ミリタリー柄のボディスーツをまとったビヨンセ・クラス
発売から3年。相変わらずの人気で納車には時間がかかるといわれるGクラスのAMGモデル。表参道や骨董通りの白枠に必ず停まっている輸入車の定番にして、性別年齢を問わず愛されるクロスカントリービークルのカリスマ。臣民の寵愛を一身に受ける人気っぷりはミリタリー柄のボディスーツをまとったビヨンセ・クラスと言いたいね(笑)。
高い視点からボンネット越しに見下ろす風景や、堅牢にして頑丈無比なマナー、もはやクラシックの域に達したスタイリングまでオーナーが愛してやまない理由はそれぞれだけど、実際に乗ると想像以上に楽しいもの。この際なのでGクラスのハードコアファンにこそ、新型のAMGモデルを推したい。「いまさら納車待ち?」という向きには「ビヨンセの新譜を待つ気持ちで」と伝えたいね(笑)。あははは。
先代までのGクラスのAMGモデルは、ヒップホップユニットの「Gユニット」に例えるならリーダーの花形ラッパー、50セントというところ。剛健なラダーフレームボディにマッシブなV8エンジンを搭載し、内装は豪華絢爛。でもAMGモデルであることを強調(Gアピール)するあまりストイックすぎて、走らせていると肩が凝ってくる感覚があった。これがAMGらしさと言われればその通りで、個人的には「これならエントリーモデルの方が好ましい」って思っていた。Gユニットでいえば「子分格のロイド・バンクスの方が聴きやすいな」みたいな(笑)。
正直にいうと新型も同じだろうと思っていたんだけど、乗ってみてそのフロウ(ラップのメロディ)の変えっぷりに度肝を抜かれた。「ラップが上手くなったな」というレベルではなくて、完全にスタイルを変えた新メンバーの新リーダーみたいな訳。エントリーのV8モデル、ディーゼルエンジンモデルとGユニット的には他のメンバーも選択肢にはあるにしろ、Gクラスで選ぶべきはとにかくAMGモデル。まさかこんなことを言う日が来るとは思わなかったのね。
新型になっていちばん変わったのは、「いつだってサーキットを攻められる」というひと昔前の「AMGアピール」が影を潜めたこと。新型のエントリーモデルでも感じた軽量化による扱いやすさに加えて、トップグレードとして上質さや走りの愉しさをとことん追求している。もちろんサイドステップ下に据えられたエキゾーストエンドから聴こえてくるV8エンジンの力強い存在感はそのまま。
街乗りクロスカントリービークルとしても楽しい。それはサスペンションのストロークの長さを活かした上屋を揺らす走り。オフロードレース用のトロフィートラックの走りに似ていて、カーブでの重心が移動する際にバネの立ち上がりを利用して右に左に軽快にコーナリングすることができる。横方向のロールは抑えつつ縦方向の重心移動は寛容にすることで、再現性がある安定が生まれる。これって『鬼滅の刃』よろしく型ありき。ほとんどの挙動はこの型にハマるんだ。上屋を揺らすスウィンギーさは、Gクラスならではの走りの楽しさにつながる。
コーナリングの立ち上がりで、アクセルをグンと踏み込んでリアアクスルを沈みこませながら前進していく。車体は常に進行方向を向いているから安心感もあり、前へ前へと気持ちが高ぶってくる。ドライブモードをスポーツプラスにすれば先代を彷彿とさせるレーシーさも増すけど、スムーズそのもの。峠でコーナーをクリアするたびに速度が増していく感覚は、竈門炭治郎でいえば連撃で威力を増していく水の呼吸、拾ノ型、生生流転って感じですよ(笑)。
はい。そんな新生Gユニットのリーダーはスタイリッシュな頑張り屋、タイ・ダラー・サインとしておきたい。グルーブの重心が後ろにあって、シーンやチャートへの目くばせが抜群。ラップにしろ、歌にしろメロウで経験を感じさせ、自分のセールスポイントが分かっているミスター・クール&スムーズ。スタイルの違いは明白。50セントは遠くになりけり、って進化でこれはまさにメルセデスAMG G63の進化と重なるんだ。
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メルセデスAMG G 63
Mercedes-AMG G 63
サイズ(全長×全幅×全高):4,665×1,985×1,975mm
排気量:3,982cc
エンジン:V型8気筒ツインターボ
最高出力:585PS/6,000rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥22,180,000
メルセデスコール
TEL:0120-190-610
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