『スタートレック』から着想⁉“イオン風”で飛ぶMIT開発の超軽量飛行機とは

  • 提供:designboom
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マサチューセッツ工科大学(MIT)で宇宙航空学を研究するスティーブン・バレット(Steven Barrett)教授は、子どもの頃、『スタートレック』の映画やテレビシリーズをよく観ていた。

少年だった頃のバレットは、スタートレックに登場する宇宙船「シャトルクラフト」に釘付けになった。ディストピア的な未来を思わせるこの宇宙船は、「宇宙の地平線」を超高速で突き抜ける。

バレットは、これらの宇宙船にはフレームがなく、プロペラなどの可動部品もなく、音もしないように見えることに気がついた。このときの観察は、いまもバレットに影響を与えている。彼は、遠い未来の飛行機は、タービンやプロペラが取り除かれた、輝く光に包まれる『スタートレック』のシャトルクラフトのようなものになるべきだと考えるまでになった。そして、MITでその研究に取り組んだ。

バレットが率いるMITのエンジニアたちは2018年、可動部品がなく、プロペラもタービンも使わない世界初の軽量飛行機についての計画を発表した。この軽量飛行機は、「イオン風(ionic wind)」を利用して空を飛ぶ。バッテリーによって生成される大量のイオンの流れが、飛行機を押し進めるのに十分な力を生み出し、安定した飛行を持続できるという。

この飛行機は、コンセプトとデザインのすべてにおいて化石燃料を使わない。このことも、静かな滑空をもたらす要素になっている。

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画像提供:christine y. he

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設計の詳細とは?

バレットはMITの公式ニュースサイトで、推進システムに可動部品をひとつも使わないこの飛行機が、どうやって持続的に飛行できるかについて説明している。「こうした仕組みによって、静かで、機械の構造がシンプルで、燃焼排出物を排出しない飛行機の、まだ開拓されていない新たな可能性が開かれた可能性があります」

彼らがつくりあげた飛行機は、重さが約5ポンド(約2.3kg)、翼幅は5mで、フェンスに似た細い電線が取り付けられている。これらの電線が、プラスに帯電した電極として機能する一方で、翼の後端に同様に取り付けられた太い電線が、マイナスの電極として機能する。

機体には、複数のリチウムポリマー電池が搭載されている。バレットのチームには、MITエレクトロニクス研究所のデイビッド・ペルロー(David Perreault)教授が率いるパワーエレクトロニクスグループのメンバーも含まれていた。電池の出力を、飛行機を推進させるために十分高い電圧に変換する電源の設計は、彼らによるものだ。これにより、電池から40000Vの電気が供給され、軽量な電力変換装置を経由して、電線がプラスに帯電する。

さらにチームには、MITと米国防総省が出資するリンカーン研究所のトーマス・セバスチャン(Thomas Sebastian)とマーク・ウールストン(Mark Woolston)もいた。

チームは2018年、MITの屋内スポーツ施設「デュポン・アスレチックセンター」の体育館で、開発した飛行機の飛行実験を複数回実施した。飛行機は、体育館での最大距離である60mを飛び、チームは、飛行を持続するために十分なイオン推力が作られていたことを確認した。飛行は10回繰り返され、それぞれの飛行において、ほぼ同様の実績と結果が得られた。

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これ以降すべての画像提供:nature video

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核となるイオン風とは

バレットが、可動部品を持たない飛行機の推進システム設計の検討を始めたのは、2010年ころのこと。そして思いついたのが、「電気空力学的推力(electroaerodynamic thrust)」とも呼ばれる「イオン風」だった。細い電極と太い電極の間を電流が通過するときに生まれる風(推力)を表す物理的原理だ。

十分な電圧が与えられれば、電極間の空気は、ミニチュアの飛行機を飛ばすのに十分な推力を生み出すことができる。ただし、それなりに大きな飛行機が長時間飛行するのに十分なイオン風を作り出すのは不可能だろうと、これまでは考えられていた。

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飛行機のスケッチ

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電気空力学の原理が適用されている

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この飛行機に、プロペラやタービンなどの可動部品はない

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これらの電線が、プラスに帯電した電極として機能する

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飛行機の初飛行が行われた

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プロジェクト情報

名称: ionic wind aircraft(イオン風を利用する飛行機)
研究リーダー:スティーブン・バレット教授
チーム:デイビッド・ペルロー教授の研究グループ、トーマス・セバスチャン、マーク・ウールストン

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