ドレッシーなスーツの足元をスニーカーにするのは、いまや誰もがやる着崩しのテクニック。お堅く退屈に見えがちな男性の服装を、いかに軽快にアレンジするかが洒落者の腕の見せどころである。旬のジェンダーレス感覚も取り入れ、古典的な男っぽさから一歩抜け出たファッションを愉しみたい。
とはいえシューズの変化球は得意でも、バッグまで自在に投げ分ける人はまだ少数かもしれない。ニューノーマルで服装の自由度は増したのに、大人男性が持つバッグはベーシックなメンズ系が主流。現代のファッションの難しさは古い着こなしマナーに即して服から小物まで同一テイストで揃えると、むしろ野暮ったく見られてしまう点にある。バッグを服装のアクセントに使うのがいまの時代の流儀だ。服を着替えなくても新鮮な印象をつくれるバッグ選びに力を注ごう。
そこでいま注目される筆頭株が、一昔前なら女性的とされた小型巾着バッグ。サコッシュの流れを汲んだ日常使いアイテムである。電子化で書類を持ち歩くことが減り、大きな四角いバッグは不要になった。マチ幅がある巾着はイヤホンケースや充電器などかさばる機器の収納にも適している。さらに丸いフォルムは、冬の重い服装を軽やかに見せる演出力にも長けている。ワードローブに加えない手はないアイテムなのだ。
コーディネートは意図的にミスマッチを狙うと上手くいくようだ。上品なウールの服にスポーツ素材のバッグを組ませたり、暗い色の服には明るい色をアクセントにしたり。頭に入れておきたいキーワードは、“コントラスト”。巾着バッグ使いのベテランである女性たちのセンスを盗み、我がモノ顔で存分に使い倒そう。
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旬のエッセンス満載の、トーガ × ポーター
グリーンの色彩、シャイニーな素材感、ウエスタンモチーフのアクセサリー……。ポーターの定番「タンカー」シリーズの生地を使った巾着バッグが、日本モードの雄であるトーガの手によりスタイリッシュに生まれ変わった。クールな服のドレスダウンにも、古着スタイルの格上げにも使えて汎用性が高い。細部まで精密にデザインされ、世に数多いポーターコラボのなかでも出色の出来栄えだ。
ウエスタンベルトふうの引き手がついたサイドファスナーを開くと、横から内部にアクセスできる。背面にも内側にもポケットがあり収納性も抜群。ファッションと機能、その両方が満たされた洗練の逸品である。
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エコでお洒落!しかも値ごろなスイスのクエスチョン
クライミングやボルダリングで手にこすりつける滑り止めの粉(チョーク)を入れるチョークバッグを彷彿させるスポーティな巾着バッグ。デザイン性が高く実用性にも深く配慮されたバッグをラインアップする、スイスのクエスチョン(QWSTION)のものだ。
最大のこだわりは、SDGsの観点に基づくオリジナルの生地。本体は「BIOLIGHT」という独自開発の軽量なオーガニックコットン。ストラップはさらにユニークで、成長が早く無農薬で栽培できるバナナ由来のマニラ麻の「バナナテックス」である。これもクエスチョンの独自開発生地で、見た目も手触りもコットンキャンバスに近く、麻ならではの耐久性・耐水性にも優れる。意味のあるモノづくりが息づくこのバッグは、美しいうえに価格もリーズナブル。手に入れない理由が見当たらない優れモノだ。
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消防士のユニフォームから着想された、ビューティフルピープル
日本のビューティフルピープルはウィメンズシーンで圧倒的に知名度が高いが、クリエイティブを担っているのは男性たち。モノづくり発想もこだわり具合にも、男目線が息づく見逃せないブランドだ。
2021年末に発売された巾着バッグのルーツは、消防資材でつくられたセイフティーバッグ。夜間に反射するリフレクターテープやレスキュー用ロープといったタフなパーツで構成されている。本体素材は頑丈なコーデュラナイロンだ。これらをミックスさせつつグラフィカルに落とし込むのがビューティフルピープルのセンス。ラフな服もこれひとつで華やかになる、持っていると便利なバッグである。
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植物のプロとコラボした、ガーデニング対応のブリーフィング
ビジネスマン諸氏にもお馴染みのブリーフィングがリリースした巾着バッグは、「SOLSO(ソルソ)」とのコラボアイテム。SOLSOは、「話題の商業施設やショップ、オフィスなどのグリーンのディスプレイやランドスケープデザインを手がけ、直営店も展開する植物のプロ集団」(ブリーフィング公式サイトより)。
このバッグは鉢植えを持ち運びしやすい形状になっている。背面にはふたつのオープンポケットがあるが、本体内側には裏地もないミニマル構造だ。ただし底にはクッション材が仕込まれ、鉢が割れにくく工夫されている。男性にも人気が広がるガーデニングのスピリットが込められたバッグを日常使いして、いまの時代らしいブリーフィングの新提案を感じてはいかがだろうか。
※当記事内の服はすべて参考品。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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