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【Mr.Children特集】いきものがかり水野良樹が語った、ミスチル愛と自身の音楽ルーツ

  • 写真:興村憲彦
  • 編集&文:佐野慎悟
  • スタイリング:満園正明(UM)
  • ヘア&メイク:内藤 歩
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小学生の頃からミスチルの曲を練習し、ファンであり続けているといういきものがかりの水野良樹さんに、ミスチルへの熱い思いを語ってもらった。

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初めてギターを手に取ったとき、最初に練習したのはミスター・チルドレンの曲だった。初めてカラオケに行ったとき、緊張しながら歌ったのも、やはりミスター・チルドレンの曲だった。そんな思い出をもつミュージシャンは、決して少なくはないはずだ。いきものがかりの水野良樹さんも、そんな「ミスチル・チルドレン」の一人。小学生の頃、学級担任の影響でギターに興味をもち、最初に覚えたのが「CROSS ROAD」。いまもその曲は、水野さんが考えるミスチルソング・ベスト10のひとつに挙げられている。

「小学校の卒業式の前に、在校生の前で出し物をする『お別れ会』っていうイベントがあって、僕はそこで、覚えたばかりの『CROSSROAD』を披露したんです。当時はまだ歌詞の意味なんてなにひとつ理解できていなかったから、ただ感覚的にかっこいいっていう気持ちだけで好きになりましたが、既にミスチルは、避けては通れない絶対的な存在だったと思います。実際に、特に音楽に詳しい人じゃなくても、ミスチルの曲なら誰でも歌えたし、髪型やファッションもみんなミスチルに影響されましたよね。ミスチルには、こんな男性像になりたいっていう男の憧れが、全部詰まっているように感じていました」

そうやって子どもの頃に染み付いた価値観は、たとえ本人が意識していなくても、否応なしに表出してくるものだ。

「高校生になってバンドを始めたんですが、周りにも似たようなバンドがたくさんあって、あのバンドも、このバンドも、みんな桜井和寿さんみたいな歌い方をしていました。僕ももちろん桜井さんに憧れていましたが、真似しようとすればするほど、『あれは桜井さんだからできるんだ』っていうことを痛感させられるんです。でも、たまたま僕のバンドは女性がボーカルだったから、うまい具合にミスチルの真似をしたくなるという呪縛から逃れることができたんだと思います。そうじゃなければ、つまでもミスチル愛ダダ漏れのまま、自分たちらしさを見つけることはできなかったかもしれませんね(笑)」

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音楽も、髪型も、ファッションも、避けては通れない絶対的な存在

とはいえ、水野さんが見つけた“自分たちらしさ”の中にも、ミスター・チルドレンのDNAはしっかりと息づいている。

「桜井さんの歌い方は本当に唯一無二で、前後のフレーズ同士をつなげたり、普段はつながらないような2〜3文字もまとめて発音したりすることが多くて、そこで生まれた変則的なメロディーと、ベースにあるストレートなリズムが絡み合っていくイメージがありますよね。一方、いきものがかりの吉岡聖恵の場合は、一語一語はっきりと発音していく伸びのある歌いかたがもち味なので、曲中に強拍と弱拍の位置を意図的にずらすシンコペーションを多用することで、ストレートなリズムの上に跳ねるようなメロディを絡めるようにしています。そうやってアクセントが食ったり跳ねたりしながらメロディと絡み合っていく感じは、完全にミスター・チルドレンからの影響だと思います」

改めてふたつのバンドの特徴を見返してみたら、他にも意外な共通点が見つかるかもしれない。

「サビがサビらしく盛り上がるという部分も、ミスチルの楽曲の特徴であり魅力ですよね。『Everything(it's you)』みたいに、サビ前で一度溜めを入れることで、サビの頭に爆発的な盛り上がりを生み出す手法は、いきものがかりの楽曲でも多く使われています。僕らは路上ライブ出身なので、通行人に足を止めてもらうためには、なによりもサビのキャッチーさが重要でした。さらに、演奏を始めたらできるだけ早く盛り上がりのピークにもっていきたいから、『SAKURA』とか『ありがとう』みたいに、曲の頭にサビをもってくる構成も多いです。それこそ無意識な部分も含めたら、ミスチルのイズムは、いたるところに隠れていると思いますよ」

そんな水野さんのように、ミスター・チルドレンの意志と音楽を受け継ぐミスチル・チルドレンは、きっといまも着実に増え続けているに違いない。

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水野良樹が選ぶ Best 10 Songs

「HERO」
「innocent world」
「Any」
「光の射す方へ」
「つよがり」
「君が好き」
「CROSS ROAD」
「あんまり覚えてないや」
「彩り」
「花 -Mémento-Mori-」

水野良樹が選ぶベスト10には、小学校の「お別れ会」で披露したという「CROSS ROAD」もランクイン。当時初恋の同級生に「よかったよ」と言ってもらえたことが、なによりの思い出。「あんまり覚えてないや」の歌詞「うとうとしかけた瞬間に 奇跡のメロディーが降ってきて なのに覚えてないんだ」は、デビュー当時に不安を抱えていた自身の心境とぴったり重なり、涙を流した一曲だ。

水野良樹(いきものがかり)●1982年、神奈川県出身。高校在学中にいきものがかりを結成。ソングライターとしても多くのアーティストに楽曲提供を行う。3月にはペンネームの清志まれ名義で著書『幸せのままで、死んでくれ』を上梓して作家デビューを果たし、同時に同名の楽曲も発表した。

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