東には楽しいものが、たくさんある。浅草の喧騒、立石の高揚感、焼酎を割った梅風味の下町ハイボール…。そして、羊とパクチーに市民権を与えた梁さん率いる「味坊」集団。
そんなガチ中国の胸躍る感動が、城南地区のど真ん中、学芸大学駅前にやって来た、好香味坊だ。この日を待ち望んでいた人たちが、早くも学芸大学のガード下に集まり始めている。
羊に特化した「羊香味坊」、北京の古い居酒屋を復活させた「老酒舗」、湖南料理の「香辣里」、点心の「宝味八萬」など、色々な形態の店を日本に紹介してきた梁さんの新しいアプローチは小吃(しゃおちー)、中国の裏路地などには必ずある小さな店舗だ。
麺や肉まん、蒸し物類、揚げ物、ごはん物など、さっと食べられる食品を扱う店で、昼はランチとして勤め人たちが麺類を楽しみ、学校帰りの子供が羊串をおやつ代わりに買う。
夜はテイクアウトで焼売などの蒸し物を買う人や、冷菜を持ち帰る人、ビールや紹興酒で食事を済ませる人で賑わう、屋台と店舗の中間。テイクアウトがメインだが席も少しある家庭の台所の延長的な店だ。
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小吃は中国の都市や住宅地などの飲食を支える一番身近な店、その文化を梁さんが日本向けにローカライズして新しい中華のスタイルとして提案する。そう聞くと、ファーストフード的な印象を受ける小吃。
しかし、味坊集団では、自社農園、自社工房(ラボ)を完備。旬の野菜は、無農薬で手作りしている。餃子や麺なども、自社工房で手作りし、徹底的に自家生産にこだわる。「みんなの飲食店」を目指すからこそ、安心できるものを提供したい。その考え方を具現化したのが、学芸大学に誕生した好香味坊だ。
足立区にある味坊集団のラボは、あらゆる中国料理を試作し製造するキッチンや、製麺機などの様々な調理器具。耐火煉瓦を積んだ、羊の丸焼きが可能な巨大な窯さえある。屋上には干し野菜、各階の片隅には、常温で発酵を続ける巨大な白菜のペットボトルが並んでいる。
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メニューは、店では蒸籠ごと給される餃子や焼売、小籠包などの蒸し物。釜焼の鴨やチャーシュー、広州地方の牛もつ煮込みなどバラエティに富んでいる。〆のワンタン麺や素焼きそば、汁なし坦々麺などの麺類のほか、ご飯ものの種類も多い。軽く一杯の人たちには、味坊名物のラムの串焼きが食べられるも至福だ。
本格的な点心が気軽につまめて、〆の麺やご飯ものまである。学芸大学のガード下に集まるお客たちは、早くも小吃という中国の文化に夢中になっている。午前中のお粥から、午後のランチ、帰りがけに軽いつまみで飲む至福。味坊集団らしく、自然派ワインのグラスが用意されているのも嬉しい。
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テイクアウトオンリーの店ではなく、近年人気の町中華でもない。本格的な中国料理をリーズナブルに食べさせてくれる店。しかも、使っている素材は自社農園から届く新鮮で安心な野菜たち。
梁さんの新しい挑戦は、城南地区の人気スポット、学芸大学で新たな興奮を呼んでいる。とにかく楽しくて、一つひとつがおいしい。そんな中国料理ならではの魅力に触れる場所、好香味坊のグルーヴにはまったら、当分の間抜け出せそうにない。
文筆家
コピーライティングから、ネーミング、作詞まで文章全般に関わる。バブルの大冊ブルータススタイルブック、流行通信などで執筆。並行して自身の音楽活動も行い、ワーナーパイオニアからデビュー。『料理通信』創刊時から続く長寿連載では東京の目利き、食サイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。蒼井優の主演映画「ニライカナイからの手紙」主題歌「太陽(てぃだ)ぬ花」(曲/織田哲郎)を手がける。
コピーライティングから、ネーミング、作詞まで文章全般に関わる。バブルの大冊ブルータススタイルブック、流行通信などで執筆。並行して自身の音楽活動も行い、ワーナーパイオニアからデビュー。『料理通信』創刊時から続く長寿連載では東京の目利き、食サイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。蒼井優の主演映画「ニライカナイからの手紙」主題歌「太陽(てぃだ)ぬ花」(曲/織田哲郎)を手がける。