「大人の名品図鑑」キングスマン編 #3
昨年12月24日に公開された『キングスマン:ファースト・エージェント』。シリーズ3作目の舞台は1914年に遡り、国家に属さないスパイ組織「キングスマン」の誕生秘話が明かされる。新作も含めたこの「キングスマン」シリーズに登場する名品を5つ紹介する。
ビスポークスーツ、オックスフォードシューズ、ダブルカフスのシャツとストライプのタイ、それに傘やステッキ、ライター……。「キングスマン」シリーズには英国紳士のワードローブに欠かせないアイテムが続々登場する。加えて、ちょっと粋なアクセサリーも見逃してはいけない。登場人物の指に嵌められたシグネットリングだ。
1作目の『キングスマン』(2015年)では、ハリー(コリン・ファース)がエグジー(タロン・エガートン)に対して「普通はこのリングは左手にするものだが、キングマンの場合は利き手にする」と、そのつけ方まで指南する。彼がつけたリングは5万ボルトの電流が流れ、人を感電させる武器でもある。
3作目の『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021年)は、キングスマン設立の1914年まで遡る物語だが、シグネットリングが物語の中で重要な役割を果たす。まだ未見の方のために詳しくは書かないが、予告編でもテーブルを強く叩く手の指に、潜水艦で潜望鏡を握る手に、このシグネットリングははめられている。
シグネットリングとは、紳士たちがイニシャル、家紋、属するクラブの紋章などを刻印したリングのことだ。身分の象徴であることは言うまでもないが、時には文字を逆に刻んで、手紙の封筒や文書に封蝋する際に使ったりする。14世紀の英国ではすべての公式文書にシグネットリングを使って署名することが定められていたという。だから、シグネットリングは押しやすい小指にするのが正統な着け方とされている。
『英國紳士はお洒落だ』(ポール・キアーズ著 飛鳥新社)によれば、「男の宝飾品のなかでもっとも古い歴史をもつのは、シグネットリング。これは署名に先立つ身分証明の道具であって、古代ローマ時代からすでに使われていた。シグネットリングを嵌める権利は特権階級にだけ与えられているから、富裕であることの証明でもあった」と書かれている。
これは余談だが、現在の英国王室では結婚指輪さえつけない人が多数を占めている。しかし何故かチャールズ皇太子は、結婚指輪とシグネットリングと思えるリングを重ねづけしていることが多い。
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オールハンドメイドなバニーのシグネットリング
今回紹介するシグネットリングは、ロンドンを拠点とする英国ブランドのバニーのもの。ディレクターを務めるアンドリュー・バニーが2009年に設立したブランドで、従来のジュエリーに対する考え方を超越するような遊び心あるデザインが特徴で、日本でも人気が高い。世界が誇る英国のシルバーは純度が高いことでも知られるが、そのシルバーを惜しみなく使い、伝統あるアトリエで、オールハンドメイドで製作している。
アンドリュー・バニー本人は、ラグジュアリーからストリートまで多彩なブランドと関係が深く、ドクターマーチンの再スタートのためにクリエイティブディレクターを務めたこともある人物。セントラル・セント・マーチンズやビクトリア&アルバート博物館などで講演やワークショップなどを行うなど、英国ではマルチに活動している。まさに英国ファッションの重要人物だ。そんなバニーだから、英国伝統のシグネットリングもコレクションにラインナップされている。
英国の伝統に加え、現代的なテイストを融合したシグネットリング。現代のジェントルマンが身につけるのに打ってつけのアクセサリーではないだろうか。
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問い合わせ先/スープリームス インコーポレーテッド TEL:03-3583-3151
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