長らく乾杯酒の座を、ビールやシャンパーニュなどに譲っていた日本酒。しかし、昨今は乾杯で飲みたい“泡の日本酒”が増えている。かつて発泡性の日本酒といえば、炭酸を加えてアルコール度数を抑えた、酒の弱い人向けのものが多かったが、その事象に変化が。シャンパーニュの製法にならい、瓶内二次発酵方式で天然の泡をもたせた、本格的なスパークリング酒が台頭してきているのだ。
東京産の原料を使い瓶内二次発酵、新酒と古酒とをアッサンブラージュ
まず注目したいのは、「心」。一般社団法人「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会」、通称「SAKE女の会」と、東京で創業400年以上の歴史を誇り「金婚」などを手がける豊島屋酒造とが共同開発した高級スパークリングだ。東京産の米「キヌヒカリ」と江戸酵母を使ったこの酒は、きめ細かい泡と瑞々しい酸味が特徴。乾杯だけではなく、前菜からデザートまでさまざまな料理とともに飲みたくなる懐の深い一本だ。
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細やかで優美な甘みと酸味の競演、透明感ある熟成味に酔いしれる
3年以上かけじっくり熟成させた「天山 スパークリング グランキュヴェ」は、きれいに年を重ねた容姿端麗タイプ。ドライなタッチで、クリスタルガラスのような透明感が美しい。繊細な酸味と甘みとのコントラストも魅力である。
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シュワシュワな泡に気分もアガる、デイリーに飲める“米のシャンパーニュ”
気軽なご褒美で飲むなら「獺祭純米大吟醸 スパークリング45」が筆者のイチ押し。シュワッと泡感が強く、米の甘みが豊かで後口はスッキリ。見事なバランスだ。
どの酒も飲めば気持ちが華やぐ。スパークリング日本酒に舌鼓を打ちつつ春の訪れを待とう。
今月の選酒人●山内聖子
呑む文筆家・唎酒師。日本酒歴は18年以上。日々吞んで全国の酒蔵や酒場を取材し、雑誌『dancyu』や『散歩の達人』など数々の媒体で執筆。著書に『蔵を継ぐ』(双葉文庫)、『いつも、日本酒のことばかり。』(イースト・プレス)。
※この記事はPen 2022年3月号より再編集した記事です。