静かなる砂漠の風景で際立つ、孤独の精神
写真家カリム・アムルの一連の写真は、エジプトのピラミッドや砂漠に広がる幽玄な雰囲気をとらえている。典型的な旅行写真とは違う作品を通じて独創的な世界を作り出しているカリムは、その作品の中に独特な精神を浸透させている。それは、広大で何もない孤独な風景を際立たせるような精神だ。
一人の人物、一本の木、頭上の月など、選び出した一コマ一コマが、見る者に、砂漠の孤独な静寂を感じさせる。ギザの3つのピラミッドが、きれいに重なったかたちで、霞んだ地平線から姿を見せる。その前景には、旅人たちの小さな集団がいる。古代の神秘的なピラミッドの堂々とした存在感を、印象的にとらえた作品だ。
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抽象化された写真
カリム・アムルはその作品を通じて、エジプトにおける砂漠の風景を、雰囲気のある抽象的なものに変換している。どこまでも続く砂丘がフレーム全体を埋め尽くし、平坦なレイヤーの連続となり、風にさらされた砂の質感を表現する。ある画像では、はっきりとした色のブロックで区分されていた地平線が、他の画像では、柔らかな色合いのかすんだグラデーションとして穏やかにフェードアウトする。
この写真シリーズの発表は、パリで開催の展覧会「星の王子様と出会う(an encounter with the petit prince)」(詳しくはこちら)のオープニングと重なり、タイムリーなものとなった。
この展覧会では、小説家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリのオリジナル原稿と絵を展示している。アフリカの砂漠で過ごした時間が、その作品と人生を大きく変えたサン=テグジュペリは、「これは世界でもっとも愛おしく、もっとも悲しい風景だ」と語っている。
サン=テグジュペリのスケッチは、最小限の線と、何もない空間が印象的だ。それは、カリム・アムルによる風景の表現と響き合うものだ。
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プロジェクト情報:
作者:karim amr | @krimamr
※この記事はdesignboomからの提供です。