米国の最南端から海を隔てて約150㎞という至近に位置するキューバは、スペインとアフリカの移民が多数を占めることから、独特の文化を醸成。とりわけさまざまな要素が混じり合った音楽は世界的な人気があり、ミュージックシーンに大きな影響を与えてきた。そんなキューバン・テイストを腕時計で表現してきたのが、クエルボ・イ・ソブリノスだ。ケース上下にフレアを造形した角型の「プロミネンテ」をはじめとして、独特の装飾性が異彩を放つ。
新作の「ロブスト・チャーチル サー・ウィンストン」は、こうした角型モデルに比べればオーソドックスな丸型に見えるが、細部に手をかけており、かなり個性的なのである。2段で構成されたステップドケースは、ラグに向けてえぐるようにカーブ。それによって絞り込まれたラグも、手首に向けて急角度で湾曲している。それだけでなく、ミドルケースはステンレススチール製だが、これを包み込むサイド面はチタン製というモジュラー構造を採用。チタン合金はスチールよりも軽量で硬度が高いので傷がつきにくい。耐食性にも優れていることから、外装として選ばれたのではないだろうか。こうした技術力から想像できるように、スイスメイドの高級機械式時計であり、「スイスのハートにキューバのスピリット」とも評されてきた。
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レバー式リューズなど、個性的なディティールが魅力
深みを感じさせるペトロールブルーのダイヤルには、緻密で繊細極まりないギョーシェ模様が施されているほか、6時位置にはひとつの変形小窓の上下に日付と曜日を表示。これもまた一般的なスタイルとはいえないだろう。
「ロブスト・チャーチル サー・ウィンストン」は、この名称で分かるように、第2次世界大戦時にナチスドイツの苛烈な侵攻を阻止した元英国首相にオマージュを捧げる限定モデル。彼はキューバ産の葉巻を愛好しており、1946年にはクエルボ・イ・ソブリノスのブティックに立ち寄ったこともある。それにちなんで、「ロブスト」と呼ばれる太くて短い葉巻からインスパイアされたなめらかな丸型ケースには、美観を損ねることのないよう折りたたみのレバー式リューズを採用。時間調整やスタートアップのゼンマイ巻き上げは、レバーを引き上げて行う。このように、ひと味もふた味も異なったディテールを備えた腕時計なのである。
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ヘミングウェイも顧客だった高級時計宝飾店ブランドを継承
クエルボ・イ・ソブリノスは、キューバの首都であるハバナで1882年に開業した高級時計宝飾店がルーツ。「クエルボとその甥たち」と命名された店は大成功を収め、スイス製のムーブメントを搭載したキューバン・デザインのオリジナルモデルを製作するようになった。顧客名簿にはヘミングウェイなど当時のセレブリティの名前が数多く列記されていたという。ところが、1959年にカストロによるキューバ革命が成立。姿を消してしまった。それから半世紀近くを経た2002年に、スイスのルガーノを拠点として復活。全盛期のスケッチやデザインにヒントを得て、往時のスタイルを最新技術で再現したコレクションを発表してきた。
かつてのハバナは高級リゾート地であり、カリブ海の眩しい陽光がきらめく中で世界的な著名人や有名俳優たちがバカンスと交流を楽しんだ。夜ごとに催されたパーティの華やかな雰囲気と最上級の葉巻の香りを、この新作から嗅ぎ取っていただきたい。
問い合わせ先/ムラキ クエルボ・イ・ソブリノス TEL:03-3273-0321
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