節約したいと思って、少しずつATMからお金を引き出している方がいる。 この方法が間違いというわけではないが、そのお金をどうとらえるかで明暗はわかれる。少額しか引き出していないので「ATMから引き出した手元のお金は使ってもいい」と、思考してしまう傾向があれば、節約方法としては失敗だ。欲しいものがあると「必要かどうか」ではなく、手元にあるお金で「足りるかどうか」と考えてしまうからだ。つまり合理性よりも「欲しい」という感情による行動になってしまうのだ。
一方お金が貯まる人は、月の生活費を一括でATMから引き出している。そうすることでATMの手数料を避けることができる。もちろん一括で引き出しても、お金の管理ができている。金額が大きくてもお金のヤリクリがちゃんとできているのでお金が貯まるのだ。ちょこちょこ引き出すタイプの方は、お金のヤリクリができないタイプの可能性が高い。
お金の管理とは、近い未来を考え、いつ何にお金が必要なのかを考えてお金を使っていくことだ。節約のためにATMから少しずつ引き出すようにしても、1ヶ月で必要なお金の予算立てをしていなければ、また足りなくなって、引き出すということになりかねない。それではお金の管理ができていないようなものだ。
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お金に執着しすぎて投資できない
また、少額のお金しか引き出せない方は、「預金がなくなるのを怖がる」という心理もあるかもしれない。こう考えてしまう方は、投資には向かない。ある程度の不安はもちろんあっても良いのだが、お金に執着し過ぎていると預金がないのに恐怖を感じてしまうのだ。お金を失うのが怖い。だからマイナスになったら怖くなってしまう。それはつまり先行投資も怖い、となってしまうのだ。
だから、先にお金を投じて投資するということも怖いのだ。お金が貯まる人の行動原理は、「投資⇒成長⇒豊かさ」の段階がある。お金に執着している方が投資に手を出すと、マイナスになった時に怖くなって損を確定させてしまうのだ。長期的には、株式市場は成長をしている。上がったり下がったりしながら長期的には「増える」のだ。未来志向を持たずに、目先のことしか見られない方は、そもそも投資に向かない。
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「お金さえあれば」は危険な考え
お金を失うのが怖いと考える方は、お金そのものに大きな力があると誤解しているのかもしれない。「お金さえあれば、○○できるのに!」そう考えたことはないだろうか? 欲しいモノを買うことで、人は幸せな気分になる。これは、欲しいものを手に入れた時に神経伝達物質の「ドーパミン」が分泌されるからだ。ドーパミンは、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路を刺激する。報酬系とは、幸福感やエクスタシーを司る神経回路のグループのことだ。
つまり脳内でドーパミンが分泌されると、興奮してやたらと気持ちよくなるのだ。ドーパミンには中毒性があり、一度その気持ちよさを味わうと、またすぐに同じ快感を味わいたくなる。「お金さえあれば、○○できるのに!」と思っていて、実際にお金を使ってモノやサービスを手に入れて満足していると、お金を手に入れることで「何でも手に入るという満足感」を得ようと考えてしまうのだ。
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損に対して過剰反応してしまう
また、逆に財布から出て行ったお金がとても気になってしまうのも脳の性質だ。私達の脳は、「得をする」ことよりも「損する」ことに強いストレスを感じる。脳には「なんとしても自分を生かしたい」という基本的な欲求がある。そのため生き延びる確率を下げる「損」に対して、過剰反応を示すのだ。
例えば、猛毒のあるヘビの写真を見るだけでも「ゾッとする」ことはないだろうか? これは、かまれたりしたら死ぬかもしれない動物に対して脳が「危険だから近付くな!」という信号を発しているからだと考えられている。
これと同じ反応が「損」をしそうになった時にも起こるのだ。例えばネットショッピングでよく見かけるのが、「○円以上ご購入した方は送料が無料になります」という文言。これにつられて必要のないものまで購入してしまう。「無料」だからもらわないと損に感じてしまうのだ。だが、よくよく考えてみれば、不要なものまで購入してしまうことこそが「損」をしているのだ。このような脳のクセを知ることで、浪費を防ぐことができる。
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お金を増やすにはまず支出を減らす
お金を増やすには「収入を増やす」と「支出を減らす」の2つの方法があるが、どんなに収入が増えても支出を減らすことを覚えなければいつまで経ってもお金は貯まらない。お金を増やす方法を教えても、浪費を減らす方法を知らなかったら増えた分もすぐに浪費してしまう。
なのでお金持ちになるもっとも確実な方法は、浪費という名の支出を防ぐことにある。年収が多い少ないではなく、支出を減らしてお金を残すことができるようになることが、お金持ちへの第一歩なのだ。
100万円あっても、使えば何も残らない。だが10万円しかなくても使わなければ10万円が手元に残るのだ! お金を貯めるのが上手な方は、「支出を抑えた=貯金が増えた」と考えお金が貯まっていくことにワクワクとした喜びや楽しさを感じられる。そして楽しいから自然とお金が貯められるのだ。
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欲しい気持ちを抑えるコツとは?
浪費を減らすには、まず何かを購入する前によく考えることが大事だ。金融広報中央委員会が調査した「金融リテラシー調査(2019年)」によると、何かを買う前に、それを買う余裕があるかどうか注意深く考える人の割合では、
・あてはまる 34.0
・どちらともいえない やや考える 37.6
・どちらともいえない 中央値 22.2
・どちらともいえない ややあてはまらない 5.7
・あてはまらない 2.4
という結果だった。注意深く考える人は、約72%を占めているのだ。衝動買いをしているという方は意外にも少数派なのだと意識して欲しい。
どうしても「欲しい」という欲求を回避するのが難しいという方は、「今日買うのはやめて、明日買おう」と考えてみるといい。筆者も赤字家計だった頃は、プチプラコスメをたくさん購入するクセがあった。「しわが消える」とか「シミがなくなる」なんて宣伝文句につられて、せっせと購入していたのだ。浪費を抑えるために「今日買うのはやめて、明日買おう」を実行してからは、かなり購入の頻度が減った。
一旦家に帰って冷静になると、そこまで欲しくなかったことに気付けたのだ。翌日に買いに行くのは面倒だし、そこまでして欲しいモノは、意外と少なかった。欲しいと思ったものは「必要かどうか」を考えることで、手元にあるお金で「足りるかどうか」という思考から脱却できる。
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/