MOODMANと申します。今回もアナログを求めて郊外を散歩します。舞台は大阪です。10月のなかば、八尾市でおこなわれた町工場の祭典「FACTRISM」にて、友安製作所の代表取締役社長である友安啓則さんとトークセッションをさせていただきました。DJ経験もある友安社長との対談に刺激されつつ、その帰り道に、気になっていたお店へお邪魔しました。
9:30 AM 大和路線平野駅
土曜日の朝です。ホテルを早々にチェックアウトし、大和路線で平野駅に降り立ちました。駅近くのマックスバリューを抜け、最初の目的地「ドコヤス」というリサイクルショップに向かいます。こちらは土曜日、日曜日のみ限定オープンするお店で、営業時間は10時から17時までとのこと。土地勘がまったくないため、開店時間15分前に到着。しかし、すでに50名ぐらいの常連さんが並んでいます。
ここが列の最後ですか?と話しかけたところ、「ソウデス」というぎこちない返答。タイからいらっしゃったご家族のようです。並んでいる客層的にはご近所の老年層がメインでしょうか。そこに外国の方々、バイヤーの方々がほどよく混じっているという感じです。どう考えても浮いている私に、後ろに並んでいた老夫婦が「ここは安いよ」と話しかけてくれました。
10時ちょうどにお店がオープン。並んでいた強者たちはバッグのコーナー、古着のコーナー、骨董品のコーナー…と、それぞれのテリトリーに散らばっていきます。お店の大きさは外観から想像していたよりも狭く、ちょっと大きめのコンビニぐらい。
さて、レコードのコーナーはどこなんだい…と、若干、焦りながら店内をひとまわりすると、ありました。お店の一番奥の人気のない一区画。意外にもレコード狙いの強者はいらっしゃらないようです。
段ボール箱にコンパクトにおさまったレコードは和ものが中心。盤質は良く、しかも7インチ全て50円。「レコード(小)」と言う手書きのPOPがグッときます。いわゆる名盤はありませんが、このお値段なら聴いてみたい。そんなレコードを思うままにピックアップします。
背後で突然バタバタという音が聞こえたので、振り向くと、数人がバンドTシャツコーナーを物色しています。出遅れたと思いつつ手を伸ばすと、スペシャルズのツアーTシャツを発見。なんと100円でした。
余裕ができたので、人間観察タイムに入ります。さきほどのタイ人のご家族は、お皿など日常品を中心にディグっている様子。ちょっとおしゃれな青年たちが中古カメラの状態を細かくチェックしています。プロですね。楽器にはあまり詳しくはないのですが、そこそこの値段がついています。良いものなのでしょうか。
結局、こちらのお店ではシングル25枚を購入。レジでちょっとお話を聞いたところ、じつは本日がドコヤスさんの最終営業日だったとのこと…。なんらかの節目に偶然に立ち会うことが多く、「タイミングおじさん」の異名をもつ私ですが、今回も訪れるべきタイミングだったようです。「驚異の5円より・激安蚤の市」という垂れ幕に敬礼して、お店を後にします。初めまして、そしてさようなら。
11:30 AM CAFÉ ボスタードルン
クールダウンするために、平野駅の反対側を喫茶店を探して散歩してみました。そそられるお店がいくつかありましたが、イズミヤの並び、地元の方々が自然に出入りしている「ボスタードルン」というお店に入ることに。老齢の常連さんが数人、静かにそれぞれの時を過ごしています。
こちらでは朝食を兼ねて、メニューで目に止まったドライカレーを注文。ドライカレーで土手を作ってその真ん中にカレーのルーが佇んでいるスタイルで、見た目より食べ応えあり。1970年オープンの老舗カフェとのことです。
1:00 PM 京阪本線寝屋川市駅
心も落ち着いてきたので、もう一軒。気になっていたお店に向かうことにいたしました。電車で揺られること50分、寝屋川市駅に到着します。まずは、重くなった荷物を駅前のコインロッカーに投入します。
1:30 PM 金箔書房
寝屋川一番街からぶらりと散歩を始めましたが、コロナの影響か、単に休日だからか、シャッターがおりているお店が多いようです。そんななか、商店街から一本外れた通りに古本屋さんを発見。金箔書房というお店です。
外観のイメージよりも狭い店内。お店の入り口にはベストセラーを含めた新しめの本が並んでおり、ベッドタウンの古本屋っぽいセレクトかな、と思いつつ、奥の棚に行くと、日本文学をはじめ、渋めの本がしっかり並んでいました。わずか30分程度の滞在だったと思いますが、常連さんがひっきりなしに訪れており、地元の方に愛されているお店であることがわかります。あとでブログをチェックしてみたところ、ちょうど1週間前に33年周年をむかえたそう。おめでとうございます。こちらでは、都市論系の本を3冊購入しました。
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2:00 PM キンキーズ
寝屋川駅から歩いて10分ぐらい。昭和のカードとおもちゃの専門店として知られる「キンキーズ」に到着しました。SNSで写真を見るたびに気になっていたお店です。
扉をくぐってすぐ、急な階段です。その一段一段に7インチがびっしり山積みされており、アナログ好きの方ならこの時点で興奮し、2段飛ばしで駆け上がることでしょう。お店に入ると期待通りのレコード量。平積みされた7インチでレコード棚が見えません。これは大仕事になりそうです。
奥のレコードの山から順々に丁寧に、山を動かしてはチェック、山を動かしてはチェック。例えが古いかもしれませんが、「倉庫番」のような感覚です。私の人生、ほぼこの作業で終わっている気もします。
おそらく常連さんでしょう、仮面ライダーカードのコレクターの方と店長さんの含蓄だらけの会話をBGMに、気がついたら2時間が経過。窓の隙間から入り込む日差しも、夕方の色合いに。
本来であれば、ショーケースに入ったソフビもじっくりみたかったのですが、気力が続かず断念。結局、7インチシングル25枚を購入して、お店を出ました。
このあと、キンキーズさんの一階にある「らんぷ若蔵」にて遅めのランチの予定でしたが、残念ながら「休憩中」の看板が。レコード探しに没頭しすぎたようです。
5:00 PM 新大阪駅
ほどよい疲労感です。友人・知人のお店も含め、さらに数カ所のレコード店をまわりたかったのですが、断念。新大阪駅にて好物の「元祖かに寿し」(鳥取名物の駅弁です)を購入し、新幹線に乗り込みました。本日購入した大量の7インチをひと通り眺めた後、持参していたアンビエントミュージックのカセットテープを聴きながら就寝。レコードの穴がずれていて変なビートになって困る、という夢を見ました。ではでは。
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平野と寝屋川で出会ったレコード5選
■朝日ソノラマ「なるへそくん」
和泉製菓のキャラクター「なるへそくん」のソノシートブック。作者は山根あおおにさん。てんとう虫コミック初期世代にとっては『名たんていカゲマン』の影響が大きいのではないでしょうか。あおおに先生には、少年だった頃、サインをいただいたことがあり、机の上に大事に飾っていたのを思い出します。
■「さよならをもう一度」(D’URBAN CMソング)
アラン・ドロンさんが主演していたレナウン<ダーバン>の76年のCM曲。音楽は小林亜星さん。インスト曲です。TVCMでは、パーティの帰り、明け方のパリをさまようドロンさんの勇姿に「私は帰って行く/宴よ/夜の風よ/追憶の彼方の初恋の女…」というナレーションがのってました。良い時代です。
■松山恵子「ホステス小唄」
「おけいちゃん」の愛称で親しまれた松山恵子さんの1966年のシングル。同年にリリースされている「酒場小唄」のヒットの影に隠れている気もしますが、「酔っぱらったふりして人の彼女に手を出すな♪」と言うバックコーラス(鈴木弘二とクリスタル・エコーズ)がなんとも情緒あふれる一枚です。
■ザ・ピーナッツ「大阪の女」
今回のご当地ものは王道ですが「大阪の女」を。作詞が橋本淳さん、作曲が中村泰士さん。1970年に発表された、ザ・ピーナッツとしては珍しい演歌調の曲です。個人的には、B面「青白いバラ」が好み。沢田研二さんが作曲、山上路夫さんが作詞、宮川泰さんのソフトボッサなアレンジが素敵です。
■いしだあゆみ「大阪の女」
見つけてしまったので、ご当地ものをもう一枚。ザ・ピーナッツ「大阪の女」を、いしだあゆみさんがしっとりとカバーした1978年の作品です。ちなみにこのカバーがきっかけか、橋本淳さんと中村泰士さんのコンビが数年ぶりにいしださんを担当したB面「うわの空」が、これまたボッサタッチで素敵です。