ヱビスビールが売れ続けるデザインの秘密と、時代を映すポスターコレクション

  • 文:廣田俊介
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明治時代に、資本家が集まり、日本一のビール会社を目指して始まったのがヱビスビール。130年を超える歴史をもつこのブランドが、長い間愛され続けるには、さまざまな理由がある。

変わらないようでいて、実は時代に合わせて少しずつ進化を遂げている。日本を代表するプレミアムビール、ヱビスビールはより現代のライフスタイルに対応した幅広いシーンで楽しまれる存在になるべく、2021年に商品の顔である缶のデザインもより洗練させてリニューアルをおこなった。

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<恵比寿様>
発売以来、ずっと描き続けられている恵比寿様はより目立つように大きくなり、衣の色もクリーム色から淡いゴールドにリフレッシュ。「実はだいぶ前ですが、当時手描きだった恵比寿様をデジタルデータに起こした際、歪みを取り、クッキリとした目鼻立ちに変わっています」。明治27年に御分霊を東京目黒のビール工場に勧請して以来、ヱビスビールはえびす宮総本社の西宮神社との関係も深い。西宮神社の社紋は柏紋だが、恵比寿様の胸に入っているのは蔓柏紋。同じものではなく微妙に違う紋を採用した理由は今となっては不明。

<金の地色>
1980年代にデザインをリフレッシュした際にプレミアムビールとしての高級感を視覚的に訴求するために全面に金を採用して以来、続いているゴールドのカラー。当初は印刷技術の関係で赤みの強い色合いだったが、現在はヱビスビールの液色を思わせる濃度感のある金色にしている。また、近年ではマットニスを採用し、より落ち着きがある色合いに。ちなみにロットごとの色ブレも厳格にチェックされている。

<ロゴ>
2016年にデザイン変更をおこなった際にクリーム色にフチ影付きのフォントから焦げ茶で影付きのシャープなロゴに変更。ベースに使用しているフォントはTrajanだが、モダンに見えるようにセリフの形状を変更するなど、細かな改良が施されている。「カラーと形状を変更したことで、商品と印刷物で同じロゴを使えるようになり、ブランドとしての統一感を強調できるようになりました」

<BORN IN 1890, TOKYO>
これまでは恵比寿様の横にレイアウトされていた発売年度は、今回のリフレッシュにあたってより目立つロゴの下に赤字で表記されるように。ヱビスの長い歴史と東京生まれという出自を高らかに謳うデザインに変更された。

<英文>
イタリック体で描かれた英文は良質なモルトとホップを使い伝統的な手法で造られたビールであることを主張する内容。ちなみにその上に書いてあるPremiumの文字は80年代のデザイン変更の際に記載されるようになったもの。「ヱビス、ちょっと贅沢なビール♪」のCMキャッチコピーでもお馴染みなように、味わいの面でもデザインの面でも国産ビールのなかで「プレミアム」を謳ったビールの先駆けでもあるのだ。

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変わっていないようでいて、実は少しずつ時代に合わせてブラッシュアップされています

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左:1972年のデザイン。ヱビスビール復活の翌年から缶も発売開始。当時はアルミ缶ではなくスチール缶だった。 中央:1984年のデザイン。白地に瓶用のラベルを貼り付けたようなデザイン。他の缶と比べると雰囲気がかなり違う。 右:1985年のデザイン。1980年代にはリブランディングを敢行し、恵比寿様のデザインもシャープに。この頃より「Premium」がデザインされる。

発売当時から鎮座する恵比寿様のアイキャッチに、ビールの旨味を視覚からも感じさせる黄金色。ヱビスビールの缶のデザインは「気に入っているから、なるべく変えないでくれ」という声が上がるほどユーザーから親しまれている存在だ。しかし、実は少しずつ毎年のように変化をしているのはご存知だろうか? デザインルームの田中章生さんにヱビスビールの缶のデザインの歴史について、話をうかがった。

「消費者にとってヱビスビールはちょっと贅沢で特別なビールという高級感や美味しさは既に認知されています。そこで2014年には、より普段からヱビスを楽しんでもらうにはどうしたら良いだろう、という観点から消費者意識の調査をおこないました。数多くある金色の缶商品の中で、お客様がどこを見て、それがヱビスビールであると認識しているかを検証してみたところ、ロゴではなく恵比寿様を見ているということがわかりました。2016年にその時の結果を踏まえ、恵比寿様を大きくして重心を上にあげて、アーチのロゴを取り、高級感を残しながらも若返りを図りました。そして、ロゴの色に焦げ茶を採用し、シャープで落ち着きのある高級感を加えました。2021年には恵比寿様を更に大きくし、BORN IN 1890, TOKYOを赤で入れることで、シンプルながら堂々としたデザインになりました。消費者からは『変わったとは気づかなかった』という声もいただきましたが、それはある意味で私たちにとっては成功。ヱビスの歴史を踏まえながら、新しいデザインに仕上がったと感じています」

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左:1990年頃のデザイン。缶の下部に恵比寿様と馴染みの深い、海を思わせる青海波の図案を配し、やや華やかな印象に。 中央左:1991年のデザイン。恵比寿様がリアルな描写に変わり、クリーム色のロゴやアーチ状の飾り文字を入れることで、クラシックでトラディショナルな印象に。 中央右:2009年のデザイン。この頃には缶のネック部分がスムーズになっている。また、地色の金もより濃度感のあるしっかりとした色になった。 右:2016年のデザイン。ロゴを焦げ茶のフォントに変更し、モダンで引き締まった印象に。恵比寿様もより目立つよう大きくして配置されている。

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新価値開発部 クリエイティブディレクター 田中章生さん●1995年武蔵野美術大学卒業。同年、サッポロビール株式会社入社。サッポロビール株式会社 新価値開発部 デザインルームにて、アルコール飲料を中心にパッケージや商品広告の制作、制作ディレクション、コンセプト開発に携わる。

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時代を映すポスターコレクション

パリ万博での金賞受賞から1990年代に一気に知名度を上げることに成功した「ヱビスビールあります。」のポスターまで、巧みな宣伝戦略もヱビスの持ち味。古今のポスターを通じて、ヱビスのパブリシティの歴史を感じてみよう。

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