『SOUND TRACK』を開く。
文字を目で追う。
どこからか光石さんの声が聞こえてくる。
そう、お馴染みのあの声です(そう、とっても心地良い、あの声です)。
そこからはもうこの本、ぼくにとっては全体が脚本のように見えてきたし、それぞれの言葉はまるでセリフ(あるいはモノローグ)でした。
『東京古着日和』の監督&脚本を担う身としてはやはり、どうしてもこの本の映像化、という文字が脳裏をよぎります。
たとえば“「FASHION」一生付き合っていくモノたち”の章に、「ダッフルコート」と銘打たれたページがあります。
そこには「紺のダッフルにブラックウォッチ柄のマフラーが大好きなんです」と書かれた一文があったり、まさしくそのいでたちで佇む光石さんの写真がそえられていたりします。
そこから光石さんの文章は小学校時代の追憶とか郷愁とか、そんな衣をまとってふわりと着地します。
短い文章のなかに光石さんをじんわり感じとることができます。
で、やはり思うわけです。ああ、このへんを映像にしてみたい、と。
仮に、仮にですよ、シナリオにしてみるとこんな感じでしょうか。
001 玄関・朝
玄関でネイビーのダッフルコート<グ
ローバーオール>をはおる、光石研。
トグルの手触りをたしかめるように、
ゆっくりと麻ひもに留めていく。
光石(M) 「おふくろが好きだったなあ、この柄」
ブラックウォッチのマフラーを首に
巻く。
光石(M) 「小学校のころ、こういう格好をよくさせられてた」
玄関のドアを開ける。
ほどよく着込んだネイビーのダッフル
コートは、朝の光を浴びて少し赤らん
で見える。
袖のあたりをそっとなでる、光石研。
光石(M) 「お、茄子紺になってきたかな」
一度、玄関を出るものの戻ってきて
光石 「行ってきまーす」
※(M) はモノローグ
と、まあ『東京古着日和』的にはこんな感じになるわけですが、本のどこをひらいても映像にしたくなる、つまりは画がぱっと思い浮かぶ文が、そこかしこに潜んでいます。
子供時代の光石さんや俳優業をはじめたばかりの頃の光石さんもいれば、愛車を運転中の光石さんも、そこにはいます。
しつこいようですが、本を開けばそこに光石さんがすっと立っているんです。
光石 研✕菊池亜希子 トークセッションを開催
書籍の刊行を記念して、著者の光石 研と書籍内でも対談している菊池亜希子のトークセッションを開催する。執筆や撮影の舞台裏、書籍の中身についてをトーク予定だ。
※オフライン参加は定員に達したため終了。オンライン視聴のみ参加可能。
■開催日時:2022年2月4日(金) 19:00〜20:00
■出演者:光石 研、菊池亜希子
■場所:代官山蔦屋書店 3号館2階シェアラウンジ
※予約方法や詳細については書店公式ホームページをご確認ください。
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/video/24366-1719030113.html