初めてスーツをオーダーする時は、誰でも緊張するものだ。どんな生地を選び、どんなデザインにすれば自分の思い描くスーツが出来上がるのか、と悩むもの。俳優・磯村勇斗が初めてスーツをオーダーする場に選んだのが、2021年12月に東京・銀座にオープンした、ポール・スミス メンズの旗艦店。賑やかな晴海通りに面する一方、まるで隠れ家のようなサロン的な雰囲気も漂う。この場所でポール・スミス流オーダースーツを磯村が堪能した。
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まるで美術館のような店内で、スーツをオーダーできる愉悦
海外からも圧倒的な人気を誇る街、東京・銀座。ここで新たに旗艦店を構えたのが英国を代表するブランド、ポール・スミスだ。関東では初のメンズ旗艦店で、場所は晴海通りと並木通りの交差点の角という一等地。地下1階から2階までの3フロア構成で、ブルーとグリーンが交互に彩色されている外壁がいかにもポール・スミスらしい。銀座でもランドマークになりそうなユニークなショップに仕上がっている。
「銀座には、なかなか来ることがないですね。でも訪れてみると、品がある街だと感じました。高級ブティックが数多く並んでいて、やはり銀座は洗練されている印象です。ある意味、自分の背筋が伸びる街と言えるのではないでしょうか」
そう話す磯村だが、今回スーツをオーダーするために訪れたポール・スミス銀座店は、ショップの雰囲気も、並んでいるアイテムもすぐに気に入った様子。
「まず、お店の外観が印象的でした。外壁のブルーとグリーンが独特です。とにかくこの色が綺麗。店内に入ると、ところどころに絵画が飾られ、展示の仕方もまるで美術館のようで。モダンでとてもかわいいインテリアだと思いました」
1階はシーズンごとのフォーカスアイテムを中心にした品揃えで、2階がPS ポール・スミスをはじめとするカジュアルアイテムを揃えたフロア。磯村がスーツをオーダーしたのは、地下1階。「メイド トゥー メジャー(Made to Measure)」のコーナーが常設されているフロアだ。
「スーツをつくる場所って、かしこまった“大人な”イメージがあります。ポール・スミス銀座店の地下1階は上品さが感じられる一方で、カラフルなアイテムも並んでいてポップで、とても入りやすい感じがしました。スーツをつくることをあまり難しく考えなくていいですね」
このメイド トゥー メジャーは、定評あるポール・スミスのスーツに、ゲストそれぞれのスタイルに合わせたパーソナリティを加えることができるサービス。採寸と同時に好みの生地やボタン、裏地などを選び、完成後のフィッティングまでゆったりとした空間で味わえ、英国ブランドらしいオーダー体験を楽しめる。
ポール・スミスのメイド トゥー メジャーでは、異なる6つのシルエットが用意されている。なかでも細身の「KENSINGTON(ケンジントン)」やベーシックな「SOHO(ソーホー)」、そして長めの着丈でゆったりしたシルエットの「NEW FIT(ニューフィット)」が人気のモデルだ。オーダーする際は、ベースとなるモデルを選び、サイズサンプルを着用し、それを採寸。その後に素材やボタン、裏地などのディテールを選ぶというプロセスを踏む。襟の裏側の色まで選択できるのは、ポール・スミスならでは。素材もフランスや英国、イタリアの良質な生地を100種類以上取り揃えている。裏地(ライニング)もポール・スミスらしいプリント柄が用意され、銀座店限定の柄もあるという。
「スーツをつくるからにはやはり、自分に合うスーツ、極力フィットするものをつくるべきだと思うので、ボディの部分をできるだけ絞りたいとか、かなり注文をつけさせてもらいました(笑)」と、磯村。
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ストレスのまったくない着心地に惚れ惚れする
今回、磯村が選んだベースのモデルは「SOHO」。ポール・スミスのスーツの中では最もベーシックなレギュラーフィットで、ナチュラルショルダーのシングルブレストのデザイン。フロントボタンの数もふたつときわめてオーソドックス。しかしラペルをナロータイプに、ポケットもフラップなしの玉縁タイプにして、全体をすっきりとモダンに見えるように仕上げた。
「実は僕、いかり肩なんです。だから既製だとなかなか合うスーツが見つからない。出来上がったスーツを着てみると、本当にフィットしていますし、着心地もいい。個性的な体形の場合は、絶対にオーダーでスーツをつくるべきだと実感しました」
磯村が選んだ生地は、服地の最高峰と称されるイタリア・ゼニア社製の「トロフェオ」だ。同社が毎年オーストラリアで行う品評会で優勝トロフィーを勝ち取った原毛の中から16ミクロン級という超極細繊維だけを集め、それを原料につくられた極上の生地。トロフェオという名前は英語のトロフィーに由来している。
「本当に肌触りがいいですし、光沢感もある。着た時に身体に馴染んでいく感じがします。フィットしているので軽くて、ストレスもない。大袈裟に言うと、着ている感じがまったくないですね。それくらい素晴らしい生地だと思います」
ブルーにストライプが入ったイタリアらしいゼニア社製の生地は、着る人に洗練された印象をもたらしてくれる。こうした極上生地を選べるのも、スーツをオーダーする醍醐味に違いない。
「今回のオーダーでは、ラペルなどに入れるステッチをグレーに変えたのがいちばんのこだわりかもしれません。ノーマルに仕立てるのもいいとは思いますが、既製のスーツと違う色をポイントに入れたい、“遊び心”が欲しいと思いました。そこで、袖ボタンのステッチも1カ所だけグレーにしたのです。さらに裏地も銀座店オリジナルの絵柄のものを選びました。上着から裏地がチラッと見えた時、『あっ、柄が入っている』と思われたら、なんだか楽しいでしょう。ポール・スミスというブランドらしく、“遊び心”はオーダースーツの場合でも大事だと思います」
出来上がったスーツでいちばん印象的なのは、磯村が指定したグレーのステッチ。「AMFステッチ」と呼ばれるもので、手縫い風のステッチが襟の縁やポケット、パンツのポケットの縁にまで入り、このステッチがスーツの印象を決定づけるアクセントになっている。
「生地も、ボタンも、裏地も、すべて自分の好きなようにやらせてもらいました。この裏地は最初、自分としてはけっこう攻めているなという印象でしたが、スタッフの方にアドバイスいただき、思い切って選びました。仕上がりを見たら、生地の雰囲気、スーツのデザインともマッチしていて、やはりこの裏地にしてよかったです。完璧に自分好みのスーツが出来上がったと思います」
スーツをオーダーする時、生地やパーツから完成形を想像するのはファッションのプロでも容易ではない。しかし磯村の言葉からは、満足いくスーツが出来上がったことが感じられる。
「僕にとって今回は人生で初めてのオーダースーツでした。スーツにはあまり詳しくないので、いろいろとショップの方にアドバイスしていただいて、ひとつの作品を一緒につくるようにていねいにオーダーしていくのは、本当に満足のいく時間でした」
英国では服や靴をオーダーでつくることを「ビスポーク(bespoke)」という。これは「be spoken」の略で、顧客とスーツを仕立てるテーラーが話をしながら注文を受け、顧客が要望するスーツを生み出していくことから来ている。今回、磯村勇斗がオーダーして出来上がったスーツは、まさに「ビスポークスーツ」と言えるものではないだろうか。
ポール・スミス 銀座店
住所:東京都中央区銀座4-3-10 銀座中央ビル B1-2F
TEL:03-3564-5566
営業時間:11時〜20時
定休日:水曜不定休
www.paulsmith.co.jp
※営業日時・内容などは変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。