【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第144回 アメリカン・ラグジュアリーSUVの大本命は、 解像度にこだわりハイエンド空間を創造する

  • 写真&文:青木雄介
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前方は熱感応式赤外線センサーを 備えたナイトビジョンが搭載され、 死角の認識はもちろん夜間走行の安 全性を向上させている。

アメリカン・ラグジュアリーのド本命、フルサイズSUV「キャデラック・エスカレード」がモデルチェンジを行った。“スーパーサイズ”と呼びたい、エスカレード史上最大のサイズに進化。内外装は刷新され、前回のモデルチェンジからわずか5年という早いサイクルを考えると、北米市場におけるフルサイズSUVというジャンルの人気の高さがうかがえる。

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先代より全長が約200mm伸びて歴代最大サイズになった新型エスカレード。 

今回、5代目となるエスカレードの変貌ぶりは、歴代のモデルチェンジと比べても最大級の振れ幅だ。間違いなくエスカレード史上最高の傑作といえるはず。その理由のひとつは、コラムシフトを採用していた先代の懐古趣味を断ち切って、来るEV時代を意識したフルサイズSUVの理想像が見え隠れする点。走りの静けさはモーター走行の未来を想像させつつも、搭載される6・2リットルのV8自然吸気エンジンが巨体にふさわしいパワーを惜しみなく供給する。

モデルチェンジによって、センチメンタルなOHVエンジンの悪い面が払拭され、静かで力強くよく回るV8エンジンへとイメージチェンジ。同時に、路面をセンサーで読み取り、エアサスダンパーの減衰率と車高を変えるマグネティックライドコントロールも進化した。乗り心地はより上質になり、カーブではロールを抑え、気持ちいいクルージングレンジがより高い速度域へと変化した。

業界最高峰とも呼びたい、高い視座から生まれる超然とした乗り味もまた歴代最高のもの。湾曲した合計38インチの大型有機ディスプレイは高輝度・高精細で表現力が素晴らしく、キャデラックらしい陽性のラグジュアリーにハイエンドという、ひと味を足している。

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シートヒーターとベンチレーションを組み合せ、センターコンソールの下には冷凍も可能な冷蔵庫を備えている。

クライマックスは36個ものスピーカーから構成されるAKG製のサウンドシステムの搭載。AKGとは、レコーディングスタジオのマイクやヘッドフォンをプロデュースし製造する欧州の音響機器ブランド。ダッシュボードやセンタートンネル、天井、さらにはヘッドレストに至るまで究極の音響空間とすべく、ハイエンドスピーカーが配置されている。

そんな運転席で聴く音楽の解像度は、ほとんどレコーディングスタジオレベルだと断言したい。28のチャンネルに分けられた音楽はFMから流れてくるポップスでさえ、とてつもない情報量で聴く者を圧倒してくる。

ハイエンドオーディオで聴く音楽って、モノクロ写真を高度なAIによってカラー化した写真に似ているのね。隠されていた色がこれまで聴きとれなかった音。それがエスカレードのサウンドシステムによって、アーティストの意図した本当の音を明らかにする。

解像度を上げられた音は、運転席を取り巻くように立体的に構築される。その音像は室内空間を感じさせない大ホールのようなダイナミックさ。お気に入りの音楽を聴きまくることで、渋滞が歓びにしか感じられなかったよね(笑)。

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3枚のパネルからなるインフォメーションディスプレイは、自動車用としては最高の輝度と解像度を誇る。

クルマの存在感としては、いよいよ浮世離れしてきた感もあるけど、大型化による弱点を自動運転などの技術で補完していくのがキャデラックのロードマップ。でもハンドルを握る喜びも含めた体験価値の追求に、デカさだけじゃない、フラッグシップモデルの矜持を感じたんだ。

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全長の拡大により、課題だった3列目の居住性や荷室スペースが大きく改善されている。

キャデラック・エスカレード プラチナム

サイズ(全長×全幅×全高):5400×2065×1930mm
排気量:6156㏄
エンジン:V型8気筒OHV
最高出力:416PS/5800rpm
駆動方式:4WD
車両価格:¥15,500,000

ゼネラルモーターズジャパン
TEL:0120-711-276
www.cadillacjapan.com

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※この記事はPen 2022年3月号「メトロポリタン美術館のすべて」特集より再編集した記事です。