多くの国と同様に、台湾でもポッドキャストが流行し、メディアや著名人らが相次いでポッドキャスト番組を開始。若者を中心に「聴く」習慣が養われてきている。
そんななかで2021年の4月にオープンしたのが、ポッドキャストの録音スタジオを併設したカフェ「Sidoli Radio 小島裡」。台北の中でも歴史の深い大稻埕エリアにひっそりと佇む、カフェとしてはわずか15席のみのこじんまりとした空間だが、訪れる客が後を絶たない話題のスポットとなっている。
その理由は、この場所をつくったのが台湾を代表するクリエイティブディレクターの方序中と、メディア型の旅行を提案する旅行会社オーナーの游智維の二人であるからといっていい。ディレクターに作家の林凱洛を迎え、これまでにない複合機能をもつ場を創り上げた。
一階のカフェでは80年から90年代の台湾大衆音楽のカセットテープを100本以上所蔵。カフェ利用客にはポータブルカセットプレーヤーとともに貸し出しを行う。

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台湾のカルチャーを音声で紡ぐ
併設された録音スタジオで独自のポッドキャスト番組を収録し、オフィシャルサイト上で公開するほか、歴史ある大稻埕エリアという立地を活かし、近隣の老舗店オーナーや歴史的な価値の高いお寺などへのインタビューを敢行。彼らの声で語られるそれぞれの物語は、カセットテープとして店舗で貸し出されるほか、サイト上でも公開されている。
かつては防空壕として使用されていたという地下の空間をリノベーションし、台中の人気レコード店「感傷唱片行」がセレクトした約500本の台湾音楽が販売されている。空のカセットテープも販売されており、購入者は録音スタジオで音を吹き込んで持ち帰ることも可能だ。

こうした場所が生まれて支持される様子からは、次世代の台湾カルチャーを担う世代の価値観が垣間見えてくる。
台湾には、ほんの数十年前まで学校教育でも自分たちの歴史を習うことができなかったという過去がある。だが、現在の台湾で文化を創造する人々の間では、自分たちが暮らす社会のそこかしこで、受け継がれる場所を守る人たちに改めて光を当てていこうという流れが起こっている。
ディレクターの林凱洛はこう語る。
「聴く人、話す人、録音する人がいてこそ、『聴く』という行為が成立します。私たちは過去にその音を作り出した人たちや団体を探し出し、アーカイブを整理します。そして同時に、まだアーカイブされていない音も収録していきます。そして、それらを聴くという新しい体験を通してこそ、また新しいことが生まれていくのでしょう」
そうした彼らの提案を若い世代たちは進んで受け入れ、楽しみながら知ろうとしている。
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Sidoli Radio 小島裡
台北市大同區長安西路245號
TEL:02-2552-5300
営業時間:水〜日 11時〜18時(2時間制、予約不可) 不定休
https://sidoli.tw
※イベント貸切などで営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に公式Facebookでご確認されることをおすすめします。
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