時計ブランドとして、またジュエラーとしても世界的な存在であるピアジェ。そのCEOを昨年6月から務めるのがバンジャマン・コマー氏だ。ラグジュアリービジネスの経験が豊富であり、腕時計の目利きでもあるエキスパートである彼は、これからのピアジェをどう舵取りするのか。東京とジュネーヴを結んだオンラインインタビューで、コマー氏に話を聴いた。
──就任早々、GPHG(ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ)でピアジェの時計が2部門を受賞されましたね。
「就任して3ヶ月しか経っていませんでしたので、前任者やプロジェクトに関与していたチーム全員の功績だと思っています。ピアジェにとってはとても光栄なことです」
──新作「ピアジェ ポロ スケルトン」は、1700個以上のダイヤモンドと、自社製薄型自動巻スケルトンの魅力を併せ持っています。その価値をどう自己評価されますか。
「ひとつずつ数えていただきたいほどなのですが、正確には1746個です(笑)。本当に私の目から見てもすばらしい時計だと思っています。薄型でありながらスポーティで、カジュアル、シック、エレガント。ピアジェを表現する言葉が一つずつ詰まっている時計ですね。『ポロ』で『ジュエリー』、そして『スケルトン』。この組み合わせが生まれたのは、ピアジェの歴史から考えれば自然なものです」
──もう一本の新作「ライムライト ガラ アベンチュリン」の見どころ、魅力はどのようなところでしょうか。
「この時計は、エレガントの究極の姿でありますし、クリエイティブなデザインでもあると思っております。それに加えて、ミラネーゼメッシュ・ブレスレットですね。伝統的な工芸技術であり、ピアジェの本拠地であるジュネーヴでつくられたものです。軽量でつけ心地もよく、私たちは第二の皮膚(セカンド・スキン)などと表現しているのですが。いっぽうでケース自体がとても大胆で、力強い。クチュールのような軽やかさとコントラストがとても気に入っています。職人が8人がかりで、つくり出すのに100時間ほどもかかる。最高峰の技術を駆使して、1つずつ手作りしています。300点の限定ですが、おそらく早いうちに皆さんがご購入されるのではないでしょうか。
──ご自身の中にある時計とジュエリーへの情熱は、それぞれ何パーセントずつなのでしょうか?
2人の子どものうち、どちらが好きなのか、と問うような質問ですね(笑)。1人を選ぶことはできませんし、2人とも誇りに思っている。つまり50%と50%なのですが、その2つをともに融合させていくライン(ジュエリーウォッチ)がありますので、それも入れるとそれぞれ33%ほど、ということになるでしょうか。
──日本、また日本の顧客についての印象をお聞かせください。
私は30年以上前から心底から思うのですが(東京で5年間働いていた経験がある)、日本のお客様は、一人ひとりがとても豊富な知識を持っており、正確な情報を求めています。妥協をせずに、デザインも新たなものを常に求めていらっしゃる。その期待に沿うよう、に努力していきたいと思います。制限が解除されたら、真っ先に日本を訪れたいですね。
質問への受けこたえから、誠実な人柄がにじむコマー氏。この伝統あるブランドを、自らの手でどう進化させていくのだろうか。3月末からオンラインとフィジカルの融合で行われる、腕時計の祭典Watches & Wonders 2022。ピアジェが発表する新作に、関心は高まるばかりだ。