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【Mr.Children特集】ベリーグッドマンHiDEXが「追い求めていた理想のボーカル」と語る、桜井和寿の歌

  • 写真:興村憲彦
  • 編集&文:佐野慎悟
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ミスター・チルドレンとの出合いが、プロの歌手になるきっかけとなったというベリーグッドマンのHiDEX(ヒデックス)さん。憧れのミスチルへの思いを存分に語ってくれた。

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たったひとつの楽曲との出合いによって、その後の人生が大きく変わった「ミスチル・チルドレン」は数多い。プロのドラマーを目指して専門学校に通っていた、当時18歳のHiDEXさんもそのひとりだ。いまでは3MCのボーカルユニット、ベリーグッドマンの一員として全国区の人気を獲得している彼だが、ミスター・チルドレンの楽曲に出合う前は、人前で歌う自分の姿を想像したこともなかったという。

「当時の僕は、音楽の学校に通ってはいましたが、ドラムでプロになることをすでに諦めていて、じゃあ、次になにをやろうかって、漠然と考えながら毎日ただプラプラしている状態でした。よく友達と校舎の外にある非常階段のいちばん下にたむろして、なんとなく時間をつぶしていたんですが、あるとき、友達のひとりが音楽プレーヤーで流し始めた曲に、どんどん心が引き込まれていきました」

その曲は、当時発表されたばかりの「しるし」だった。洋楽しか聴いてこなかったHiDEXさんにとっては、それがミスター・チルドレンとの出合いとなった。

「ずっとエモコアという海外のハードな音楽を聴いてきたので、日本のメジャーな音楽に対して、無闇に壁を築いていたのかもしれません。でも『しるし』を聴いた瞬間に、『え? やば! これ誰? めっちゃいい曲!』ってびっくりして、その瞬間からミスチルの大ファンになりました」

プロを目指す思春期の青年の心を、ミスター・チルドレンの楽曲は、こんなにもあっさりと解きほぐすことができた。HiDEXさんは特に歌詞に感銘を受けたというが、初めて日本語のロックに触れ、歌詞のもつ意味の一つひとつが、より心の深い部分にまで届いたことは、想像に難くない。

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歌手になったのも、いまのメンバーになったのも、きっかけは全部ミスチル

「俺もこんな歌詞を書きたい! そして桜井さんみたいに歌いたい! ってすぐに感化されて、速攻でボーカル科に転向したのはいうまでもありません(笑)」

それからというもの、HiDEXさんはミスター・チルドレンの「しるし」以外の楽曲も遡って聴き漁りながら、そこで得られた知識や情報を、できるだけ自身の歌や曲づくりに活かすよう試みた。

「とにかく桜井さんの歌い方に関しては、完全に丸パクリしていました(笑)。のどを絞ったまま高音まで上げて、最後にふっと息を抜く感じとかは、いまだに癖が残っていると思います」

桜井和寿のボーカルは、彼にとってはまさに追い求めていた理想のスタイルだったようだ。

「実は、『しるし』を初めて聴いた当初から思っていたことなんですが、桜井さんのボーカルのスタイルと、僕がもともと好きだったエモコアのスタイルとの間には、本質的な部分で通じるものがあると、勝手に解釈しています。エモコアはその名の通り、エモーショナルなハードコア。ハードコアとはいえ、重厚感はあっても曲調は非常にメロディアスなんです。そしてそこに、感情を絞り出してぶつけるようなエモーショナルなボーカルが加わります。メロディアスでも力強く、優しくても魂がゆさぶられるような、桜井さんのボーカルだからこそ、エモコア一辺倒だった僕の心にも、深く突き刺さったんだと思います」

ミスター・チルドレンの楽曲には、人前で歌ったこともない青年に「歌手になる」と決意させてしまうほど、頭だけではなく、エモーションに強く訴えかけてくるなにかがある。それをキャッチした者たちこそが、30年経ってもいまだ増殖を続ける、ミスチル・チルドレンの正体なのだ。

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HiDEXが選ぶ Best 11 Songs

「しるし」
「名もなき詩」
「HERO」
「Tomorrow never knows」
「Everything(It’s you)」
「ラララ」
「彩り」
「GIFT」
「終わりなき旅」
「くるみ」
「星になれたら」

10曲に絞ることができず、1曲多い11曲を挙げた。「実は『くるみ』が発売された時、ずっと一緒に活動していたRoverとちょうど喧嘩別れしたばかりだったんです。歌をやめようかとも思ったんですが、『くるみ』のMVを観て後悔したくないと思い、Roverにもう一回やろうって伝えて、なんとか仲直りすることができました(笑)」

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「しるし」

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「HERO」

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「終わりなき旅」

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HiDEX

1988年、大阪府出身。2013年に友人のRover、MOCAとともにベリーグッドマンを結成し、16年にメジャーデビュー。プロ野球選手の登場曲に採用されることも多く、21年時点での採用数は4位のミスター・チルドレンをおさえて全体3位という結果だった。

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※この記事はPen 2022年7月号「Mr.Children、永遠に響く歌」特集より再編集した記事です。