スポーツカーも電気自動車になってしまうのか?
欧州自動車メーカーの電動化の動きは、日本の自動車メーカーの戦略にも大きな影響を与えています。トヨタが年末に多数のEVを発表したのが象徴的でしたが、果たしてスポーツカーはどうなってしまうのでしょうか?
テスラ社が発売を近々予定している2代目のテスラ・ロードスターは、0~100km/hまで2.1秒、最高時速400km以上とアナウンスされています。これは現在発売されているほとんどの高性能車を凌駕する数値。ポルシェがすでに発売しているEV「タイカン」においては、同社のスポーツモデルの動力性能をすでに上回っています。部品点数が少ないEVは内燃機関よりシンプルかつ、バッテリーを高性能にすればいままでのスポーツカーの動力性能を超えることができるはずです。では、世界中のスポーツカーは、そんな技術的な追い風を受けてすべてがEV化するのでしょうか?
現時点で、考えるとその答えは「NO」でしょう。EVが普及するのと相反するようにエンジンを動力源とするスポーツカーは、市場でその値段を上げています。半導体不足やコロナの影響では説明できないほどの高騰ぶりです。
デザインがよく、性能がよく、ブランドの魅力、希少性、レースの戦歴、時代性などが複合的に加味されてスポーツカーの魅力になります。つまり性能がいいクルマ=スポーツカーではないのです。
フェラーリの最新モデル296GTBはいままで使用していたV8エンジンを小さなV6とし、約167馬力もの強力なモーターを搭載することでハイブリッド化。合計の出力は830馬力にも達しています。先日、縁あって試乗させてもらった中型SUVのジャガーEペース、レンジローバー・イヴォーグの最新モデルもハイブリッドモデルが追加。搭載されるエンジンは3気筒の1.5リッターだということに驚きます。
そんな3台に共通するのは、プラグインハイブリッド(PHEV)であること。
通常のハイブリッドとは違い、エンジンのレスポンスや出力を気持ちいいままに、バッテリーとモーターを強化した「走りのいいハイブリッド」なのです。
PHEVはハイブリッドとEVの中間にある動力源と表現されたりもしますのが、その特徴はエンジン車のような元気な走りをしながら、環境にも優しいというところです。
スポーツカーでもっとも重要なのは「気持ちよく走れること」。
そう考えると、これからのスポーツモデルにはPHEVが最適かもしれません。エンジン、バッテリー、モーターが複雑に相互作用し魅力的な走りを実現する様子はどこか機械式時計にも似ています。男心をくすぐるスポーツカーの動力源としてはぴったりなのです。
『Pen』所属のエディター、クルマ担当
1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。
1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。