ハンク・ジョーンズやジミー・コブなど数々のジャズ・レジェンドに愛され、ロイ・ハーグローヴ・クインテットで日本人初、最後のレギュラー・メンバーだったニューヨーク在住の実力派ピアニスト、海野雅威。彼が3月2日にニュー・アルバム『Get My Mojo Back』をリリースする。
海野は、2020年9月に新型コロナウイルス蔓延によるアジア人ヘイトクライムの犠牲となり、ニューヨークの地下鉄構内で集団暴行に遇い、ピアニストにとって致命的と言える右肩骨折などの重傷に見舞われた。その事実はCBSや日本のニュース番組でも取り上げられ、直後に友人ミュージシャンが立ち上げたクラウドファンディングですぐに多額の寄付金が集まった。その後、不屈の精神と懸命なリハビリで再起。その道のりは21年11月放送のNHKスペシャル「この素晴らしき世界~分断と闘ったジャズの聖地~」でも紹介され、多くの反響が寄せられた。
支えてくれたミュージシャン仲間と21年の7月と9月にニューヨークでレコーディングしたのが待望の復帰作である本アルバムだ。収録曲はすべて海野のオリジナル曲で、大半が療養中のピアノを弾くことができなかった時期に書き下ろしたという。アルバム・カバーの絵画と題字は、NY在住の画家Akané Oguraが手がけている。
先行リリースされた「シークエル・トゥ・ザット・オールド・ストーリー」は、ミドルテンポのチャーミングなメロディーのナンバーで、海野はピアノだけでなく、ジャズでは珍しいチェレスタも弾いている。この楽曲について海野は、「レコーディング前日の晩、高揚する気持ちからか突然メロディーとハーモニーが聞こえ、めずらしくほんの数分で自然と仕上がった新曲。チェレスタは当日に使うことを思いつき、幸運にも何台かスタジオに置いてあったので使用した。チェレスタとホーンのコール・アンド・レスポンスはあまりないと思う。懐かしい教会でのシーンを連想したので、懐かしいお話の続きというタイトルにした」とコメントしている。
アルバムは、海野が活動拠点を置くアメリカでも、ジャズの名門ヴァーヴ・レーベルから配信リリースが決定。世界中に衝撃を与えた大ケガからの奇跡の復活作。まさに生命力と歓びに満ちた仕上がりになっている。
連載記事
『Get My Mojo Back』
海野雅威 UCCJ-2204 Verve/ユニバーサルミュージック ¥3,300(税込) 3月2日発売https://Tadataka-Unno.lnk.to/GetMyMojoBackPR