まるで『ウォーリーをさがせ!』 メトロポリタン美術館のキッズマップがすごい!

  • 編集&文:宮崎香菜
  • コーディネート:鈴木希実
  • 図・イラスト:メトロポリタン美術館提供
Share:

ニューヨークのメトロポリタン美術館(通称:MET)がオンライン上で提供する、キッズ向けマップをご存じだろうか?

膨大な展示品が描かれたメット特製のマップを活用すれば、バーチャルでメトロポリタン美術館を訪問することができる。『ウォーリーをさがせ!』のように緻密に館内が描かれたマップは、アートを楽しく学べるだけでなく、宝探しをするかのような未知の作品との出合いが待っている!

TKS-26.jpg
全体マップ

ユーモラスなコメントで彩る、MET探検

子どもたちに膨大なコレクションとの出合いや発見、学びの機会を提供しようと、メットの公式サイトで公開されているのが「#MetKids マップ」。大人にも支持されている人気コンテンツだ。

ところ狭しと描かれたイラストには、コレクションエリアや展示作品を示すピンがあちこちに打たれている。クリックするとウインドウが開き「誰がつくった?」「なにでできている?」など基本の情報に加えて、作品の裏話を教えてくれることも。

たとえばフェルメールの『水差しを持つ女』なら、「彼と奥さんには11人の子どもがいた。どうりで仕事が遅いわけだ。時には1枚の絵を描くのに3カ月かかることもあったんだ」というユーモラスなコメントが。子どもたちが作品を身近に感じ、アートとつながるきっかけとなることを狙う。

マップを担当するデジタル部門プロデューサー&エディターのベンジャミン・コーマンはこう話す。

「大人にとっても、この緻密なマップの中に知っている作品を見つける楽しみがあるでしょう。クリエイティブな遊びを通して、子どもも大人も一緒にアートを楽しく学んでほしいですね」

---fadeinPager---

キッズマップの楽しみ方

1. イラストを見て気になる作品を探す

DMA-3.jpg

17のコレクションエリアと、館内にちらばる重要な作品のイラスト上に、200以上のピンが置かれている。ピンにカーソルを合わせるとウインドウが立ち上がり、作品と作家の情報が表示される。

2. クリックして作品を深堀りしよう

DMA-4.jpg

さらに画像をクリックすると、年代、素材、制作された場所などの詳細情報と、館内のどのエリアで作品を観られるかが、ひと目でわかる。鑑賞ポイントや解説動画などもここから観ることができる。作品によっては、その作品に関連したキッズ向けの工作動画など、家でも楽しめる様々な発見が隠されている。

#MetKids マップ

www.metmuseum.org/art/online-features/metkids/explore

---fadeinPager---

5つのエリアをズームアップしてご紹介

エントランス

TKS-25.jpg

世界中から訪れる入館者を、厳かなファサードがお出迎え

映画やドラマのロケ地となることも多い正面階段は、ニューヨーカー憩いの場。エントランスを抜けたグレートホールには、記念撮影をする入館者やインフォメーションデスクで働くスタッフの姿が描かれている。

マップを手がけたのは、イラストレーターのジョン・カーシュバウム。原画は2007年に制作され、館内で手に入るプリント版は長年、メットファンの人気アイテム。あらゆる世代から好評を得ている。

エジプト美術

1特_キッズマップ_宮崎_G2校-B.jpg

①『デンドゥール神殿』

②『書記官ホルエムヘブ』

③『ヘネタワイの棺』

古代神殿をまるごと展示

METの目玉のひとつである『デンドゥール神殿』は、紀元前10年頃に建てられたもの。ダム開発でナイル川に水没する運命だったが、遺跡保護活動に対する感謝の印として、エジプト政府からアメリカ政府へ贈られた。

紀元前1300年頃の像『書記官ホルエムヘブ』はパピルスを携え、当時既に読み書きをしていたことがわかる。神の儀式の歌い手が納められた『ヘネタワイの棺』は紀元前1000年頃のもの。鮮やかな装飾は必見だ。

アメリカン・ウイング

1特_キッズマップ_宮崎_G2校-C.jpg

④フランク・ロイド・ライト『フランシス・W・リトル邸の居間 ミネソタ州ウェイザタ』

⑤ジョン・シンガー・サージェント『マダムX(ピエール・ゴートロー夫人)』

植民地時代から20世紀まで。アメリカの歴史を体感する

三つ目にご紹介するのが、20世紀初頭までのアメリカ美術と家具やオブジェの展示エリア。近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトによる居間と家具、アメリカの生んだ最も有名な絵画のひとつ『マダムX』などを、ここで観ることができる。

マップ中央に描かれたガラス張りの天井から陽光が差し込む「チャールズ・エンゲルハード・コート」には、彫像やティファニーのステンドグラスがある。

アジア美術

1特_キッズマップ_宮崎_G2校-D.jpg

⑥イサム・ノグチ『ウォーター・ストーン』

⑦『不動明王(アチャラナータ)』

仏像から絵巻や浮世絵まで、異国の地で出合う日本美術

アジア美術エリアには中国、日本、韓国、南アジア、東南アジアなど広範な地域の作品が揃う。日本美術は、平安時代の木彫像『不動明王』など仏教美術から歌麿、若冲など浮世絵や日本画までが並ぶ。

日本人の父とアメリカ人の母親のもとに生まれた彫刻家イサム・ノグチの『ウォーター・ストーン』も、このエリアにある。中国蘇州の庭園をイメージした中庭も人気だ。

近現代美術・写真

1特_キッズマップ_宮崎_G2校-E.jpg

⑧ジャクソン・ポロック『秋のリズム(ナンバー30)』

⑨アンリ・マティス『ジャズ:VIII. イカルス(『ジャズ』より)』

⑩アルフレッド・スティーグリッツ『ジョージア・オキーフ』

モダンアートの名作もズラリ、新しい表現を追求した作家たち

近現代美術エリアには、ピカソ、バルテュス、ミロなどモダンアートの巨匠たちの作品から、抽象表現主義を代表するジャクソン・ポロックなど、20世紀アメリカを代表するアートまでが一堂に会する。

マティス晩年の切り絵作品『ジャズ』は素描・版画・彩飾写本コレクションのひとつだ。ちなみに、メットの充実した写真コレクションは、近代写真の父と称される写真家、アルフレッド・スティーグリッツが自作を寄贈したことから始まった。

※この記事はPen 2022年3月号「メトロポリタン美術館のすべて」特集より再編集した記事です。