「調和を失った感じ」や「しっくりこない感じ」、また「ちぐはぐに思われること」などを意味する違和感。日々の暮らしや仕事、また世の中の出来事においても違和感を覚えることは少なくなく、ともすればネガティブにも響く言葉だが、その違和感をあえて作り出し、観る人を楽しませようと創造的な活動をするアーティストチームがいる。
それが1999年に多摩美術大学在学中に結成されたAC部(エーシーブ)だ。現在、クリエイションギャラリーG8で開催中のAC部『異和感ナイズ展』では、ペインティングからアニメーション、それに参加型のインスタレーションといったさまざまなメディアを用いて、あっという驚きとともに、予期せぬ違和感を得られるような作品を展示している。「このようなアイデアはどこから出てくるのだろう?」と思うほど、AC部のユニークな才覚を感じさせる展覧会だ。
まずはモニターとキャンバスからなる価値観査定機『Secondary’s』にトライしたい。モニターには日付とともにUSドルや日本円などの金額が表示されているが、これは独自のアルゴリズムによってモニター横のキャンバス作品の美的価値を査定したもの。来場者が絵筆をとり、自由に線を走らせることによって、金額が変わるという仕掛けだ。ただしモチーフを加えれば常に価値が上がるわけではなく、大幅に下がったりすることがあるのも面白い。それは黄金比と関連付けられているというが、にわかには分からず、「価値とは何か?」について考えさせられる。
絵画とアニメーションが連動する『Number of layers』シリーズも、絵と映像のずれによる違和感を楽しめる作品だ。まず最初はAC部が価値観査定機『Secondary’s』を用いて美的価値とバランス感覚を追求したペインティングが並んでいる。そこにはカフェや飲食店のカウンター、またセールの案内を見つめる人物などが描かれているが、どれも複数のレイヤー状に分かれているのが特徴だ。続く映像では絵画を3D状に回転するようにアニメーションとして展開。軽やかなアップテンポのBGMとともに絵画の視点が空間へと拡張する光景を楽しめる。
この他、会場では「関節ジオメトリックス技法」や「素材スターシステム」といったAC部が過去のコミッションワークで用いた手法の制作プロセスを紹介。さらに架空の高級腕時計のイメージをARにてデザインした『HEROLEX/OOMEGA』といった実験的な作品も展示されている。結成から23年。AC部は学生時代のデッサンの講評会にて上手な作品が並ぶ中、わざと下手に崩して描き提出したら、みんなが面白がったことを原点に活動を続けている。シュールで遊び心も満ちた「異和感」を覚える作品にて、頭の中にこびりついた思考や感性をシャッフルしたい。
AC部『異和感ナイズ展』
開催期間:2022年2月22日(火)~3月30日(水)
開催場所:クリエイションギャラリーG8
東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
TEL:03-6835-2260
開館時間:11時~19時
休館日:日・祝
入場無料
※臨時休館や展覧会会期の変更、入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
http://rcc.recruit.co.jp/g8/