2022年1月7日公開の日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』を記念して、「サンダーバード55周年シネマコンサート」が1月9日に東京オペラシティ コンサートホールで行われる。人気コーラスグループ「フォレスタ」やジャズの殿堂「ブルーノート」から特別ゲストも参加し、迫力の映像と共にサンダーバードサウンドが届けられる。往年のサンダーバードファンだけでなく、これからファンになる若い世代もその音楽の魅力に引き込まれること間違いない。
『サンダーバード』といえば、オープニングとエンディングに流れるあの勇ましいマーチを思い出す人が多いだろう。本国英国はもちろんのこと、フランスではコンコルドの初飛行時に、日本では自衛隊や吹奏楽で演奏されており、現在でも高い人気を誇っている。この主題曲をつくったのが、作曲家のバリー・グレイだ。
バリーは王立マンチェスター音楽大学(現・王立ノーザン音楽大学)の教授に音楽理論を学ぶ一方、ブラックバーン大聖堂でも音楽を学んでいる。20代で音楽出版社を皮切りにピアノ演奏や編曲などの仕事を精力的にこなし、名前が知られるようになっていった。
---fadeinPager---
朝7時に起きた時、曲が突然ひらめいた
絵本作家のロベルタ・リーは、人形劇『トゥイズルの冒険』(1957~58年)の原作者で、制作をジェリー・アンダーソンのAPフィルムズに依頼した。このとき、彼女がバリーをジェリーに引き合わせたことで、2人は運命的な出会いを果たすこととなる。
西部劇を舞台にした人形劇『魔法のけん銃』(59~60年)ではジェリーとともに原案を担当し、多才な一面を見せている。SF人形劇『スーパーカー』(60~62年)では、フランスの電子鍵盤楽器オンド・マルトノや多重録音の機材を駆使して斬新なサウンドを生み出し、『宇宙船XL-5』(62年)では電子楽器を用いて宇宙のイメージを音楽で見事に表現した。
さらに『海底大戦争』(63年)では、オープニングの各シーンの内容と秒数をもとに作曲し、後で合成するという手法がとられた。そして次作『サンダーバード』(64~66年)の主題曲がつくられるわけだが、この曲は朝7時頃に起床した時、突然ひらめいたのだという。録音にはジェリーも立ち会ったが、一度聴いただけで忘れられないほどの素晴らしい印象を受けたと語っている。
『サンダーバード』の制作と並行して、APフィルムズはパイ・レコードとの合弁事業でセンチュリー21レコードを設立し、ジェリーの作品に関係するレコードを発売、これがバリーの楽曲が定着する理由のひとつとなった。
『サンダーバード 劇場版』(66年)では70人、続く『サンダーバード6号 劇場版』(67~68年)では56人のオーケストラで録音を行い、作曲家としての手腕を存分に発揮。以後、『キャプテン・スカーレット』(67年)、『ジョー90』(67~68年)、『謎の円盤UFO』(69~70年)など、ロック寄りのアレンジを施すようになり、『スペース1999』(73~75年)の第1シーズンまでジェリーの作品を支え続けた。なお、『謎の円盤UFO』の日本放送では一部で『サンダーバード』のマーチが使われていた。
---fadeinPager---
現在でもバリーの楽曲が、支持され続ける理由。
バリーの楽曲は、オーケストラからジャズ、ポップ、ロックに至るまで幅が広く、電子音楽や流行も貪欲に取り入れている。また、「おおスザンナ」など有名な楽曲の一節を使用するといったわかりやすさや、映像との融合などを重視したつくりが特徴だ。さらに、演奏を担当したスタジオ・ミュージシャンたちは、ビートルズのアルバムに参加した者、ジャズ・バンドを渡り歩いた者など強者揃いで、楽曲の魅力を一段と引き出している。
そのため、バリーの楽曲は現在でも卓越した輝きを放っており、2008年には英国で生誕100年の記念コンサートが開催されたほどで、音源の復刻や研究も進んでいる。これを機にバリー・グレイの音楽に触れてみるのもいいだろう。
バリー・グレイ●1908年英国生まれの作曲家。人形劇『トゥイズルの冒険』(1957~58年)からSF特撮『スペース1999』(73~75年の第1シーズン)まで、長年にわたりジェリー・アンダーソン作品を音楽面から支えた。1984年没。
【コンサート概要】
日時:2022年1月9日(日) 15:00時回~/19:00時回~
会場:東京オペラシティ コンサートホール
出演:西村友 (指揮) ,東京佼成ウインドオーケストラ【ゲスト出演】松永貴志 (ピアノ / 作曲) ,【ゲスト出演】フォレスタ(コーラス)
チケット他詳細情報はこちらから
『サンダーバード完全読本。』
CCCメディアハウス ¥1,980(税込)