Penが厳選!座れる「名作椅子」のある空間

  • 写真:加藤純平 文:Pen編集部
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本当の魅力は座ってみないと分からない、それが椅子の奥深さ。美術館を中心に、実際に座ることができる公共空間にある椅子を紹介しよう。

ハウ ハイ ザ ムーン@アーティゾン美術館

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How High the Moon

倉俣史朗の代表作のひとつであり、堅牢さと軽やかさを併せもつ「ハウ ハイ ザ ムーン」。めったにお目にかかれないこの椅子に座ることができるのが、「創造の体感」をコンセプトとする美術館、アーティゾン美術館の6階展示室ロビーだ。すべてエキスパンドメタルでつくられた椅子のディテールを間近に見れば、その卓越した技術力にも驚くはず。同フロアにひとりがけのソファと長椅子もあり、どちらも倉俣の作品だ。

アーティゾン美術館

住所:東京都中央区京橋1-7-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜18時(祝日を除く金曜は20時まで) ※入館は閉館30分前まで
定休日:月(祝日の場合は開館、翌火曜休み)、展示替え期間、年末年始
4/10まで『はじまりから、いま。1952–2022 アーティゾン美術館の軌跡──古代美術、印象派、そして現代へ』が開催中
www.artizon.museum

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サイドチェア@東京国立近代美術館

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Side Chair

デザイナーでありアーティストでもあるハリー・ベルトイアは、1952年にワイヤーを用いた家具コレクションを発表。その代表作でもあるこの椅子は、谷口吉郎が69年に設計した東京国立近代美術館の「眺めのよい部屋」にあり、鮮やかな絨毯の空間で静かに輝きを放つ。2012年の展示室リニューアルの際に、空間との調和を考えてクッションをグレーに変更。表面塗装も剥がして新たにクロムメッキを施し、生まれ変わった。

東京国立近代美術館

住所:東京都千代田区北の丸公園3-1 
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜17時(金曜、土曜は20時まで)※展覧会により開館時間が異なる場合あり。入館は閉館30分前まで
定休日:月(祝日の場合は開館、翌火曜休み)、展示替え期間、年末年始
3/18から『没後50年 鏑木清方展』が開催
www.momat.go.jp

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六角椅子/食堂椅子@自由学園明日館

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Rokkaku Chair/Dining Chair

フランク・ロイド・ライト設計の自由学園明日館にある「六角椅子」と「食堂椅子」。「六角椅子」は旧帝国ホテルにあった「ピーコックチェア」に似ていることもあり、ライトがデザインしたと思われがちだが、実は作者不明。「食堂椅子」は明日館の設計に携わったライトの弟子・遠藤新が女学生たちに依頼され1922年にデザインした。どちらも六角形をモチーフとし、学生向けに少し小さめにつくられているのが可愛らしい。

自由学園明日館

住所:東京都豊島区西池袋2-31-3 
TEL:03-3971-7535
開館時間:10時〜16時(第3金曜日は18時〜21時の夜間見学もあり)※月1日程度の休日見学は17時まで。入館は閉館30分前まで
定休日:月(祝日の場合は開館、翌火曜休み)、年末年始、土・日・祝日は不定休
https://jiyu.jp

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CH25@国立新美術館

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CH25

大きな吹き抜けが心地よい黒川紀章設計の国立新美術館。ロビーにあるハンス・J・ウェグナーの「CH25」は、1949年にYチェアとともに生まれたCH27を進化させたもので、翌50年に誕生。いまでは椅子に馴染みの深いペーパーコードだが、当時は一般的な素材ではなかった。戦渦の物資不足の中で使われていたペーパーコードをこの椅子に用いて安定性と耐久性を示し、その後多くの椅子に使用されるようになった。

国立新美術館

住所:東京都港区六本木7-22
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜18時(毎週金・土曜は20時まで)※入場は閉館30分前まで
定休日:火(5/3は開館)、年末年始 
5/30まで『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年展』が開催中
www.nact.jp

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セコンダ@スパイラル

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Seconda

1985年に槇文彦が設計した施設、スパイラル。その上階へと上がる途中には、建築家マリオ・ボッタがデザインした「セコンダ」がある。シンプルな構成ながら遊び心と華やかさが同居する、ポストモダンを象徴する椅子のひとつだ。青山通りを望む、見晴らしのよい場所に竣工時から変わらず置かれており、80年代のエッジィな空気感を孕んだ槇の建築空間に、アクセントを加える存在として並んでいる。

セコンダ

住所:東京都港区南青山5-6-23
TEL:03-3498-1171
営業時間:各店舗の営業に準ずる
定休日:各店舗の営業に準ずる
3/24からスパイラルガーデンで『曽谷朝絵展 とことこふわり』が開催
www.spiral.co.jp

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キャブ チェア@東京国立博物館 法隆寺宝物館

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CAB Chair

MoMAをはじめ数々の美術館を手がける建築家・谷口吉生設計の法隆寺宝物館。水平・垂直の直線で構成されたガラスとコンクリートの緊張感のあるエントランスに並ぶのは、マリオ・ベリーニの「キャブ チェア」。イタリアの最高級のなめし革を使った艶のある質感が美しい。谷口は椅子を置く位置まで考え、床に椅子の脚を置く小さなくぼみを設けた。考え抜かれた谷口の空間にふさわしい高級感あふれる椅子だ。

東京国立博物館 法隆寺宝物館

住所:東京都台東区上野公園13-9 
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分〜17時 ※入館は閉館30分前まで
定休日:月(祝日の場合は開館、翌火曜休み)、年末年始、その他臨時休館あり
2022年秋から『特別展 国宝 東京国立博物館のすべて』が開催
www.tnm.jp

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※この記事はPen 2022年4月号「名作椅子に恋して」特集より再編集した記事です。