目利きが教える、「季節を飲むお酒(=新酒)」のおいしい楽しみ方

  • 文:千葉麻里絵
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本格的に寒くなってきましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

この時期、日本酒の新酒が続々と市場にあふれてきます。新酒とはその年に収穫されたお米で一番につくられたお酒です。ワインで言うとボージョレ・ヌーボーですね。

新酒はお酒をつくって搾りたてをそのまま出荷します。通常の酒造りですと搾った後に火入れをするのですが、新酒はそれをしません。そのため、香りが爽やかで味わいも弾けるように若々しく、舌の上でピチピチと弾けるようなガス感に心が踊ります。日本酒は熟成させて美味しさを発揮するものもありますが、新酒のフレッシュ感は、毎年この冬の時期しか味わえない「季節を飲むお酒」なので、見かけたらぜひ味わっていただきたいです。

私がこの時期に家飲みでおすすめなのは、活性タイプの濁り酒や微発泡タイプのうす濁り酒。四合瓶で一本は冷蔵庫に常備しております。活性タイプは、ガスがあって元気なので開けるのが大変!しかし、それも「あ〜お酒って生きてるんだなあ」って感じられる楽しい時間です。同じお酒でも個体差があるのも魅力の一つですね。ちなみに私は何度か吹くのを忘れて勢い余って、お酒を浴びたことがあるので、自宅で開栓の際はお風呂場で開けます(笑)

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食べてる鍋の中にちろりを入れて燗酒に

四合瓶一本と鍋は、冬の楽しみ。開けたての口に含んだ時のシュワシュワ感の爽快感と、食欲が湧いてくる感じから一気にテンションが上がります。楽しいのはその後で、この濁り酒をお燗するのです。「生酒って燗酒にしていいの?」とよく聞かれるのですが、いいのです。特に、新酒の濁り酒の燗は驚くくらいに香りが変わります。

温度はがんと上げたほうが美味しいので、65〜70℃まで上げてしまってください。ちろりや徳利がある方は湯煎でもいいですし、なんなら私の場合は食べてる鍋の中にちろりを入れて燗酒にしちゃいます。新酒の濁り酒をそのくらいまで燗にすると、お米の炊きたてのような香りがふんわりするのです。味わいも、ガスが抜けてマイルドでクリーミーになります。鍋の後半のまったりタイムに最高です。さらに、オリーブオイルがあったらそこに数滴垂らしてみてください。ポテトのポタージュスープのような飲み物にたちまち変わります。

新酒の美味しい季節、みなさまのお気に入りの一本に出会いますように!

千葉麻里絵

日本酒ソムリエ、恵比寿の日本酒バー「GEM by moto」店主

化学的知見をもとに一人ひとりの“いま”に合った日本酒を提供。料理人とコラボし、日本酒体験に時間と空間と温度を取り入れた新スタイルを模索する。日本酒の提供に論理的アプローチを取り入れたSAKEカルテも考案。

千葉麻里絵

日本酒ソムリエ、恵比寿の日本酒バー「GEM by moto」店主

化学的知見をもとに一人ひとりの“いま”に合った日本酒を提供。料理人とコラボし、日本酒体験に時間と空間と温度を取り入れた新スタイルを模索する。日本酒の提供に論理的アプローチを取り入れたSAKEカルテも考案。