Tシャツの生地は植物の綿花からつくられるコットン。市場に出回るTシャツは低価格のものが多く、それを可能にしているのは農薬を使い低コストの労働力で栽培された効率のいい生産方法だ。これがSDGsの精神に反しているとして今、コットンのあり方を見直す動きが広がっている。そのなかで持続可能とされるのが、無農薬栽培のオーガニックコットンである。上質な綿花だから肌触りよく、洗濯耐性に優れ長く着られるのもメリット。価格は割高でも本来あるべき服の姿として認知されつつある。
さらにTシャツの世界では、コットン自体を別の素材に置き換える試みも注目されている。こうした新しい服づくりを模索するブランドのひとつが、高品位なカットソーで名高い日本のフィルメランジェ。同ブランドのメリノウール、シルク、麻といった天然素材の次世代Tシャツは、見た目の美しさも汗の吸収発散といった機能性も併せ持つ優れモノだ。ここでは2022年夏の展開商品のなかから5タイプをセレクト。フィルメランジェ企画デザイナーの塩崎菜々子さん、PR担当の村田優さんの2名に着ていただいた装いとともにご覧いただこう。
ふわりとエレガントなメリノウール
メリノウールはファッション感度の高い人が今注目している素材。体の湿度や表面温度が最適に保たれ、天然の防臭性があり匂いにくい。汗が表面に染み出しにくく、汗ジミの心配が少ないのもメリットだ。フィルメランジェの製品はセーターのようなチクチク感がなく洗濯可能。形はボディフィットの定番モデルがベースで流行に左右されない。羊の毛を刈るウールは繰り返し採取でき、劣化が少なく長く着続けられる。SDGsの観点からもさらに人気が広がりそうだ。
通常は捨てられるシルクの“くず繭”
余り素材を活用し無駄をなくすこともアパレル産業が取り組んでいる重要課題のひとつ。この7分袖Tシャツに採用されたシルクは、繭を生糸にするときふるい落とされた“くず繭”を集め紡績した糸だ。シルク固有の柔らかさが出すぎないように工夫されたハリのある生地はまるで古着のよう。かつて医療用の縫合糸に使われたほど人肌に馴染むシルクの良さをデイリーに楽しめる一着である。
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持続可能なリサイクル&“落ち綿”
着古しのフィルメランジェのカットソーを直営店のハウス フィルメランジェで回収して裁断。オーガニックコットンの生地をTシャツにする裁断のとき出た余り生地(落ち布)も集め、ともに綿(わた)に戻した。その綿に新品のオーガニックコットンを足して生地に復活させたのがこのリサイクルTシャツである。厚手でやや固めのタフな風合いは男っぽさ満点。毎日着たくなる魅力に溢れている。
色の美しさが際立つ天然の草木染め
環境汚染につながるケミカル染色の問題が問われる社会になり、伝統的な草木染めの注目度が増している。見慣れるとひと目で草木染めとわかる独特な色が美しい。今季の染色素材は写真左から、ブラックベリー、ライム、マンゴスチン、ラズベリー、オレンジ、ブルーベリー。Tシャツの形はややゆったりで、生地は定番の「ヴィンテージ天竺」。夏を最高に楽しく過ごせること請け合いのデザインだ。
新しい使い道を与えた麻
大好きなスウエットシャツを暑い夏に着るのを諦めていた人に朗報である。フィルメランジェには麻のフレンチリネンを裏面に採用したアイテムがある。通気性がよく汗を素早く吸収し乾かしながら、見た目はコットンのスウエットとほぼ同じ。古来よりつくられてきた麻は痩せた土地で栽培でき、汚れが固着しにくく長く着られる良さもある。水濡れすると強度が増す、ワークウエアにぴったりな特性も見逃せない。価値を知ると手放せなくなる魅惑の素材なのだ。
自身に本当に必要なもの、社会的意義のあるものを着る時代に寄り添うフィルメランジェ。直営店や公式ECサイト以外でも一部のセレクトショップで取り扱われている。着てみればリピーターが多い理由をきっと実感できるだろう。
フィルメランジェ公式サイト
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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