老後破産に陥る人の「3つの特徴」

  • 文:川畑明美
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老後を目前に控え、貯金ゼロという方もけっこういる。その方たちにはどんな傾向があるのか?相談を受けてきたFPの立場から考えてみた。

「50代になったが、老後資金が足りない」。そういうご相談はとても多い。ずっと先だと思っていた老後が、50代になると視野に入ってくる。目先の教育費の支払いで、気付けば「貯金ゼロ円」というご家庭も多い。


金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)を見てみよう。年齢・年収別の貯蓄額を見ると、年収は500万円~750万円未満の方が最も多く、「金融資産を持っていない」と回答している方は16.9%。平均貯蓄額は1,704万円だが、最も人数の多い貯蓄額(中央地)は800万円となっている。


すべての年収で最も多い貯蓄額は、年収と同等くらいの貯蓄額になっている。年収と同じくらいの貯蓄があれば、50代からでも老後資金を準備するのに十分な時間がある。家計管理をして資産の見える化と毎月の先取り貯金をするといい。

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老後破綻に落ちる人の特徴その1
⇒お金の勉強をしない

ただ、ファイナンシャルプランナーである筆者の現場感覚では、少し違う。筆者の教材やサービスを受けてくださる方は、年収と同等以上の貯蓄額がある方が多い。一方、教材やサービスは購入せずに、無料の相談のみで終わってしまう方は圧倒的に貯金ゼロの方が多い。


そして、金融リテラシー(お金に関する知識)が低いのも特徴だ。少なくとも、相談者の20%くらいは貯金ゼロの方がいるのだと感じる。日本の学校教育では、お金に関する教育が少ないため、金融リテラシーの低い人が多いといわれている。


しかし、お金に関する知識が低いと負債が膨らむなど日常生活にも支障が生じることがある。金融リテラシーは自分自身で積極的に高めるしかないのだ。金融リテラシーを高めるには、まず書籍を読むことから始めるといいだろう。お金の話が苦手な方は、物語になっているタイプが読みやすい。


ただし書籍を読むだけでは、身に付かないこともある。ある程度書籍で学んだら、ワークブック形式の書籍を利用して家計管理について書きだしてみるのも有効だ。筆者は、年間の収支と資産表、ライフイベント表は最低限作った方が良いと話しているが、読みながら書き込む形式のワークブックをお勧めする。

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金融リテラシーの低い人の末路?

金融リテラシーが高まると、将来の資金計画を立てる能力が高まる。資金計画を入念に立てることで、将来のお金に対する不安を軽減する効果もあるのだ! 見て見ぬフリが最も危険だ。人が生活すること自体が経済活動の中にあるのだから、お金の知識を増やすことは、必須なのだ。お金の知識が少ないために気付かないリスクを抱えてしまったり、取り戻せる税金について知らなかったりするのだ。


反対に金融リテラシーが高いとお金の使い方も上達する。夢や目標も叶いやすくなり、豊かで充実した生活が手に入るのだ。金融リテラシーが低い方は、なにも収入が低い方ばかりではない。収入が高くても赤字家計の方は意外に多い。もったいないことに、保険の掛け過ぎで赤字家計になっている方の相談も多く受ける。


貯蓄型の保険は、低金利の影響で利率が低くなっている。貯蓄と保障は切り離して考えるべきだ。「お金を使ってしまうから、強制的に引かれる保険でお金を貯めていました」と、いいわけをする方もいるが、保険以外でも自動引き落としできる金融商品は、たくさんある。あなたが知らないだけで、損をしているのだ。

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老後破綻に落ちる人の特徴その2
⇒手取りの減少を考慮していない

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親世代と比較すると同じ年収でも「手取り収入」は、確実に減ってきている。それを考慮しないと貯蓄はさらに減る。-istock

貯蓄ゼロになってしまう原因はもちろんある。15年ほど前と比較すると「手取り収入」が減少しているのだ。以前は、ボーナスから引かれる社会保険料はもっと少なかった。例えば以前は、子どもの扶養控除もあったが、現在は廃止されている。年収700万円を例にすると、15年前と比較すると50万円ほど手取り額が減っているのだ。さらにゼロ金利で、貯金の利息がほとんどなくなっているのも貯金ゼロになってしまう原因だ。


さらに追い打ちをかけるように、教育費も上がっている。今の50代が学生の頃から比較すると、2倍以上に値上がりしているのだ。文部科学省の国公立大学と私立大学の授業料の推移を見ると、現在50歳の方が入学した頃は国公立で54万8,000円、私大で85万3,792円(※初年度の授業料・入学金・検定料の合計)だった。※参考:文部科学省『国立大学と私立大学の授業料等の推移

文部科学省のデータには2004年までしか載っていないのだが、その時点でも国公立で83万5,800円、私大で113万546円と大幅に上昇している。一方、平均年収は、455万円から418万円に減っているのだ。

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親にお金がないと子どもにも連鎖する

収入が減って支出が増えているのだから、アラフィフ世代は、親世代よりも生活が苦しくなっているということだ。そして、子どもが奨学金を借りて大学に進学したとしても、賃金の高い大企業に就職できればよいが、中小企業に入社すれば生涯年収はさらに下がってしまう。


そうなると奨学金の返済が重しになり、自分たちの子どもにかけられる教育費はさらに少なくなるというループになってしまうのだ。言い方は悪いが、親が貧乏だと子どもも貧乏になってしまう「貧乏ループ」が働いてしまうのだ。


貯金ゼロの方ほど、金融リテラシーを上げて欲しい。金融リテラシーとは、お金やお金の流れに関する知識や判断力のことだ。これはお金を出してでも学び、実行して欲しいことだ。

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老後破綻に落ちる人の特徴その3
⇒友人の話を鵜呑みにする

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友人が購入した金融商品が値上がりしたといって同じものを買いたいと相談する人ほど、お金を減らしてしまう。-istock

相談者の質問で、少し危惧していることもある。「友人が増えたという投資信託を購入したい」そういうご相談も多いのだ。それは、たまたま値が下がっている時に金融機関に勧められて購入したから値が上がったのだ。


友人が増えたから始めるのは、危険な考え方だ。投資をしたら必ず増えるという保証はない。資産を減らすリスクをよく理解していないと痛い目にあってしまう。知識のないまま投資をした結果、知らないうちにハイリスクな投資をしてしまったりするのだ。ハイリスクな投資だけでなく、友人の言葉に惹かれてしまう方は詐欺にあう可能性も高いのだ。


自分で金融商品の良し悪しが見極められるように学ぶことも大切だ。そして一番大事なのは、投資をするのならば家計の状況をよく知ることだ。投資は余裕資金でするもの。貯蓄が少ないから、投資で一発逆転と考えるのはとても危険な行為だ。

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日本人の投資意識が変わってきた

金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](令和3年)を見ると昨年から大きく変わったことがある。金融資産の保有状況では、預貯金が依然と670万円と多いのだが、株や債券などの有価証券の保有率が増えて506万円となっているのだ。


また、金融資産を保有している世帯で「増えた」という方が昨年の27.9%から37.5%と上昇した。増えた理由を見ると、株や債券の評価額が上がった方が急激に増えているのだ。昨年は株価が上昇したので、増えたのだと考えられる。また元本割れを起こす可能性があるが収益性の高いと見込まれる金融商品を保有したいか、という問いには「そうした商品を保有しようとは全く思わない」との回答が50.3%だった。2012年の調査では84.5%だったのでリスクの考え方は大きく変化したのだ。投資への意識が変化したことは、喜ばしいことだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/