爽快なキレと苦みのあるもの、柑橘を思わせる華やかな香りのもの、ダークチョコレートのような風味豊かなもの……。ビールとひと口にいっても多様だが、今回は新年の始まりにゆっくりじっくり味わいたいビールを紹介しよう。
「幸福を祈る」ビールは、節目節目の祝いにもぴったり
まずは、ベルギーの「ボン ヴー」。ラベルに“AVEC LES Bons Voeux DE LA BRASSERIE DUPONT(デュポン醸造所より幸福を祈って)”と書かれた、新年の祝いの気持ちを込めた一本だ。しっかりした甘みとホップの苦み、それを支える酸味のバランスが絶妙。もとは季節限定品だったが、好評を受けて定番となったのも頷ける。
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ジビエの旨味を引き立てる、野生酵母による樽熟成
ワイン感覚で料理と楽しめるのが、スイスのサワービール「アベッデュ センボンシェン」。 微炭酸による穏やかな刺激とともに、マイルドな酸味とやわらかな甘みとが口の中にじんわりと広がっていく。鴨肉や鹿肉など、野性味のある肉料理との相性が特にいい。
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ベルギー生まれの小麦ビールに、日本固有の柑橘が華を添える
「フィルハーモニー」は、日本固有の柑橘「大和橘やまとたちばな」を使ったホワイトエール。ふくよかな甘みの中に感じる柑橘の酸味が心地よく、コリアンダーシードとレモングラスの香りが爽やかさを添えてくれる。ぶり大根を合わせれば旨味とコクを引き立てるし、さっぱりした塩味ベースの鶏鍋にも優しく寄り添ってくれる味わいだ。
季節の移ろいや料理にどんなビールを合わせようか思いを巡らせていると、自然と顔がほころんでしまう。ビールは飲む前から人を幸せにする酒なのだ。
今月の選酒人●野田幾子
ビアジャーナリスト。雑誌『ビール王国』に寄稿する他、ビール講座やイベントを多数開催。ビールと料理のペアリングの楽しさを広めている。著・監修書に『ビールのペアリングがよくわかる本』や『恋するクラフトビール』など。
※この記事はPen 2022年2月号「日本の建築、ここが凄い!」特集より再編集した記事です。