スチールの厚板ブロックを鋭角にカットしたようなシャープなケースに、12時間を意味する12面ファセットをサイドに備えた丸型ベゼル。ゼニスの2022年新作「デファイ スカイライン」は、見るからに堅牢な10気圧防水のスポーティなフォルムもさることながら、十字型の星がタテヨコに整然と並ぶダイヤルと、その9時位置に配されたスモールセコンドに際立った特徴がある。秒針は1分つまり60秒で1周するのが普通だが、この新作はなんと10秒で1周する。このためサブダイヤル上部には見慣れない「10」の目盛り。これまでに例のない高速スモールセコンドを搭載しているのである。
「デファイ」は1902年に製作された頑丈で精確な懐中時計をルーツとして、半世紀以上を経た1969年に誕生した3針の腕時計が、その名称と理念を継承した。奇しくも同年に世界初のハイビート自動巻きクロノグラフ・ムーブメント「エル・プリメロ」が発表されたことから、いささか影が薄くなったが、2000年代にアバンギャルドなスタイルのクロノグラフとして劇的に復活。2017年から革新的なムーブメントを搭載した先進的なコレクションとしてラインナップが刷新されたほか、3針モデルやレディスも登場している。「デファイ スカイライン」がこれらと一線を画すのは、最新の「エル・プリメロ3600」をスモールセコンドの3針として搭載しているからだ。
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エッジィでソリッドなフォルムにハイビートムーブメント
ケースやダイヤルのデザインは、後で紹介する「デファイ」のオリジナルに比べてコンテンポラリーにブラッシュアップされているが、エッジィでソリッドなイメージに変わりはない。ただし、前述したようにサンバーストのダイヤルに散りばめられた十字型の星が個性的であり、それがスモールセコンドのプレーンなサブダイヤルを逆に目立つ存在にしている。これを駆動するムーブメントは「エル・プリメロ3620」。ゼニスは2019年に「エル・プリメロ」誕生50周年を記念して「エル・プリメロ3600」を新開発しており、従来の4番車でなく、脱進機からダイレクトに動力を伝達することでクロノ秒針が10秒でダイヤルを1周する機構が特徴的だった。これをスモールセコンドの3針に改変したのが「エル・プリメロ3620」であり、約60時間のパワーリザーブと秒針停止機能も継承している。
このように「デファイ スカイライン」は、3針で始まったルーツと「エル・プリメロ」が53年の時を経て現代的に融合したといえるだろう。ルックスはいわゆる“ラグスポ”でも、9時位置のサブダイヤルを疾走する高速スモールセコンドの動きに圧倒される。毎時3万6000振動の迫力が視認できるだけでなく、高速回転する独楽が倒れにくいように、揺動に強いというメリットも見逃せない。
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アワーマーカーが印象的な完全復刻モデルもリリース
ゼニスでは「デファイ」のオリジナルモデルを完全復刻した「デファイ リバイバル A3642」も250本限定でリリース。ダイナミックにカットされた8角形のケースと14面のファセットが施されたベゼルなど、外観のほとんどが忠実に再現されている。ダイヤルは中央から外側に向けて濃くなるブラウンのグラデーション。三重の溝が同心円になるように彫り込まれたアワーマーカーが印象的だ。ムーブメントは薄型自動巻きとして定評の高い「エリート670」を搭載している。
ちなみに「デファイ」とは「挑戦」を意味する。「デファイ スカイライン」は伝説的な「エル・プリメロ」に新しい魅力をもたらす3針スタイルであり、「デファイ リバイバル A3642」は過去の傑作に敬意を込めた再挑戦といえるだろう。どちらも独創的な個性を備えており、その物語を深く知れば知るほど、腕に巻く醍醐味も増すのではないだろうか。
問い合わせ先/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL:03-3575-5861
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