1. THE CITIZEN(ザ・シチズン)
メカニカルモデル NC0200-90E
クラシカルなスモールセコンドモデルながら、シースルーのケースバックからのぞくのは新たに開発した機械式ムーブメント「Cal.0200」。傘下のラ・ジュー・ペレ社のノウハウを活用し、シチズンが自社設計・組立を行うムーブメントは、機械式の新型としては2010年以来となる。電鋳手法による微細な凹凸で砂地模様を表現したブラックダイヤルは、独特な風合いを見せる。
2. OMEGA(オメガ)
シーマスター アクアテラ スモールセコンド
スポーティな「シーマスター アクアテラ」をスモールセコンド仕様に仕上げ、しかも搭載するのはオメガが誇る最高峰のテストを通過した超高耐磁性ムーブメント「コーアクシャル マスター クロノメーター 8916」。白ダイヤルに映えるブルーのコントラストは精悍だ。
3. PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)
トンダ GT
繊細なギョーシェダイヤルにブラックのスモールセコンドを合わせ、12時位置には桁セパレートのデイト表示を備えた「トンダ GT」コレクションの最新作。同社のクロノグラフでも展開する、人気のブラック・オン・シルバーの配色を3針モデルで表現した。
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スポーツウォッチの中でも、スモールセコンドを備えたモデルがいま目を惹く。モダンな形象の中に効かせたクラシカルなスパイスが、意表を突いた魅惑のギャップを生むからだろう。それは「レトロモダン」という流行にひと括りにされてしまいそうだが、事実は異なる。スモールセコンド付きのスポーツモデルには、レトロのお手本になるヴィンテージがない。
現代では一般的とされているセンターの3針だが、これは20世紀の半ばに普及したものだ。そもそもは懐中時計の時代から、秒針は時分針と分離させるのが定番であった。センターセコンドが広まった当初も、ムーブメントは「出車式」、つまり旧来のスモールセコンドの位置から歯車をひとつ追加して中央で針を駆動させる方式が採られるほどだった。次第にセンター秒針を初期設計するメゾンが増え、70年代に登場し始めた高級スポーツのジャンルでは、当然のようにセンター3針が採用され、現在まで続く定石となっていた。
一方で90年代になると、クオーツショックを経て機械式時計が復権するなか、スモールセコンドのクラシカルな魅力が見直される。その後は薄型化を競うドレスウォッチに長らく採用されてきた。
そしていま、共存し得なかったふたつの路線が初めて出合った。これは実に、前例のない最新スタイルなのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2022年5月号より再編集した記事です。