道路を走行していた車がすっと滑走路に入る。そして車体から翼を広げ、大空に向かって飛び立つ―― そんな「空飛ぶ車」が現実になる日が近づいている。
去る1月、クライン・ビジョン社が開発した車と飛行機のデュアルモードカー「エアカー(AirCar)」に対し、スロバキア運輸局が「耐空証明(Certificate of Airworthiness、航空機が安全に航行できる性能を有する証明)を発行した。Dezeenの報道によると、「欧州航空安全機関(EASA)」の基準に適合した200回以上の離着陸を含む70時間以上の飛行実験を成功させたことを受け、認定に至ったという。
BMW製のガソリンエンジンを搭載し、ボタンを押すだけで自動車から飛行機に変わる「エアカー」。昨年6月28日に行われた飛行実験では、スロバキアのニトラとブラティスラバの空港間を結ぶ都市間飛行に成功。両空港間の道路上の距離は約60マイル(96.56km)だが、実験では35分で飛行を完了。時速100マイル(160km)以上、高さ8000フィート(2500m)以上に到達可能であることも明らかになった。
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クライン・ビジョン社の創業者であり、CEOおよびCTO(最高技術責任者)を務めるステファン・クライン氏は、「今回取得した『エアカー認証』は、効率性の高い『空飛ぶ車』の大量生産への扉開くものです」と喜びを語っている。クライン氏は1980年代後半から「空飛ぶ車」の開発を続けてきたこの道のリーディングパーソン。2017年に友人のアントン・ザジャック氏と共に同社を立ち上げた。
8人の熟練した専門家チームと10万時間以上の時間をかけて設計された「エアカー」。飛行機モードの静的・動的安定性は高く、パイロットが操縦桿を触れることなく離着陸も可能とのこと。クライン・ビジョン社はADEPT Airmotive社の軽量エンジンのテストも完了しており、一年以内に新規生産モデルの認証を取得したいと考えている。また同社はツインエンジン搭載の4シート版も開発予定であり、このモデルが完成すれば、水上着陸も可能になるかもしれない。
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「空飛ぶ車」の開発競争は今後激化する!?
「Motor Authority」によると、現在数多く見られる都市型エアモビリティのプロトタイプはマルチコプター型ドローンが主流だ。しかし「エアカー」はこのタイプではない。3分以内 にスポーツカーから小型飛行機に変形可能な、文字通り「飛行機」と「車」の合体型機である。
しかし「Dezeen」によると、「エアカー」は電動エンジンや垂直離着陸する機能を搭載する、「eVTOL(電動垂直離着陸機)」ではない。つまり陸路から空路に転換する際、必ず滑走路で離着陸する必要があり、ヘリポートや港を利用することは不可能であると指摘している。
今後「空飛ぶ車」の開発競争が進む中、離着陸システムのトレンドがどうなるかにも注目が集まる。
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現在、「エアロモービル(AeroMobil)」(AeroMobil社、スロバキア)、「リバティ(Liberty)」(Pal-V社、オランダ)社等が、「エアカー」を追う位置につけている。また現代自動車(韓国)も都市型エアモビリティに注目しており、2028年にeVTOL機のローンチを目指している。
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「エアカー」の飛行実験映像
2021年6月28日に行われた飛行実験の動画はこちらから。車が軽やかに空を飛ぶ風景は、まるで映画のワンシーンのようだ。
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こちらの動画(↓)は迫力の飛行風景に加え、後半部分で飛行機→自動車への変形シーンがしっかり見られる。
クライン・ビジョン社が描く近未来。今後、一般カスタマーの利用に向け、都市型エアモビリティ対応インフラも整備されるのだろう。