プラダ青山店の5階を深い青に演出、『ロール プレイ』展がスタートした。

  • 写真・文:中島良平
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『ロール プレイ』展の会場は、普段はオープンしていないプラダ青山店の5階。建物の特徴的なガラス壁面は完全に遮光され、深海を思わせる空間に作品が展示される。

ミラノのオッセルヴァトリオ・フォンダツィオーネ・プラダで開催中の企画展『Role Play ロール プレイ』が、プラダ青山店でも3月11日よりスタートした。展覧会を企画したのは、ニューヨークを拠点とする写真専門誌『Aperture』の元編集長でキュレーターのメリッサ・ハリス。写真や映像に表現されるロールプレイング、つまり役を演じることや、分身を創造することで可視化される文化や思想を背景に持つ「アイデンティティ」がテーマだ。

竣工から20年近く経っても古びることなく、青山のランドマークとして輝きを放つプラダ青山店(2003年竣工、ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)。会場の5階に向かうエレベーターで流れるのは、R&Bサウンドにギャングスター調の歌詞が乗ったアルバム『Never Be My Friend』だ。ドイツ出身のアーティスト、ベアトリーチェ・マルキは自身の分身として複数のキャラクターを創作し、ストーリーを紡ぐ手法で作品を手がけるのだが、そのひとりである2000年生まれのケイティ・フォックスが2014年にリリースしたのが『Never Be My Friend』だ。伝統やジェンダーの固定観念への皮肉が込められており、『ロール プレイ』展のプロローグとして来場者を会場へと誘う。

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キュレーターであるハリッサ・メリスのインタビュー動画では、自身にとって重要な作家としてソフィ・カルの名前をあげている。
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ジュノ・カリプソ『What To Do With a Million Years?』2018年 ロケーションはラスベガスで冷戦時代に大富豪が核シェルターとして建設し、夫婦で暮らした大邸宅。イギリス出身のアーティストは、多様な演出を施してセルフポートレートのシリーズを手がけた。

5階に入ると、暗く真っ青な空間が広がる。展示デザインを手がけたのは、アムステルダムとパリに拠点を持つランダム・スタジオ。幕や床のカーペットなどすべてが青で統一され、暗い青の照明によって、深海を思わせる空間を手がけた。作品を照射するスポットライトは青い光を中和し、作品のビジュアルを浮かび上がらせる。

服を選び、スタイリングすることで自分を演出することと、ある役柄や人物像を「演じること」は切っても切り離せない。ファッションブランドであるプラダが、この展示を行った背景にはどのような意図があるのだろうか。真っ青に演出されたプラダ青山店の5階スペースで、アイデンティティについて考えさせる展示を味わってほしい。

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ハルカ・サカグチとグリセルダ・サン・マルティン『Typecast』2019年 アメリカの映画業界のキャストや描かれるキャラクターの多様性の欠如を風刺すべく、役者たちにアンケートしてステレオタイプの役と演じたい役の両方を撮影。スライドショーでそのギャップを浮き上がらせる。
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澤田知子『OMIAI♡』2001年 衣装やウィッグ、メイク、体重コントロールによって30人のキャラクターに変身し、婚前写真専門のスタジオでポートレートを撮影。日本のお見合い文化をモチーフに、内面と外見のイメージの関係を探る。
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ボゴシ・セククニ『Consciousness Engine 2: absentblackfatherbot』2014年 疎遠になっている父親との関係をシミュレートするために、以前のSNS上での父親とのやり取りを、自身と父親の3Dアニメーションのアバターがロボット音声で再現するビデオインスタレーション。
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会場入口

Role Play ロール プレイ

開催期間:2022年3月11日(金)〜6月20日(月)
開催場所:プラダ 青山店 5F
東京都港区南青山5-2-6
TEL:03-6418-0400
開場時間:11時〜20時
会期中無休
入場無料
※展覧会の開催日時は青山店の営業に準ずるため、変更の可能性あり。
https://www.prada.com/jp/ja/pradasphere/special-projects/2022/role-play-prada-aoyama.html