「大人の名品図鑑」キングスマン編 #4
昨年12月24日に公開された『キングスマン:ファースト・エージェント』。シリーズ3作目の舞台は1914年に遡り、国家に属さないスパイ組織「キングスマン」の誕生秘話が明かされる。新作も含めたこの「キングスマン」シリーズに登場する名品を5つ紹介する。
「ネクタイはそれを締めている人よりも一歩先に部屋に入ってくる」という名言を残したのは、英国王室御用達のデザイナー、ハーディ・エイミスだ。スーツは絵画でいえば額縁的存在なのに対して、中に着用するシャツとタイ、特にネクタイは着る人の印象を左右するという意味だろう。
「キングスマン」シリーズでメンバーが着用するのがレジメンタルストライプのタイだ。1作目と2作目はもちろんのこと、3作目の『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021年)でも、スーツに白のダブルカフスのドレスシャツを着用し、ネイビーをベースにしたレジメンタルストライプのタイを襟元までしっかりと締め上げる様子が描かれている。英国紳士たるもの、結び目を緩めて人に会うことなど許されないとでも語っているかのようだ。
レジメンタルとは日本では「連隊旗縞」と訳される伝統柄。英国の軍隊において各連隊に伝わる連隊旗の縞をそのままネクタイに採用したもので、種類はタータンチェック同様に多彩だ。英国のネクタイメーカーは、あらゆる注文に応じられるよう1万5千もの柄を用意していたという話も聞く。英国においては、それを結んだ人の左肩から右下に縞目が流れるようにするのが一般的で、ハリーやオックスフォード公が締めるレジメンタルタイも同じ生地の取り方をしている。ちなみにアメリカでは逆向きが多い。老舗ブルックス ブラザーズでは縞の入り方も右下がりだ。
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時代に左右されないドレイクスのタイ
シリーズ前2作で登場したネクタイのブランドは明らかになっている。日本でも高い人気を誇る英国の高級紳士服ブランド、ドレイクスの製品だ。3作目でも同じ柄のタイが使われているので、たぶんドレイクスのものだろう。
ドレイクスは1977年、マイケル・ドレイクが設立したブランドだ。マイケルが掲げた理念は「くつろぎ感あるエレガンスを備えた、時代に左右されない商品を生み出すこと」。彼のこうしたヴィジョンはいまなおブランドに受け継がれていて、2010年よりドレイクスを率いるのは、10年以上に渡ってマイケルとともに働いてきたマイケル・ヒル。職人技へのこだわりと厳格な品質管理はもちろんのこと、独自のデザインと現代的な感覚を併せもち、高級アクセサリーブランドとして世界的な名声を得ている。
ちなみにハリー(コリン・ファース)とエグジー(タロン・エガートン)のスーツやディナージャケットの胸を飾っていたポケットチーフも、同ブランドのもの。「TVフォールド」と呼ばれる折り方で、テレビキャスターがこれを好んだことが由来だ。華美な主張をしない挿し方が清潔感を演出する。英国紳士のふさわしい挿し方ではないか。
スーツからアクセサリーまで、徹頭徹尾、英国にこだわっているのが、このシリーズの衣裳の特徴だ。1作目と2作目の衣装を担当したのは、トム・フォードの監督作『シングルマン』でも知られるマリアンヌ・フィリップス。最新作では、世界中で空前のブームを巻き起こしたドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の衣装も担当したミシェル・クラプトンが衣裳デザインを手がけた。
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問い合わせ先/ブリティッシュメイド 青山本店 TEL:03-5466-3445
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