MOODMANと申します。今回の舞台は小平周辺。一橋学園駅のレコード店を起点にフィールドワークをさせていただきました。
12:00 PM 一橋学園駅〜ゴリポポレコード
お昼ちょっと前に国分寺駅に到着。西武多摩湖線に乗り換えて一橋学園駅へ向かいます。本日の目的は「ゴリポポレコード」に訪れること。2021年9月末に開店したばかりのアナログレコードの専門店で、火曜日のみの営業。コロナ禍のため、現在、入店には予約が必要です。昨年11月に初めて訪れた時の衝撃が忘れられず、2回目の訪問になります。
一橋学園駅北口を出て、学園坂通りを直進。300mぐらい歩くと豊生画廊という看板が目に入ります。一見、レコード屋さんに見えないので戸惑うと思いますが、臆せずにインしてください。1Fのギャラリーで談笑されている常連さんに会釈しつつギャラリー奥の扉へ向かいます。階段を降りた地下室が「ゴリポポレコード」さん。開店時間の12時ちょうどにお店に入ります。
まずは、店長(長井さん)にご挨拶して、入り口付近の7インチ新入荷の箱から物色をはじめます。こちらの棚は、シングルが一枚300円、LPが一枚500円。懐に優しいお値段設定です。日本盤を中心に、ディスコあり、昭和歌謡あり、ニューウェイブあり。いわゆる名盤から珍盤・奇盤まで、店長さんのセンスが光る幅広い品揃えが絶妙です。これからレコードを買おうかなというビギナーの方も、レコード探しに長けた玄人も、きっと大満足。お気に入りの一枚が見つかるはずです。
さまざまなジャンルが混在しているのも心躍るポイントでして、約30年前、アメリカ西海岸の倉庫を巡ってレコードを買い付けていた頃を思い出します。予約制なのでひとりでゆっくりとレコードを選べるのも素敵です。
ご近所さんが様子を見にきたり、地元の小学生が遊びにきたり。アットホームな空気の中、ゆっくりとした時が過ぎていきます。レコードはもちろんですが、レコード屋さんにいるこの時間が好きなのだ、ということを再認識。約1時間半の滞在で、7インチイングル20枚、12インチシングル4枚、ソノシート2枚、LP8枚…を購入。再び訪れる日を楽しみにしつつ、お店を出ます。
2:00 PM 町中華「万味」
レコード探しに没頭した後は、ランチタイムです。一橋学園駅にいったん戻りまして、学園坂通りをまっすぐ北上。昼下がりの商店街のダウナーな空気を楽しみながら5分ほどぶらぶら。町中華「万味」に到着します。
ゴリポポさんのインスタで推していた豆腐ソバと、餃子を注文。麻婆豆腐の下から中細の縮れ麺がのぞきます。期待通りの美味しさです。
ちなみに前回、ゴリポポさんに訪れた際に立ち寄ったのは、駅の反対側にある「宮廷麺なにや」。こちらは翡翠麺という、ほうれん草を練り込んだ独特な麺が有名。三色大餃子も個性ある美味しさです。苦労人に見えたのか「取っておきなさい」という感じでなぜかお釣りを多めにくれたのも沁みました。
3:30 PM 玉川上水
完全に満腹です。ランチの後は、恒例のウォーキングです。今回は、西武国分寺線の恋ヶ窪駅まで小一時間、歩くことに。ずいぶん、ロマンチックな駅名ですが、「鯉」から「恋」に転じたという説が有力そうです。急に「恋」が生臭く感じてきます。
せっかくなので、玉川上水沿いをぶらぶら。途中、「小川水衛所跡」で、ひと休み。ただの柵に見えますが、江戸時代に水番人が常駐して、玉川上水に流れる水量の確認や周辺の巡回、流れてくる落ち葉の掃除などを行っていた場所だそうです。落ち葉の掃除…という記述に妙にリアリティを感じてしまいました。ほんと、ご苦労さまです。
---fadeinPager---
4:00 PM 東村山駅
西武国分寺線の恋が淵駅から4駅で、本日ふたつめの目的地、東村山駅に到着します。「東村山音頭」世代なのでブチあがりながら、志村けんさんの銅像のある東口に向かいます。
「東村山音頭」の歴史については東村山市のホームページに詳しいのでぜひご一読を。昭和30年代後半、つまり東京オリンピックの頃に、東京郊外への人口流入を背景に各地で盆踊りが流行。「東京音頭」に負けない郷土の民謡を作りたい、という思いから制作されたのが「東村山音頭」とのこと。オリジナルの歌唱は三橋美智也さん。それが昭和50年代に入ってコミックソングとしてリバイバルヒットしたのが「志村けんの全員集合 東村山音頭」です。
志村けんさんの銅像は2020年6月に完成。昭和51年に植樹された3本のけやき「志村けんの木」の隣に設置されています。まずは、袴姿の志村けんさんにアイーンポーズで敬礼。当初は、本人がいつも着ていたジャンパーにジーンズ姿の銅像になる予定だったとのこと。駅構内のポスタ一以外は特に案内がないのですが、老若男女がひっきりなしに訪れて感慨に耽っています。
志村けんさんといえば、文章のファンでした。特に音楽情報誌「JAM」に執筆されていたソウルミュージックについての評論が素晴らしく、例えば、ロバータ・フラックがダニー・ハザウェイを追悼した作品「ダニーに捧ぐ」に寄せた一稿。「笑いの中の悲しみ、豊かさの中の悲しみ、そんなことを僕はこのアルバムから感じさせられた」…心に響きますね。
ファンとしては、東村山駅から徒歩15分ぐらいにある手打ちうどん「こせがわ」さんに訪れるのがコースのようですが、今回はお腹いっぱいすぎるので国分寺に戻ることに。
---fadeinPager---
4:30 PM 珍屋 国分寺北口店
ここからは、レコード屋さん巡りのルーティーンに入ります。国分寺といえば、1982年創業の老舗「珍屋」です。坂本慎太郎さんがデザインしたキャラクター「珍太」も有名です。ざっと店内を一回りして、昭和ムード歌謡のインストアルバムを1枚購入。
5:30 PM 珍屋 国分寺南口店
国分寺駅を抜けて南口に。お店の作りとしてはこちらの「珍屋」さんが好みです。レコード探しに没頭していると、レコードに全く縁がなさそうな上品な家族がご来店。お父さんが引率して店内をぐるっと周りながら、レコードという物体について一通り説明した後、さらっと店を出て行きました。レコード店はもはや観光地でもあるのかもしれません。こちらのお店では80sのダークウェーブなコンピを1枚購入。
6:00 PM レコファンMEGAドンキホーテ武蔵小金井駅前店
もう少し時間があったので、帰宅がてらJ R中央線に乗って隣の駅に。武蔵小金井駅北口の「レコファン」に向かうことにしました。
みんな大好き「レコファン渋谷BEAM店」が閉店したのが、2020年10月。終わる、終わると言いながらなかなか終わらなかったせいか、実際、終わった時には実感が湧きませんでしたが、今となってはロスが大きい。渋谷店が閉店した直後にオープンしたのが、「レコファン秋葉原SEEKBASE店」とこちら「レコファンMEGAドンキホーテ武蔵小金井駅前店」になります。店名が長いですね。ちなみに秋葉原の方がアナログは多いです。
はっきりとした看板がないため、これまた入店に戸惑うことと思いますが、駅前のメガドンキにそのまま入っていただいて、エスカレーターで4Fに。どなたかがすでにディグられた後なのか、アナログコーナーには今ひとつ欲しいものは見つかりません…と言いながら、12インチ3枚とLP2枚を購入。
6:30 PM カレーの店プーさん 〜 古本ジャンゴ
武蔵小金井のレコファン帰りにしばしば立ち寄るのが、カレーの店プーさんです。南口から徒歩5分。本日も…と思っていたら残念ながら火曜日は定休日でした。写真は前回訪問した際に食した、シーフードミックスのレギュラーサイズです(基本は野菜カレー派なのですがなぜかシーフードを頼んでいる)。
すっかりカレーの口ですが、通りを隔てた向かいにある古本ジャンゴさんへ。落ち着いた空気が流れている居心地の良いお店です。
映画関係の単行本3冊と、街歩き系の雑誌1冊を購入。ちょっとお腹が空いていますが、今回はこれでお開き。だいぶ重たくなったバッグを肩に、買ったばかりの本をパラパラめくりながら、家路につくことにいたしました。ではでは。
---fadeinPager---
一橋学園で出会ったレコード5選
■マーチン・デニーと彼のグループ「ハワイ・タトゥー」
エキゾチックサウンドの創始者マーチン・デニーさんが1964年リリースしたアルバム「Hawaii Tatto」からのシングルカットです。日本盤のみのジャケ付きシングルで、B面は「パーリー・シェルズ」。同年にリリースされた「Latin Village」と比べると、クールジャズ要素が後退。スチールギターを多用したイージーリスニングに路線変更しています。Dave Pellがプロデュース。
■ビリー・バンクスと八城一夫クワルテット「セント・ルイス・ブルース」
日本のジャズピアニストの草分け的な存在、八城一夫さんが率いるクワルテット。若き日の渡辺貞夫さんも在籍していたグループです。ボーカルでフューチャーされているビリー・バンクスさんは、50年代から日本に移住し、1967年に東京で没した人物。Una MaeCarlisleという女性の名義で声色を変えてリリースしていた作品が後年話題になったり、何かと興味深いお方です。
■舟木一夫「アロハ・オエ」
1964年公開、舟木一夫さんの主演映画「夢のハワイで盆踊り」の挿入歌です。青春歌謡映画としては初の海外ロケ作品で、祖父(笠智衆)に会いにハワイに渡った舟木さんが移民に向けワイキキの浜辺で盆踊りを開くというストーリー。この曲は終盤、パンナム機でハワイを発つシーンで流れます。1964年といえば海外旅行が自由化(1年に1回、外貨持ち出し500ドル)された年です。
■Marlene Sai & Strings「Magic Moods of Waikiki」
トラディショナル・ハワイアンの歌姫、マリーン・サイさんがオーケストラをバックに歌うドリーミンな一枚。指揮をとるポール・マークさんは、インペリアルレコードからリリースされていた「East to West」「Golden Melodies from Japan」をはじめ、日本をテーマにしたエキゾチカ作品の数々で知られてます。ポール・マークさんとしてはオーソドックスな路線ですがナイスです。
■いぬいゆみ「ばん茶と柱時計」
昭和40年代後半に活躍した女性フォークシンガー、いぬいゆみさんの1973年の作品。作詞は荒木とよひささん、作曲はミッキーカーティスさん。荒木さんとのタッグでは、1972年に発表され、のちに芹洋子さんなどが歌ってヒットした「四季の歌」が有名。ばん茶と柱時計をお茶の間の象徴と捉え、「それが幸せなのかな?」と幾度も問いかける、掴みどころのないフォークソングです。