映画『ポプラン』の見どころとあらすじ。"カメ止め"の上田慎一郎監督が放つ、奇想天外エンターテイメント

  • 文:上村真徹
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©映画「ポプラン」製作委員会

洋画・邦画ともに注目作品の多い1月。『カメラを止めるな!』の奇才・上田慎一郎監督が放つ衝撃作にして問題作『ポプラン』の見どころやあらすじを紹介する。

【あらすじ】“イチモツ”が家出? 奇妙でシュールなドタバタ劇

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突然失ったイチモツを追う田上(左)だが、時速200kmで飛び回るため捕まえるのにも一苦労。©映画「ポプラン」製作委員会

2018年に初の劇場用長編『カメラを止めるな!』で興行収入31億円を叩き出し、映画界に旋風を巻き起こした奇才・上田慎一郎監督がまたも常識破りな作品を生み出した。10年間温め続けた構想を映画化した監督・脚本最新作『ポプラン』が1月14日から劇場公開される。

東京の上空を黒い影が高速で横切り、ワイドショーでは「東京上空に未確認生物?」という特集が放送されている──。そんなある朝、漫画配信で成功を収めた経営者の田上は、自分の“イチモツ”がなくなっていることに気づく。驚いた彼が行き着いた先は、同じようにイチモツをなくした人たちが集う「ポプランの会」という集会。説明によると、イチモツは時速200kmで飛び回り、6日以内に捕まえなければ二度と元に戻らないという。田上は、疎遠だった友人や家族の元を訪ねながら、家出したイチモツを探す旅に出る。

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【キャスト&スタッフ】“監督絶対主義”の新映画レーベルで上田監督の個性が全開

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田上だけでなく多くの人が、失ったイチモツを追いかける(写真は渡辺裕之)。©映画「ポプラン」製作委員会

上田監督にとって劇場用長編映画は、低予算映画でありながら誰も予想しないロングランヒットを記録した『カメラを止めるな!』から今回で3作目。「映画をもっと自由に」をモットーに本広克行監督、押井守監督、小中和哉監督と共に設立した映画実験レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」の1本として製作された。同レーベルの作品は基本的に企画・脚本・キャスティング・ロケーション・演出に至るまですべてのクリエイティブが監督に一任され、本作も上田監督の愛するカルト的な題材が普遍的なエンターテイメントへと昇華されている。

主人公の田上を演じるのは、第31回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門監督賞やウディネファーイースト映画祭 新人監督作品賞に輝き、一部では“第2のカメ止め”とも評された『メランコリック』の皆川暢二(同作ではプロデューサーも兼任)。主演を務めるのは同作に次いで2度目で、上田監督とは初タッグとなる。また他にも、アベラヒデノブ、徳永えり、原日出子、渡辺裕之など個性派・実力派俳優たちが集まり、奇想天外な世界観を映画として織りなしている。

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【見どころ】1つの型に収まらない、予定調和を超えた上田監督ワールド

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家出したイチモツを探す旅を通じて、田上は様々な出会いや再会を重ねていく。©映画「ポプラン」製作委員会

上田監督が本作のアイデアを思いついたのは、映画製作団体を結成して間もない約10年前のこと。当時は自分自身が「映画になる感触をつかめずにいた」ため、長い間ストックされたままになっていた。その後、自主映画活動を経て『カメラを止めるな!』など自分の好きなものを信じて作った作品で、商業的にも批評的にも広く評価されたことから、満を持しての映画化へと至った。

そんな本作のテーマを一言で表すと「家出した“イチモツ”を捕まえろ」。一見とんでもないキワモノに感じられるが、その内容はいい意味で予想を裏切るものに仕上がっている。「ポップでクール。ベタでシュール。馬鹿で知的。下品で上品。エンタメでアート。さまざまな相反する要素が溶け合い、一つになった映画を目指しました」と上田監督は語る。映画のスタイルとしても、パニック映画であり、自分探しのロードムービーであり、人間ドラマでもあるという、一言では言い表せない作品。1つ確実に言えるのは、予定調和を超えた部分に映画の醍醐味を見定める、上田監督の真骨頂を堪能できるということだ。

『ポプラン』

監督・脚本/上田慎一郎
出演/皆川暢二、アベラヒデノブ、徳永えりほか 2022年 日本映画
1時間36分 1月14日(金)テアトル新宿ほか全国の劇場にて公開

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