日本国内の映画ファンにとっては、「ようやく……」といった感覚だろう。本国公開から約3週間。ついに明日から『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が劇場公開を迎える。Pen Onlineでは、映画史に残る加熱ぶりを見せをる本作を、「ネタバレなし」と「ネタバレあり」の2回に分けて紹介。第1回目となる今回は、ネタバレなしで本作の概要をおさらいする。
まずは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の立ち位置について。本作はトム・ホランドが主演を務める「ホーム」シリーズの3作目であり、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のスパイダーマン関連作でいうと6作目。列記すると
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
『スパイダーマン:ホームカミング』
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
となる。MCU×スパイダーマンの最新作であるというだけでも期待は高まるが、今回はいままでとはレベルが違う。1月4日時点での世界興行収入は13億ドルを突破。全米公開から3週間弱で、なんと全世界の歴代興行ランキングで12位に入っているのだ。コロナ禍に入って以降、最大のヒット作であり、MCUの単独ヒーロー映画としても『ブラックパンサー』を抜き、トップに躍り出た。内容も絶賛を浴びており、辛口で知られる世界最大級の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では94%の超高得点を記録。批評家と観客の双方に支持されており、「アカデミー賞にふさわしい!」との声もあるくらいだ。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、なぜここまでのフィーバーを起こしているのか? コンテンツ自体の人気はもちろんだが、大きいのは本作が「マルチバース(多元宇宙)」を本格導入した作品であり、MCU以前の『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』のキャラクターが登場する“夢の企画”であるから。トビー・マグワイア主演「スパイダーマン」シリーズ3作、アンドリュー・ガーフィールド主演「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ2作とまさかのコラボレーションを果たすのだ。
ちなみに、トビー・マグワイアの『スパイダーマン』第1作が世に出たのは2002年。約20年をかけて実現したビッグプロジェクト(しかも多くの人々が予想していなかった)だけに、文字通り世界中が沸いている。
---fadeinPager---
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のあらすじ
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の物語は、前作の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の直後からスタート。敵の仕掛けた罠によって、全世界に正体が知られてしまったスパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)。通っている高校や住居にもマスコミや野次馬が押し寄せ、彼の生活は滅茶苦茶に……。恋人のMJ(ゼンデイヤ)や親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)にも被害は拡大し、各々の大学進学にも暗雲が立ち込めてしまう。
困り果てたピーターは、魔術師ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に相談し、“忘却の呪文”をかけてもらうのだが、アクシデントが発生。別の宇宙(ユニバース)からスパイダーマンの正体がピーター・パーカーだと知っている敵が引き寄せられてしまうのだった……。
その結果、ピーターはグリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)やドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)、エレクトロ(ジェイミー・フォックス)といった別宇宙の敵と戦わなければならなくなる。つまり「スパイダーマン」「アメイジング・スパイダーマン」シリーズの世界とつながるストーリーであり、夢の対決が実現。しかもオリジナルキャストが再結集するという大サービス。ファンにとって、これほど燃える展開もないのではないか。
現状、伝えられる情報はここまで。上記に挙げたようにサプライズが満載の作品のため、ネタバレなしで見どころを挙げるのが難しく心苦しいのだが、ここから先は劇場に足を運んでご自身の目で確かめていただきたい。ただひとつ挙げるとするなら、可能な範囲で関連作品を復習しておくと、前のめりで楽しめることだろう。『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』、そして「ホーム」シリーズ……。「すべての運命が集結する」のキャッチコピーの通り、一瞬だけ映り込むアイテムや細かなセリフに至るまで、ファンならニヤリとする遊びが無数に張り巡らされている。
同時に、1本の映画としての“強度”もすさまじいのが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の恐るべきところ。個人を特定され、プライバシーを剝奪された少年が、ヒーローとしてどう生きていくのか――。「責任と成長」をテーマにしたエモーショナルなストーリーが展開。涙腺が相当刺激されるため、ハンカチ(人によってはバスタオル)を持参すると安心だ。
コアファンはもちろんのこと、ライトファンにも訴えかける二段構えの本作が、国内でも大いに話題を集めることは必至。なお、今年は『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』『ゴーストバスターズ/アフターライフ』『THE BATMAN ザ・バットマン』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』『トップガン マーヴェリック』『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『ジュラシック・ワールド ドミニオン(原題)』といった洋画大作が目白押し。コロナ禍で打撃を受けた洋画市場が復興するメモリアル・イヤーになるのではないか。そのトップバッターをぜひ、劇場で体感いただきたい。
次回は、公開後に折を見て「ネタバレあり」で作品の魅力に迫る。こちらも楽しみにしていただければ幸いだ。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
監督/ジョン・ワッツ
出演/トム・ホランド、ゼンデイヤほか 2021年 アメリカ映画
2時間28分 1月7日より全国の劇場にて公開。
https://www.spiderman-movie.jp/