高感度なファッションクリエイターたちが近ごろよく口にする、“いまやりたいデザイン”が2つある。ひとつは、「全身ダボダボからの脱却」。ゆったりサイズ自体はまだ人気でも、シルエットにメリハリをつけて緊張感を出す着こなしが次なる変化だ。
そしてもう一つは、「色を取り入れる」こと。これは世界的な傾向で、鮮やかな色が気になるのはパンデミックの息苦しさの反動だろう。日本の都会では黒・ネイビー・グレー・アースカラーのストイックな服装の人気が長く続いてきた。いまこそ心が解放されるリゾート地の装いを日々の暮らしに取り入れたい。
とはいえ全身を華やかにするのは難易度が高いもの。大人はプラスワンでカラフルアイテムを付け足そう。選ぶ基準となるテイストは“レトロ”、または“70年代”。ヒッピーとリンクする時代に新鮮味がある。ヒッピーたちは西洋文化への反発から民族的でリラックスした服を好んだ。平和を求める古き良き時代のエッセンスが、世相が不安ないまの時代にもフィットする。懐かしいアイテムなら、大人も抵抗なくワードローブに取り入れやすいはず。わざと野暮ったくしたり、ユーモアを忘れず楽しく着こなすのが成功のコツだ。
70年代スポーツ気分で
芝生のようなパイル地のブルゾンと、ポップなキャンバススニーカー、さらなる決め手はティアドロップのゴールドメガネ。スタイリングのイメージは、「ブルジョアのテニス旅行」。どれか1点だけでもワードローブに取り入れると、気分が明るくなれる。空気が重い冬から抜け出た春には、暖かな日差しを服装で表現したい。
レトロカラフルはトラッド調の服装と組み合わせると着こなしやすいようだ。現代的なモノトーンのハイテクスポーツウエアとミックスするのはやや難しいので、その点はぜひご留意を。
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ユーモアと洗練の狭間
フェイクミュージックテープで胸を飾ったプリントTシャツは、音楽好きなジャン・トゥイトゥが率いるフランスのA.P.C.のもの。「SONY」でなく「NYNY」だし、おふざけ感が絶妙だ。ユーモアを優れたグラフィックに仕上げるのがA.P.C.のセンスである。
スニーカーは、東京の大人シーンの中軸にいるグラフペーパーが、ミリタリーシューズを再解釈するリプロダクション オブ ファウンドに別注した最新モデル。イギリス人画家デイヴィッド・ホックニーの1960〜70年代の作品をイメージした色が採用されている。定番のジャーマントレーナーがまったく新しい表情に生まれ変わった。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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