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斎藤工×西島秀俊が語らう「ウルトラマンと仮面ライダー、ふたつの特撮現場で感じた醍醐味」と『ドライブ・マイ・カー』との共通点

  • 写真:筒井義昭
  • 文:SYO
  • スタイリング:三田真一(KiKi inc.)(斎藤工)、カワサキタカフミ(西島秀俊)
  • ヘア&メイク:くどうあき(斎藤工)、亀田 雅(西島秀俊)
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斎藤工さんと西島秀俊さんは2013年に放送されたNHK大河ドラマ「八重の桜」で初共演し、『シン・ウルトラマン』や今秋公開予定の映画『グッバイ・クルエル・ワールド』でも共演を重ねてきた。そんなふたりの共通項は、映画好きな「シネフィル」であること。対談も次第にディープな映画談議へともつれ込み……。

『シン・ウルトラマン』と『仮面ライダー BLACK SUN』で得た特撮の経験値

斎藤:「八重の桜」で共演させていただく前から僕は一方的に西島さんのファンで、東京フィルメックスに出没するという情報を聞きつけては探し回っていました(笑)。「八重の桜」の現場では長谷川博己さんも一緒で、僕にもカジュアルに映画の話をしてくださったことを覚えています。

西島:70年代に活躍したライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の話など、空き時間はとにかく映画の話ばかりしていたよね。

斎藤:そうですね。村上淳さんも出演していたのですが、中打ち(撮影の途中段階で行う打ち上げ)の席にTSUTAYAの袋を持ってきていて。「忙しくて返却が間に合わない」と聞いたので僕が代わりに返却に行って、そのセットをそのまま借りました。そこで観たのが『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』です(笑)。

西島:それは意外だね(笑)。

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斎藤工さんが演じるのは、ウルトラマンに変身する男、神永新二。「いまあるすべてを本作に注いだ」という斎藤さんは、自身の幼少期の思い出とも重なり、『シン・ウルトラマン』への想いは人一倍だ。ジャケット¥57,200、オールインワン¥64,900/ともにアンユーズド(アルファPR TEL:03-5413-3546)

斎藤:映画好きが集まる、不思議な現場でしたね。あと僕と西島さんの共通項としては、ともに白石和彌監督の作品に参加していること。僕は『麻雀放浪記2020』と『孤狼の血 LEVEL2』で、西島さんは今秋公開の『仮面ライダー BLACK SUN』。ウルトラマンと仮面ライダー、両方に出演されているのはすごいです!

西島:いやいや(笑)。両作品を経験して思ったのは、「本物とCGの使いわけ」がすごいな、と。『シン・ウルトラマン』も、メイキング映像を観ると工くんの変身シーンは実際にフラッシュで光らせているよね? そういった「これは本物じゃないといけない」という現場での判断が、特撮スタッフならではの経験値だと感じた。『シン・ウルトラマン』のチームも、実際はグリーンバックで演技するにしろ、本物を用意したり、その場に行って感じたことをすごく大事にしたりしていて。思い出すのは、暴風雨の中での撮影かな。結局そこは使えず撮り直しになったけど(笑)、実際に体験したことが演技に生きた気がしたよね。

斎藤:すごくわかります。

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禍特対の班長、田村君男を演じる西島秀俊さん。「往年のウルトラマンファンも、そうでない人も楽しめる一級のエンターテインメント作品になると確信している」と西島さんはコメントを残す。レザーブルゾン、シャツ(すべて参考商品)/すべてトム フォード(トム フォード ジャパン TEL:03-5466-1123)

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日本映画界におけるマルチバース化と、世界への扉

西島:あとは自分の特撮体験でいうと、『怪奇大作戦 セカンドファイル』に出演した時、円谷プロのみなさんの撮影方法を生で見られたことがすごく面白かった。レンズにワセリンを塗ったり、街中に赤や緑のライトを立たせると、そこが急に異世界になったり。普段の撮影とは全く違う経験だった。

斎藤:うらやましい……。でも、改めて『ドライブ・マイ・カー』の次に『シン・ウルトラマン』『仮面ライダー BLACK SUN』が控えているってすごいことですよね。海外の方にしたら、「ニシジマは次はヒーローになるのか!」と思うはず。西部劇の次に、マーベルのスーパーヒーロー映画に出るベネディクト・カンバーバッチみたい。クロエ・ジャオ監督も『ノマドランド』の後に『エターナルズ』を撮りましたし、本当にジャンルの境がなくなってきていますよね。『シン・ウルトラマン』の撮影は19年でしたが、ちょうどマーベルがフェーズ4の作品を発表したタイミング。『シン』の冠が付く作品群にもマルチバース的なニュアンスが感じられますし、日本映画界も世界と足並みが揃ってきた感覚があります。

西島:ただ『ドライブ・マイ・カー』も『シン・ウルトラマン』も、撮っている本人たちは“世界”をあまり意識していないのが面白い。もちろん、アカデミー賞に関して言えば『パラサイト 半地下の家族』がアジア映画の扉を開いてくれたのが大きいし、『シン・ウルトラマン』にしても、もともと「ゴジラ」や「ウルトラマン」が世界中の人々に愛されているという要因はある。でも、濱口竜介監督も世界に向けてというよりは、コアな部分を突き詰めて作品をつくっていたし、樋口真嗣監督や庵野秀明さんもオリジナルの「ウルトラマン」をリスペクトした上で、自分たちがどうやってそこに向かうかに集中している。いち映画ファンとして客観的に見ると、これらの作品が起爆剤になる可能性を感じるので、今後の広がりがすごく楽しみですね。

斎藤 工

1981年、東京都生まれ。俳優の他、映画監督や白黒写真家としても活躍。主演ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』がNetflixにて配信中。監督作『スイート・マイホーム』は2023年公開予定。



西島秀俊

1971年、東京都生まれ。ドラマ・映画に多数出演。主演映画『ドライブ・マイ・カー』が、第94回米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞。今秋には、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』が公開の他、配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』が今秋配信予定。

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※この記事はPen 2022年6月号「ウルトラマンを見よ」特集より再編集した記事です。

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