ではラーメンの丼でお馴染みだが、中国古来の紋様なのである。このダイヤルに、厚みを感じさせるラッカーを使用。18KYGのモデルでは赤と黒、プラチナは赤と青で塗装されている。また、プラチナにダイヤモンドをセットしたモデルの3タイプがある。
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クローズドの通常モデルは格調高い気品
オープンワークのダイヤルモデル専用のスケルトン・ムーブメントも特別に開発しており、テンプや輪列などをデザインとして効果的に織り込んでいる。ダイヤルの“格子窓”から拍動するムーブメントを覗き込むのがクセになりそうだ。
ダイヤルがクローズドの通常モデルでは、横枠が個性をアピールしながらも、カルティエ特有のブルースチールの剣型針やローマ数字インデックスが上質で格調高い気品を感じさせる。こちらもケースが18KYG、18KPG、プラチナの3タイプがある。ユニークなオープンダイヤルがクリエイティブな紳士の遊び心というなら、クローズドの通常モデルは伝統をオシャレとして楽しむ紳士の知性にふさわしいといえようか。いずれにしても、天地の横枠が強靱な精神と揺るぎない信念を感じさせるのである。
問い合わせ先/カルティエ カスタマー サービスセンター TEL:0120-301-757
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