1. GRAND SEIKO(グランドセイコー)
スポーツコレクション グランドセイコー GMT 20周年記念限定モデル SBGE275
グランドセイコー初のGMT誕生から20周年を記念して発売された、世界限定1500本(国内500本)のモデル。ムーブメントは、月差±10秒の高精度を誇る特別調整のキャリバー「9R16」。ダイヤルは「信州 時の匠工房」から望む、北アルプスの高地で冬から春先にかけて見られる「シュカブラ」、深く積もった雪を風が削り取った模様を再現したもの。
2. TUDOR(チューダー)
ブラックベイ GMT
48のノッチ入り両方向回転ベゼルに、ヴィンテージ感のある青×赤のツートーンで色分けされた24時間目盛り入りのアルマイト加工ディスクを装備した。ムーブメントはCOSC認定のクロノメーター「マニュファクチュール キャリバー MT5652」を搭載。
3. TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー アクアレーサー
鮮やかな青×赤のGMT機能ベゼルは多角形のファセットを設けた構造。大型の針とインデックスには、暗所や水面下での視認性を高めた特別仕様の夜光塗料を塗布。ダイバーズウォッチのコレクションらしく、防水性能も申し分ない。
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ベゼルにツートーンカラーを配したGMTモデルは、時計界屈指のロングセラーだ。1950年代にパイロットウォッチとして誕生したルーツから、ダイバーズモデルにも用いられるようになった現在に至るまで、“男のロマン”を象徴する腕時計と言ってもいい。原典がロレックスの「GMTマスター」であるのは自明だが、もはやそのデザインは腕時計ファンが共有するコードとも言える。
24時間を2色で分ける斬新な発想は、コックピットの中での一瞬の視認性にとどまらず、さまざまな場面でアイコンとして機能してきた。映画の中でスターがつけている姿は多くの憧れと共感を呼び起こし、クリント・イーストウッドやダスティン・ホフマンをはじめ、石原裕次郎が愛用していたことも知られる。海外の別荘で過ごすことも多いスターにとっては、時差が一目瞭然でプライベートでも使い勝手がよかったのだろう。
色で昼夜を分かつGMTモデルは、カラーの選択によって多彩な色気を表現する。誰が言い始めたのか、赤×黒を「ペプシ」、茶×金や黒を「ルートビア」、青×黒は「バットマン」と、アメリカっぽい非公式のニックネームで呼び慣らすのも、腕時計のサブカルチャーだ。防水性も備え、機能とデザインを両立させた時計は、世界中のあらゆるシーンをシームレスにつなぐ1本と言える。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2022年6月号より再編集した記事です。