福島県南相馬市で大正5年創業の「宍戸電氣餅屋」。東日本大震災後、市内の店が次々に閉まる中、同店の生大福を初めて口にした鈴木瞳さんは、「伝統の味を残したい」とその日に弟子入りを懇願。修業を経て師匠を納得させる味にたどり着き、昨年11月に代々木八幡で「あいと電氣餅店」を開業した。
賞味期限わずか5時間という生大福は、非常にやわらかな餅が主役だ。原料は新潟県産のもち米「こがねもち」のみ。もち米の旨味や甘みが、そのまま餅の味に活きている。一晩水に漬け、朝せいろで蒸した、つき立ての餅を使用。
北海道産「えりも小豆」と数種類の砂糖をブレンドして炊いた自家製の餡は、塩気の加わった上品な甘みだ。しなやかな餅の中から、なめらかな餡がとろける。
鈴木さんに生大福の味を継承後、宍戸電氣餅屋は静かに幕を閉じた。南相馬で生まれた秘伝の味は、しっかり受け継がれ、東京から全国へファンを増やしている。
あいと電氣餅店
住所:東京都渋谷区元代々木町54-1
TEL:03-5738-7849
営業時間:11時~15時
定休日:月、火
www.denkimochi.com
※この記事はPen 2022年4月号より再編集した記事です。